補聴器を安く購入するための補助金・助成金・医療費控除・保険適応について
補聴器を購入するにあたって、行政の支援や補助金はないのですかと、ご相談を受けることがございます。
たとえば、平成25年に施行された「障害者総合支援法」により、補聴器の購入費用に対して補助金が支給されるようになりましたし、補聴器の購入に対して助成を行っている自治体もございます。
そこで補助金など、補聴器を少しでも安く購入できるための方法をご紹介させていただきます。
・総合支援法による補助金制度
・自治体による助成金制度
・医療費控除
・保険の活用
・補聴器購入の消費税
総合支援法による補助金制度
障害者総合支援法という法律が、平成25年4月1日から施行されました。
この法律は身体障害者福祉法も包括されたもので、この新しい制度により補聴器の購入費の補助金が支給されるようになりました。
補聴器を購入する際の補助金を受けるためには、まず障害者総合支援法による障害者手帳が必要となります。
❶身体障害者手帳の取得
・指定の耳鼻咽喉科判定医の検査を受け、「手帳交付の意見書」を交付してもらう。
・「手帳交付の意見書」「申請書」など所定の書類を福祉課窓口に提出し、身体障害者手帳の交付申請を行う。
・障害の程度に応じた等級の身体障害者手帳が交付される。
❷補聴器の支給
・指定の耳鼻咽喉科判定医に、「補聴器支給の意見書」を交付してもらう。
・総合支援法取扱の補聴器販売店に「見積書」の作成を依頼する。
・下記の書類を「身体障害手帳」と一緒に福祉課窓口へ提出し、補聴器の支給申請を行う。
- 申請書(市区町村の福祉課窓口)
- 補聴器支給の意見書(指定病院の判定医)
- 見積書(自立支援法取扱の補聴器販売店)
・補聴器支給の適否について判定後、「補装具(補聴器)支給券」が郵送されてくる。
・「補装具(補聴器)費支給券」と印鑑を指定の補聴器販売店に持参し、補聴器を受け取る。
【別表1】 聴覚障害等級
級別 | 対象機種の目安 | 障害の状態 |
---|---|---|
2級 | 重度難聴用 | 両耳の聴力レベルがそれぞれ 100 デシベル以上のもの(両耳全ろう) |
3級 | 両耳の聴力レベルが 90 デシベル以上のもの(耳介に接しなければ大声話を理解し得ないもの) | |
4級 | 高度難聴用 | 1. 両耳の聴力レベルが 80 デシベル以上のもの(耳介に接しなければ話声語を理解し得ないもの) 2. 両耳による普通話声の最良の語音明瞭度が 50% 以下のもの |
6級 | 1. 両耳の聴力レベルが 70 デシベル以上のもの(40 センチメートル以上の距離で発声された会話語を理解し得ないもの) 2. 一側耳の聴力レベルが 90 デシベル以上、他側耳の聴力レベルが50 デシベル以上のもの |
【別表2】障害者総合支援法 補聴器購入基準価格
補聴器の種類毎に「補聴器購入基準価格」が決められています。
原則、この金額の1割が自己負担額となります(所得によって変わる場合があります)
名称 | 価格 | 耐久年数 |
---|---|---|
高度難聴用ポケット型 | ¥ 34,200 | 5年 |
高度難聴用耳かけ型 | ¥ 43,900 | 5年 |
重度難聴用ポケット型 | ¥ 55,800 | 5年 |
重度難聴用耳かけ型 | ¥ 67,300 | 5年 |
耳あな型(オーダーメイド) | ¥ 137,000 | 5年 |
- 価格は電池、骨導レシーバーまたはヘッドホンを含むものであること。
- 身体の障害の状況により、イヤモールドを必要とする場合は、修理基準の表に掲げる交換の額の範囲内で必要な額が加算されます。
- 重度難聴用耳かけ型で FM 型受信機、オーディオシュー、FM 型用ワイヤレスマイクを必要とする場合は、下記の交換価格の額の範囲内で必要な額が加算されます。
修理基準
- イヤモールド交換: ¥ 9,000
- FM 型受信機交換: ¥ 80,000
- オーディオシュー交換: ¥ 5,000
- FM 型用ワイヤレスマイク交換 (充電池含む): ¥ 98,000
生活を便利にする補聴器以外の支援
補聴器だけではなく下記の8つは聴覚障害手帳をお持ちの方がご利用いただける日常生活用具となります。
- 聴覚障害者用屋内信号装置
- 聴覚障害者用印字型通信装置
- 聴覚障害者用情報受信装置
- 火災報知器
- 自動消火器
- 情報機器(防災支援用具)
- 人工内耳用電池
- 障害者用防災ベスト
地方自治体による補聴器購入の助成
国が定めた障害者総合支援法による支援の他に、近年は地方自治体が独自に補聴器の購入に対して助成を行う制度が増えています。
浜松市の助成金についてはこちら
対象は、身体障害者手帳の交付対象とならない軽度・中等度の18歳未満の難聴児。難聴児の言語習得、教育等における健全な発達を支援するための助成金となります。
18歳未満の難聴の児童であっても、いくつか条件があります。
助成金の金額は、厚生労働省の定めた補聴器購入基準価格とほぼ同額になっているようです。
浜松市軽度・中等度難聴児補聴器購入費助成金交付要綱
杉並区の助成金についてはこちら
