重度難聴の補聴器選び|対応形状と器種の選び方を専門店が解説

重度難聴の補聴器選び|対応形状と器種の選び方を専門店が解説

重度難聴の方にとって適切な補聴器を選ぶことは日常生活を快適にする大きな一歩です。しかし、どの補聴器が自分にとって最適に使っていけるのか迷ってしまう方も多いでしょう。
この記事では、特定のメーカーや器種を推すのではなく、器種を選ぶユーザー(あなた)に合わせた選び方を整理してお届けします。
重度難聴に適した補聴器の特徴、調整の注意点、購入時に使える助成制度も分かりやすく解説します。

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重度難聴とは?数値と体感のギャップを整理する

重度難聴は、静かな空間で行われる通常の会話(60〜70dB程度)が音としてほとんど届かない状態です。
しかし日常生活の聞こえ方だけで判断するのは難しく、耳鼻科を受診して聴力検査の数値で確認することで初めて「どれくらいの音量から聞こえにくく、どんな音が届いていないのか」が分かります。
難聴の状態の把握では、以下の3つの数値が役立ちます。

  • ・平均聴力レベル(dB HL)
    →およそ音がどの程度の大きさになれば聞こえ始めるか(様々な周波数ごとの聴力を平均した値)
  • ・語音明瞭度
    →言葉の聞き取りやすさ(音が届いても言葉としては理解できない場合がある)
  • ・不快閾値(UCL)
    →「これ以上の大きな音は、大きすぎて不快」と感じる限界ギリギリの音量

重度難聴では、大きな音しか聞こえなくなります。同時に聞こえる大きな音は「不快に感じるライン」に近づきやすいのです。つまり「聞こえるけど、不快」という状態が発生しやすくなります。ちょうどいい音量・音質の調整(フィッティング)そのものが繊細になりやすい点が特徴です。

聴力図で見る重度難聴の代表例

以下は代表的な重度難聴の聴力像です。会話が届きにくい理由が、グラフに示されています。
縦軸が音の大きさ(dB:デシベル -10dBの小さな音~120dBの大きな音)、
横軸が音の高さ(Hz:ヘルツ 125Hzの低い音~8kHzの高い音)を表しています。

代表的な重度難聴の聴力例

このグラフは○の印が、グラフの下の方になると、大きな音でないと聞こえないことを意味しています。
重度難聴とは【聞くためにおよそ90dB以上の音の大きさが必要】という状態です。

なお人が静かな場所で普通に会話するときの声の大きさは50dB前後です。
ここで示した重度難聴の例だと、補聴器を付けていないと人の声がまったく聞こえません。

家族の印象と実際の聴力が違う理由

ご家族には「呼べば反応するときもある」「大声なら届くから重度ではないのでは?」と映る場合があります。
しかし、難聴には「“聞こえていない音の種類”が違う」ケースがあります。

例:

  • ・低周波数の聞こえは維持されているが、高音域だけ極端に落ちている → 子音(サ行・タ行)が聞こえにくい。なにかを言われたことは分かるけど、何を言っているのか言葉のツブは聞き分けられない。
  • ・語音明瞭度が低い → 最終的に言葉を聞き取るのは、耳ではなく脳の働きも関係します。音が届いても意味に変換されにくい状態(語音明瞭度の低下)は、中等度難聴であっても重い難聴に見える場合があります。

このような違いがあるため、補聴器選びでは「重度だからこの器種」という単純な話ではなく、聞こえの状態の正確な理解と、それに合わせた器種選び、音量・音質の調整が大切になってきます。

選べる補聴器/選べない補聴器

補聴器は形状と器種によって「物理的に出せる音の最大値」「調整できる音量・音質の幅」「不快さを感じさせないための機能」が異なります。重度難聴に適した補聴器には、特殊な機能や特徴があります。

  • ・パワフルな音の増幅性能
    重度難聴では必要な音量も大きくなるので、音をパワフルに増幅する性能を持つ補聴器が必要です。
  • ・騒音環境下での聞き取り補助
    ノイズキャンセリング機能(周囲の環境音を抑える)や、指向性マイク機能(顔を向けた方向の会話音を拾いやすくする)により騒音環境下での聞き取りを補助する

