補聴器メーカー「フォナック」の特徴
フォナックは世界シェア1位の補聴器メーカー*1です。多くの方に選ばれているフォナックの補聴器は、製品ラインナップが豊富です。日本の補聴器専門店では、フォナックしか取り扱っていないお店もありますが、その製品ラインナップの豊富さから、どんな難聴でも聴力に合った器種が見つけられるでしょう。また補聴器だけでは聞き取れないときには、ロジャーなどオプション機器が充実しています。プロショップ大塚のオススメ(2020年6月時点)は バートM-312、ヴィータス+です。フォナックの特徴と評判について、詳しく見ていきましょう。
フォナックは世界シェア1位の補聴器メーカー
フォナックは、1947年に創業したスイスの補聴器メーカーです。
1990年代から吸収・合併を行い、世界最大の規模になりました。フォナックのグループ会社には、ユニトロンというメーカーもありますが、製品の中身は同じものです。また日本では補聴器販売チェーンの理研産業が、スイス本社から独自に仕入れ、独自の商品名を付けることもありますが、やはり中身は同じものです。
フォナックの補聴器は、日本において「補聴器専門店での取り扱い台数が、日本で最も多い」と言われています。世界で一番シェアが大きいだけあって、補聴器の機能・性能は間違いありません。
価格については、他のメーカーと異なり、値引きが行われることはほとんど無いようです。
2019年6月に発売開始したマーベルシリーズは、充電式のAudeo M-R(オーデオM-R)が特に人気です。雑音を抑える機能に加え、人の言葉を強調する機能が搭載されており、発売当初から大ヒットしました。アメリカで最初に発売されましたが、あまりの人気に製造が追いつかず、日本での発売が半年遅れました。2020年5月にはマーベルシリーズの耳あな型が登場しました。
全価格帯を通しての特徴、できること、できないこと
他社メーカーでできることのほとんどが出来ます。
・離れた場所や多人数の会議での聴こえは、ワイデックスと並んで優れています。
・最小サイズの耳あな型補聴器(IICサイズ)が作れます。
・補聴器を使った時のピーピーという不快なハウリング音は、補聴器メーカーの中でもトップクラスに静かです。
世界シェア1位のメーカーですから、様々な分野でまんべんなく優れています。欠点が少ない補聴器メーカーです。
他社にない特徴としては
補聴器だけでは聞き取れない大人数の会議などを助けるオプション装備が充実。
当たり前ですが、耳のいい人でも聞き取りにくい環境では、難聴者が補聴器を使っても完全には聞こえません。例えば、多人数が参加する会議や、大学の大教室などの環境です。
フォナックのデジタル無線システムの「ロジャー」は、遠くにいる話し手の声を、電波で補聴器に届けてくれるオプション装備です。会議や会合の司会進行役や学校の先生などにロジャーのマイクをつけてもらうと、補聴器のみで聞くときと比べて、音質が明瞭になります。まるで目の前で話しているような聞こえ方になります。
特に評価の高い「ロジャーオン」は、騒がしい場所や離れた場所にいる人の声の聞き取りが最大61%改善します!*2
室内でしたら最大25mくらいまで使用可能です。
またお仕事の会議など、5~6人の打合せで聞こえに困る場合は、テーブルの中央に置いておくだけで、全員の声を拾ってくれます。
会議で特に困っている方の場合、補聴器は安価なものを購入して、フォナックのオプション装備を組み合わせることも有効です。
小児専用の小型補聴器のラインナップが豊富です。
その代表が「フォナック スカイB」です。外で活発に遊ぶお子さま向けの防水・防塵補聴器(IP68)です。以前のモデル「ニオスSH2O」より、さらに防水が強くなりました。
通常の補聴器は、大人向けの形状で作られていますが、スカイBは、小さな耳にフィットする形状で作られて、子供の小さな耳への負担がありません。カラーバリエーションも豊富で、49パターンのカラーが選べます。
