難聴レベルってなに?聴力検査の結果(オージオグラム)の見方
あなたは聴力検査を受けたあと、ご自分の耳の状態について、正しく理解できましたか?
あなたは、聴力検査を受けた際、検査結果についてきちんと説明を受けましたか?
自分(または家族)の、耳の状態を知ることが出来れば、治療や対策を選ぶ参考になります。
このページでは聴力検査の結果の読み方と、聴力レベル別の困りごとをご紹介します。
聴力検査の結果は、オージオグラムという図で表します。病院で聴力検査を受けた方は、もしコピーをいただけるようならお願いしてみて下さい。
聴力検査の結果の図を、オージオグラムといいます。
オージオグラムからわかること
まずはオージオグラムの基礎や、オージオグラムからわかることについて、ひとつずつ見ていきましょう。
オージオグラムの基礎
オージオグラムとは、あなたの聴力検査の結果を図で表したものです。聴力検査を受けるときにはヘッドホンをつけて、音が聞こえたらボタンを押す、または手を上げる方法で行います。この検査では、あなたが聞こえるギリギリの音の大きさを調べ、これを数値で表しているのです。
上の図はオージオグラムの一例です。表の見方と記号を説明します。記号の「○」は右耳、「×」は左耳を表しています。
オージオグラムに出てくる記号の「○」は右耳、「×」は左耳を表しています。
縦軸は、音の大きさ=聴力レベル(dB:デシベル)を表しています。表の縦軸の目盛りをみると、-20dB〜120dBまで数値があります。音の大きさは数字が大きいほど大きな音を意味しています。つまり、記号が表の上にあればあるほど小さな音を聞くことが出来るということです。記号が下にあればあるほど、大きな音でないと聞こえないということです。
オージオグラムの縦軸(上か下か)は音の大きさ、つまり聴力レベルを表しています。
そして、記号が上にあればあるほど、小さい音を聞くことが出来るという意味です。
横軸は、音の高さ=周波数(Hz:ヘルツ)を表しています。表の横軸の目盛りを見ると、125Hz〜8,000Hzという数値があります。数字が小さいほどブーブーという低い音、数字が大きいほどピーピーという高い音です。
オージオグラムの横軸(左か右か)は音の周波数、音の高さ を表しています。
左のほうが低い音、右のほうが高い音です。
オージオグラムは、各周波数(音の高さ)ごとに、どのぐらい聞こえるのかを示しています。
上の図は、軽い難聴のオージオグラムの例です。表の上の部分に記号があるのがわかります。下の図は、重い難聴のオージオグラムです。表の下の部分に記号があるのがわかります。
聴力検査では、様々な音の周波数について、それぞれどれくらい小さな音を聞くことが出来るか、または聞こえないのかを調べています。この検査結果からは、難聴の程度が分かり、また具体的な困りごともおよそ予測できます。
※この記事では、もっとも一般的な聴力検査として最少可聴閾値検査(HTL:hearing threshold level)を紹介しています。聴力検査はほかにもいろいろな種類があります。
オージオグラムからわかる難聴レベル
オージオグラムの基礎は前述で説明しました。オージオグラムを読むことでわかることは、難聴のレベルです。また、難聴のレベルは、平均聴力を出すことによってわかります。
難聴レベルは正常から重度難聴まで5等級
どの難聴レベルかが聴力検査の結果でわかります。難聴レベルは以下のように分類されています。また、難聴レベルは平均聴力を出すことでわかります。
難聴レベルは正常から重度難聴まで5等級、難聴レベルは平均聴力を出すことでわかります。
難聴レベル | 症状 |
---|---|
正常 | ささやき声も聞こえる |
軽度難聴 | ささやき声が聞こえない、離れた距離の声 や 騒がしい場所では聞こえない |
中等度難聴 | 普通会話が難しい、近い距離でも聞こえないことがある |
高度難聴 | 大声だけ聞こえる、会話のほとんどが聞こえない、消防車のサイレンやドアをバタンと閉めた音は聞こえる |
重度難聴 | 大きな声は振動として感じている |
オージオグラムから出せる平均聴力
あなたの難聴レベルは、平均聴力からみることができます。平均聴力は、3つの周波数の聴力の値から計算することができます。この3つの周波数は、私たちの会話で多く使う500Hz、1000Hz、2000Hzのことです。日本では、4分法と呼ばれる方法で平均聴力を算出しています。周波数ごとに500Hzの値をa、1000Hzの値をb、2000Hzの値をcとした場合、(a+2b+c)÷4の計算式が用いられます。
平均聴力は、3つの周波数(500Hz,1000Hz,2000Hz)の聴力の値から計算します。
日本では3つの周波数の聴力を元に、4分法と呼ばれる方法で平均聴力を算出しています。
上の右耳の聴力のオージオグラムを見て、平均聴力を計算してみましょう。右耳の500Hzの数値=50dB(a)、1000Hz=55dB(b)、2000Hz=60dB(c)なので、(a+2b+c)÷4の式にあてはめると、{50+(2×55)+60}÷4=55dBとなります。よって、右耳の平均聴力は55dBと出すことが出来ます。
次に、下の左耳の聴力のオージオグラムを見て、平均聴力を出してみましょう。
左耳の500Hzの数値=70dB(a)、1000Hz=75dB(b)2000Hz=80dB(c)なので、(a+2b+c)÷4の式にあてはめると、{70+(2×75)+80}÷4=75dBとなります。よって、左耳の平均聴力は75dBと出すことが出来ます。
平均聴力から見る難聴レベル
平均聴力別の難聴レベルは、下の図のように分類されます。
難聴レベル | 平均 聴力 | 症状 |