ここを誤ると購入した後に調整の限界が早く来てしまいます。
パワーの強い補聴器はサイズも大きくなりがちです。
分かりやすい見た目・形状の選び方としては

  • ・CIC/IIC(最小タイプ)は重度難聴には不向き
  • ・RICまたはBTEが現実的な選択肢

となります。

形状別対応範囲の比較表

形状 高度難聴 重度難聴 特徴と注意点
CIC/IIC ✕~△ 小型の耳あな型は目立たないが、
最大出力が不足するため不向き。
ITC/ITE 〇~◎ 標準サイズの耳あな型は個人差あり。
耳の形状と聴力次第で選択肢に入ることも
RIC/RITE 〇~◎ RICタイプの耳掛型はオプションパーツを追加し、
最大出力を上げれば選択肢に。
BTE 標準タイプの耳掛型は安全設定と調整域が広く、
重度難聴と相性が良い。

CIC/IIC

重度:✕
高度:✕~△
特徴と注意点:
小型の耳あな型は目立たないが、最大出力が不足するため不向き。

ITC/ITE

重度:△
高度:〇~◎
特徴と注意点:
標準サイズの耳あな型は個人差あり。耳の形状と聴力次第で選択肢に入ることも

RIC/RITE

重度:〇
高度:〇~◎
特徴と注意点:
RICタイプの耳掛型はオプションパーツを追加し、最大出力を上げれば選択肢に。

BTE

重度:◎
高度:◎
特徴と注意点:
標準タイプの耳掛型は安全設定と調整域が広く、重度難聴と相性が良い。

小児/成人/高齢の違い

重度難聴の中でも、補聴器を使う方の年齢、手先の器用さなどによっておすすめの形状・器種は変わってきます。

重度難聴の後期高齢者で、補聴器の利用経験が少ないケース

  • ・小型より扱いやすさ/見守りやすさを優先
  • ・ご家族やヘルパーが見守る場合、LEDでバッテリー確認できる器種を選ぶと、スイッチのON/OFFや電池切れを見つけやすい
  • ・誤操作・紛失・破損のリスクが心配な場合は、紛失保証付きの器種も考慮
  • ・目標は、耳のいい人と同じほどの「よく聞こえる」より「安全な音量での継続」
  • ・一例として、距離1mで顔を見て、普通の声でゆっくり話して会話できることを目標にする場合は、雑音抑制に優れた器種(Signia、Oticonなど)がおすすめ

補聴器の利用経験が長い、成人の場合

  • ・仕事・家庭・外出など環境差が大きい世代
  • ・パワーが足りるなら形状はRICを選ぶと選択肢が多い。ただし重度難聴用ハイパワーに対応するには、有償のオプションパーツが必要になる。試聴サービスの充実度で補聴器店をよく選ぶのがおすすめ。
  • ・突発性難聴など病気が原因の場合、体調によっても聴力の変動が予想されるのでパワーの余裕がある器種を選ぶのがよい。またスマホアプリで音量音質を自分で変更できるモデルがおすすめ。
  • ・先天性難聴の場合、親の保護を離れて自分で器種を選び始める年齢なら、ご予算と相談しながら試聴・比較が大切。同じブランドでも10年前の記憶とは音質が大きく変わっている可能性あり
  • ・満足できる最大音量で聞くより、難聴進行を抑える意味でも「疲れず聞き続けられる音量」を探る調整が大切。

先天性の難聴など、小児の場合

  • ・管理・取り扱いは子供が大きくなるまで保護者が行う。成長によって耳の穴の形が変わり続ける点にも注意が必要。
  • ・BTEが基本。成長に合わせてイヤモールドの作り替えが可能
  • ・LEDでバッテリー確認できる器種を選ぶと、スイッチのON/OFFや電池切れを見つけやすい
  • ・言語獲得期の支援は、補聴器店ではなく医療・教育領域(言語発達等)などの専門機関が主担当。
  • ・小児難聴の器種選びには、聴力、音に対する過敏さ、言語獲得の進捗、学級の人数や先生との物理的距離など、一人一人の事情が大きく異なるため、慎重な相談がおすすめ。
  • ・たとえば目標が、学校の教室で距離3mほどで先生の顔を見て話が分かることとする場合、離れた音に対する感度が高い器種(Phonakなど)がおすすめ

重度難聴のための安全な補聴器の調整

重度難聴では、必要な音量と不快に感じる音量が物理的に近くなる傾向があり、調整の精度が結果を大きく左右します。補聴器の音量は大きければ良い、ということではないのです。
特に近年は「音響性聴覚障害」という考え方が登場しています。補聴器の音量の調整では、効果が得られる必要十分な音量であることと同時に、効果が得られる範囲で最小限の音量にするのが望ましいのです。

音響性聴覚障害とは?