対象は、杉並区在住で身体障害者手帳の交付対象とならない軽度・中等度の18歳未満の児童。医師の意見書が必要となります。
助成限度額は、補聴器一台あたり137,000円です。
中等度難聴児補聴器購入費助成事業|杉並区公式ホームページ
豊島区の助成金についてはこちら
対象は、豊島区内に在住の65歳以上で、住民税が非課税の方です。耳鼻科医の証明書が必要となります。
一人につき一台一回限り、上限20,000円まで助成されます。
高齢者補聴器購入費助成|豊島区公式ホームページ
墨田区の助成金についてはこちら
対象は、墨田区内に在住の満65歳以上で、住民税が非課税の方です。区の指定する耳鼻科を受診し、耳鼻科医の意見書の提出が必要となります。
一人につき一回限り、上限20,000円まで助成されます。
高齢者補聴器購入費助成申請書・案内等 墨田区公式ウェブサイト
江東区の助成金についてはこちら
対象は、江東区内に在住の65歳以上の方。医師による証明が必要です。ほかにも、江東区の定める所得基準内であるなど、いくつかの条件が当てはまる方が対象です。
1人につき一回限り、現物支給か上限30,000円まで助成されます。
高齢者補聴器の現物支給及び購入費助成|江東区
練馬区の助成金についてはこちら
対象は、練馬区内に在住の65歳以上の方で、住民税が非課税の方です。区の指定する耳鼻科を受診し、耳鼻科医の意見書の提出が必要となります。
一人につき一回限り、上限25,000円まで助成されます。
高齢者の補聴器購入費用助成事業:練馬区公式ホームページ
千代田区の助成金についてはこちら
対象は、千代田区内に在住の18歳以上の方。医師による証明が必要です。ほかにも、千代田区障害者福祉手当の所得基準内であるなど、いくつかの条件が当てはまる方が対象です。
千代田区は、一回限りの助成ではありません。過去に助成決定してから5年以上経過すると、また申請することが可能です。
上限50,000円まで助成されます。
千代田区ホームページ – 補聴器購入費の助成
お住まいの自治体によって、高齢者の補聴器購入費を助成しています。その助成金額は、自治体によって異なります。補聴器を購入する前に、ご自分の自治体は補助制度があるか確認しましょう。
補聴器購入の医療費控除について
補聴器購入にかかった費用の医療費控除の条件として、日常生活で最低限の用を足すために提供される義手、義足、松葉づえ、義歯を購入するための扱いと同様、医師または歯科医師等の治療または診療等を受けるために直接必要なものであることが要件となります。(所得税基本通達73-3)
すなわち、補聴器の購入費が医療費控除の対象となる条件は単に聞こえを補うために使用するという目的ではなく「医師による治療等の過程で直接必要とされて購入した補聴器の購入」であることが必要です。
2018年度より、その証明のために耳鼻咽喉科学会が定めた「補聴器適合に関する診療情報提供書(2018)」に、医師等による診療や治療を受けるために補聴器が必要かどうか記載する欄が追加されました。
確定申告の際に、補聴器購入の費用を医療費控除とする場合には「補聴器購入の領収書」「補聴器適合に関する診療情報提供書(2018)」をセットで添付すると良いでしょう。経済的な負担が軽くなります。
参考:補聴器の購入費用に係る医療費控除の取扱いについて(情報)|国税庁
保険の活用
残念ながら日本の介護保険、国民健康保険、社会保険では、補聴器の購入費用はカバーされていません。
しかし民間の保険会社による動産総合保険に加入していれば、補聴器の紛失の際に補聴器紛失分の補償がもらえる場合があります。万一、補聴器を紛失した場合はぜひ加入している保険の約款をご確認ください。
この他、介護福祉施設に入居されている方が、補聴器を自分で管理できず、職員の方に取り扱いのサポートをお願いすることがあります。万一、職員の方によるミスで補聴器の紛失や破損があった時、その施設が受託賠償責任保険などに加入していれば、その内容によっては代替品の購入の一部または全部を補償してもらえる可能性があります。
補聴器購入の消費税について
補聴器は薬事法で定められた医療器具のため、消費税のかからない非課税対象商品です。ただし、乾燥ケースや電池などのアクセサリーは課税対象となります。
補助金は年度や自治体ごとに大きく異なります
補聴器の補助金に関するご相談は、プロショップ大塚でも承っております。いつでもご相談ください。
ご相談はこちらのプロショップ大塚まで
2006年から補聴器の仕事を始めました。もっとも確実に、よく聞こえる方法をご提供することが、私のミッションです。皆様の耳に合った補聴器をお届けするため、毎日毎日、聴覚医学の論文を読み、デンマークやドイツの研究機関と連絡を取り、時には欧州へ勉強に行き、海外から研究者を招き勉強会を開催し、国内の社会人大学院へ通い修士号まで取ってしまいました。本Webページでは、補聴器と難聴について、確かな情報や最新の情報をお届けしていきます。ご相談の方は、お気軽にご連絡ください。
保有資格:認定補聴器技能者、医療機器販売管理者
★ Twitter はじめました。耳の話を真面目に書いてます! : @mimi_otsuka