なお、フォナックの一部製品には、お子さまの聞こえを応援する子ども割引制度を導入しています。補聴器のグレードにもよりますが、およそ20%前後の割引になります。
- 防水・防塵の国際保護等級で、粉塵試験装置に8時間入れた後や、水面1メートルの水中に30分間入れた後でも、修理が必要なダメージが発生しないことを示しています。
フォナックの補聴器が苦手としていること
・重度難聴用の補聴器のパワーは、他社と比べて少しパワーが弱い。(2020年6月現在の製品において、当社調べ)
ほとんどの聴覚障害者手帳の2級を持っている難聴者の方には、必要十分なパワーがあります。しかし重度難聴用補聴器のパワーは、リサウンドなどと比べて、少し弱いようです。混合性難聴の方の内、最も重度難聴の場合、2020年6月時点ではリサウンドの補聴器がおすすめです。
・ポケット型補聴器、骨伝導補聴器は作っていない。
フォナックに限らず、近年ポケット型補聴器を製造する補聴器メーカーが減ってきています。ご家族から難聴者ご本人様へのプレゼントにポケット型補聴器は人気です。またポケット型補聴器は取り扱いが簡単なので、手先が上手く動かない方におすすめですが、フォナックでは作っていません。
骨伝導補聴器の取り扱いもありません。
・充電式の耳あな型補聴器は作っていない。
2022年12月現在、フォナックは充電式の耳あな型補聴器は作っていません。フォナックの耳あな型はすべて電池交換式となるため、小さいボタン電池を5日~14日に一回程度ご自身で交換していただく必要があります。
いくつかのメーカーから充電式の耳あな型補聴器が出ており、手先が不自由な方、高齢の方からは簡単に扱えると評判です。
・史上最高に取り扱いが簡単!?充電式の耳あな型補聴器「リサウンド・ワン耳あな型」
専門家の間でのフォナックの評判「多くのお客様に合いやすい」「調整を合わせやすい」
フォナックの補聴器を調整・販売している補聴器技能者にフォナックの補聴器の評価と評判を聞いてみました。
・特殊な難聴でなければ、フォナックの補聴器のどれかに最適な器種が見つけられると思います。
・特殊な機能を開発することは少なく、他所より先んじて何かをすることは少ない。その分、堅実な商品が多いので、安心してお客様に提案できる。
・あえて言えば、距離が離れた人との会話を期待するお客様には、どの価格帯でも距離の離れた小さい声を拾いやすい傾向がある。
・オプション機器を追加せずにロジャーが使えるので、学生のお客様には、とにかくまずフォナックの補聴器とロジャーをご紹介しています。
補聴器技能者から聞いた評判は上記のようなものでした。
多くの方に選ばれるだけあってフォナックの補聴器は、適切な機種を選べば、ほとんどの難聴に対応できるため、その確実さ・堅実さが補聴器技能者に好まれています。
補聴器技能者にとって、すべてのメーカーのすべての器種の調整に習熟するというのは並大抵の努力では出来ません。
そのため、フォナックの補聴器を好み、得意としている補聴器技能者の中には、一部の特別な難聴や特別なご要望のお客様をのぞけば「試聴していただくときには、まずフォナックの補聴器の中から聴力に合った器種を選んで提案する」という人も少なくないようです。
価格は最安値92,400円から揃っており、ご予算に応じて、お値打ちな補聴器を提案することも出来ます。もちろん最高の機能を持った最高級の補聴器も用意されています。
たとえば以下のようなお悩みをお持ちの場合、フォナックの補聴器が特に有効な可能性があります。
「日常会話では不便はないが、遠くからの声に気づかないことがある。特に職場の会議で聞き返しが多い」
上記のような場合、フォナックの補聴器と一緒にロジャーオンをご利用いただくと、離れた距離での呼びかけ、会議での会話の両方が改善される可能性があります。
プロショップ大塚がオススメするフォナックの補聴器
機能重視の方には「バートM-312(M70)」片耳420,000円