大きすぎる音にさらされると、難聴のリスクが高まります。かつては鼓膜に届く音が短い時間でも132dB SPLが危険ラインと考えられていました。
しかし現在は 音圧 × 暴露時間(総量)で負担が決まる という考え方が一般的です。WHOは若者のイヤホン難聴について警鐘を鳴らしており「Make Listening Safe活動」を進めています。また日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会からも注意喚起されています。

補聴器の調整は必要十分な音量でよく聞こえるようにすることと同時に、大きすぎない音量の折り合いを探る工程でもあります。

安全で快適な補聴器のために必要なもの

重度難聴で特に重要になってくる補聴器の機能、調整要素、検査についてご紹介します。

不快閾値(UCL)の測定

聴力測定の項目の一つで、「大きすぎる・不快」と感じる音量を調べる測定項目です。
補聴器の調整において、音を増幅しすぎないための判断材料になります。
これは聞こえることによる疲労や拒否感を避ける音量・音質の調整に役立ちます。
また後述するMPO機能の調整にも活かされる測定項目です。

MPO(最大出力制限)機能

補聴器から出力される音の大きさの上限を制御する機能です。
重度難聴においては、過大な音量を防ぎ、安全を確保するために必須になります。

衝撃音・突発音の抑制機能

食器を落として割れたとき、ドアを勢いよく閉めるときのような、急な大きい音を軽減する機能です。
重度難聴においては、MPO機能と並んで、過大な音量を防ぎ、安全を確保するために重要になります。
急な過大音を防ぐことで不快さも軽減してくれます。

FL(Frequency Lowering)機能、または周波数移調機能

聞こえにくい高い周波数の音情報を、比較的聞こえる低い周波数帯域へ移す処理を行う機能です。
不必要な音の増幅を避けつつ、言葉の明瞭度に寄与する可能性があります。
難聴の進行を予防する観点でも検討する余地があります。
重度難聴・高度難聴の中でも、特に高い周波数の聞き取り能力が低下しているときに、効果が期待されます。

重度難聴でも選択肢は広がりつつある(2026)

近年、重度難聴に対応する製品展開が進んできています。

例えば

ここに挙げたメーカーは推奨する意図ではなく「選択肢」のご紹介です。
ご自身の生活スタイル、聞こえの状態、手先の器用さなどからおすすめの器種は変わります。選び方に迷ったら店頭にてご相談ください。

補聴器の購入助成制度

補聴器の購入にはいくつかの助成制度があります。

  • ・障害者総合支援法
  • ・医療費控除(確定申告)

重度難聴の場合、身体障害者手帳を取得した上で、障害者総合支援法に基づいた国の助成制度が対象になります。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

まとめと次のステップ

重度難聴の補聴器選びは

  1. まずは病院を受診して、検査結果を確認(診断は補聴器店ではなく医療機関)
  2. 希望する補聴器形状の候補整理(RIC/BTE中心)
  3. 安全に配慮して補聴器を調整してもらう(MPO/FL/不快閾値)
  4. いくつかの器種を試聴して、環境別の聞こえ方を確かめる(試聴レンタル)
  5. 試聴と並行して助成金制度の手続きを進める
  6. 自治体の助成金の許可を待って、器種を決めて注文

という順番で整理すると、間違いや手戻りが少なく進められます。
重度難聴における補聴器は「聞こえを完全に戻す道具」ではなく、日常生活を便利にして社会に参加し続けるためのサポートツールです。
生活を楽しく、快適にする手段として、ご活用ください。


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大塚補聴器を運営する株式会社大塚の代表取締役。認定補聴器技能者、医療機器販売管理者。

たくさんの難聴の方々に、もっとも確実によく聞こえる方法をご提供することが私たちのミッションです。
監修においては、学術論文もしくは補聴器メーカーのホワイトペーパーなどを元にしたエビデンスのある情報発信を心がけています。

なお古いページについては執筆当時の聴覚医学や補聴工学を参考に記載しております。科学の進歩によって、現在は当てはまらない情報になっている可能性があります。

※耳の病気・ケガ・治療、言語獲得期の小児難聴や人工内耳については、まず医療機関へご相談下さい。

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