最新のマーベルチップを搭載したオーダーメイド耳あな型補聴器です。雑音が多い環境で言葉の聞き取りを助け、雑音だけを選んで小さくする機能に優れています。雑音とは具体的にいうと、食器同士がぶつかる音や、海沿いの強い風などです。また自動車の中での会話では、助手席に座っていても、後方の声を選んで大きくするなど、人の言葉を自動で選んで大きくする機能があります。色々な場所に出かけて補聴器を使いたい方、日々活発に活動されている方におすすめしています。

騒がしい場所でも、人の言葉を自動で選んで大きくする機能
このバートM-312は、世界で唯一イヤホンマイクとして利用可能な耳あな型補聴器です(2020年6月現在当社調べ)。新型コロナ流行後、様々な職場でテレワークやビデオ会議が増えてきています。バートM-312(M70)は、対面の会話だけでなく、スマホやパソコンを使ったビデオ会議にも有効です。
なお音質や騒音制御の面で、M70より性能が下がるものの、イヤホンマイクとして使えるバートM-312(M30)は、170,000円という普及モデルもあります。
お値打ちな耳あな型補聴器「ヴィータス+耳あな型」
※以前、本記事で紹介していた格安補聴器「バートタオ10M」の後継機種がヴィータス+になります。
フォナックの中で、最もお値打ちなオーダーメイド耳あな型の補聴器は「ヴィータス+(プラス)」です。
お値段は片耳134,400円、両耳セット201,600円です。
これより安い耳あな型補聴器は、他社メーカーにいくつかあります。その中で、この補聴器が優れているのは、極小の小ささです。外からまったく見えません。
はじめて補聴器を始める50~60歳代の方、また少しだけ困る場面が出てきた軽度難聴の方におすすめしています。
「ヴィータス+」の紹介ページを書きました。こちらもご覧ください。
フォナック社のお値打ち補聴器「ヴィータス+」シリーズ
まとめ
補聴器メーカー「フォナック」の歴史から、最新器種までご紹介してきました。ここまで書いたことは、すべて私たちが確認した事実ですが、聞こえは一人ひとりの聴力や好みの影響が大きいものです。フォナックの補聴器をご検討の方はご購入の前に、無料試聴サービスをご利用下さい。
補聴器専門店プロショップ大塚では、補聴器をご自分で試して、体験して、よく聞こえることを確かめてからのご購入をおすすめしています。フォナックの補聴器に興味のある方は、プロショップ大塚まで、お気軽にご来店下さい。
参考文献
*1 参考資料:2019年補聴器世界市場、企業別のシェア率
Global hearing aid market share by company 2019 | Statista https://www.statista.com/statistics/1087388/global-hearing-aid-market-share-by-company/(2022年12月30日閲覧)
*2引用元:フォナックホワイトペーパー「騒音下でのことばの理解を改善」
https://www.phonakpro.com/content/dam/phonakpro/gc_hq/en/resources/evidence/field_studies/documents/fsn_roger_group_setting_speech_recognition_benefit_en.pdf(2022年12月30日閲覧)
2006年から補聴器の仕事を始めました。もっとも確実に、よく聞こえる方法をご提供することが、私のミッションです。皆様の耳に合った補聴器をお届けするため、毎日毎日、聴覚医学の論文を読み、デンマークやドイツの研究機関と連絡を取り、時には欧州へ勉強に行き、海外から研究者を招き勉強会を開催し、国内の社会人大学院へ通い修士号まで取ってしまいました。本Webページでは、補聴器と難聴について、確かな情報や最新の情報をお届けしていきます。ご相談の方は、お気軽にご連絡ください。
保有資格:認定補聴器技能者、医療機器販売管理者
★ Twitter はじめました。耳の話を真面目に書いてます! : @mimi_otsuka