---|---|---|
正常 | 0~ 25dB | ささやき声も聞こえる |
軽度難聴 | 26〜 40dB | ささやき声が聞こえない、離れた距離の声 や 騒がしい場所では聞こえない |
中等度難聴 | 41〜 60dB | 普通会話が難しい、近い距離でも聞こえないことがある |
高度難聴 | 61~ 80dB | 大声だけ聞こえる、会話のほとんどが聞こえない、消防車のサイレンやドアをバタンと閉めた音は聞こえる |
重度難聴 | 81dB以上 | 大きな声は振動として感じている |
上図は日本聴覚医学会による、平均聴力に該当する難聴レベルです。これに照らし合わせてみると、前述の右耳の平均聴力は55dBでしたので中等度難聴。左耳の平均聴力は75dBでしたので高度難聴に該当します。
難聴レベル別、聞こえにくさ、補聴器の必要性
難聴の種類には、軽度難聴、中等度難聴、高度難聴、重度難聴の4つあります。それでは、正常の場合と難聴のレベルごとの症状を平均聴力と照らし合わせ見ていきましょう。
- 昔は聴力検査の結果から、補聴器を始めるタイミングが判断されていました。近年は「ご本人が聞こえに不自由を感じたら補聴器の適応、少なくても補聴器に関する情報収集を始めるタイミング」と言われています。補聴器を検討するタイミングと平均聴力の関係は、あくまで一つの傾向としてご紹介します。
- 詳しくはこちらをご覧ください。
- 補聴器を買うべき?買わないべき?補聴器を始めるタイミングについて
正常
平均聴力:0~25dB以下
聴力が正常な場合、ささやき声や木の葉がそよぐ音も聞こえます。
例えば、深夜の郊外のような静かなところは、数字でみると10dB程度です。
聴力が正常な人は、静かな環境であれば、距離5メートルほど離れた会議でも、ストレスなく会話することが出来ます。
にぎわっている居酒屋などの場合、距離1.5メートル程度の顔の見える人の話は、ほとんど聞き取ることが出来ます。
逆に、うるさい環境で距離3メートルを超える会話は、聴力が正常でも難しくなります。
また聴力レベル正常でも、騒がしい場所だと会話が聞き取りにくいなどの症状がある人もいます。
この場合、常に聞こえづらいわけではないので自覚症状がない人が多いようです。
少しでも、気になることがあれば耳鼻咽喉科の受診をおすすめします。
聴力が正常な場合、ささやき声や木の葉がそよぐ音も聞こえます。
しかし、聴力レベル正常でも、騒がしい場所だと会話が聞き取りにくいなどの症状がある人もいます。
耳の病気の可能性もありますので、少しでも気になることがあれば耳鼻咽喉科の受診をおすすめします。
軽度難聴
平均聴力:26〜40dB
軽度難聴の人は、ささやき声が聞き取りにくくなります。
例えば、図書館の中での会話や、病院で名前を呼ばれる声などです。
これらの声は耳のいい人にとっても静かな声ですが、聴力が正常なら言葉はハッキリ聞こえます。
他の例では、事務所の中で3メートル程度離れた席との会話、にぎわっているファミリーレストランやショッピングセンターなどの周りがにぎやかな環境での会話も、少し難しくなり始めます。
軽度難聴で、補聴器を検討する方は少なく、補聴器を試聴しても購入することを迷う方が多いです。
しかし軽度難聴でも、聞こえにくさに大きなストレスを感じる方はたくさんいらっしゃいます。
軽度難聴は、ストレスが軽度という意味ではないのです。
例えば、仕事で上司の声が聞こえづらい、話し相手に何度も聞き返すことにストレスを感じるという困りごとが生活の中であるなら、補聴器で改善できる可能性があります。
軽度難聴の方が補聴器を初めて使う場合、メーカーによる音質の差を強く感じることがあります。
軽度難聴の人は、補聴器を検討される方は少ないです。
しかし、軽度難聴はストレスが軽度という意味ではありません。
話し相手に何度も聞き返すことにストレスを感じるようなことがありましたら、一度ご相談ください。
中等度難聴
平均聴力:41〜60dB
中等度難聴の人は、普通の声の日常会話が聞き取りにくくなります。
普通の会話の音量は、数字で表すと60dB程度と言われています。
耳がいい人にとって、特にうるさくもなく、静かであるとも感じない普通の声の大きさです。
耳のいい人であれば、問題なく会話が出来ます。
しかし中等度難聴の人は、対面の会話でも、だんだん聞きづらくなり、聞き返しや聞き間違えが増えてきます。
後ろや視界の外から話しかけられた場合は、気付かないこともあります。
具体的に困る場面としては、玄関のチャイム音や、マスクを着けた医師の言葉がハッキリしなくなります。
他にも、3人以上のグループでの会話が、とても聞きづらくなります。
難聴の方の性格にもよりますが、話を理解しないまま相づちをうつことが増えるのも中等度難聴の方には増えてきます。
このように中等度の難聴からは、日常生活のちょっとした場面での困りごとが多くなります。
ほとんどの場合、いくらか自覚症状があり、補聴器を考え始める方が多いです。
中等度難聴の人は、普通の声の日常会話が聞き取りにくくなります。
日常生活のちょっとした場面での困りごとが多くなり、補聴器を考え始める方が多いです。
高度難聴
平均聴力:61〜80dB
高度難聴の人は、普通の声はほぼ聞こえません。
大きな声でかろうじて会話ができます。
相手との距離が1メートル以内で、かつ大きな声で話すと、その音量は70dBほどになります。
日常生活では耳元で大きな声で話してもらったときだけ、話が理解出来ます。
距離2メートル離れて会話することは、非常に難しくなります。
他にも、目の前の電話の着信音に気付かない、道路を歩行中に後方から車が近づいてきても気が付かないなど、日常生活に支障が出てきます。
耳がいい人にとって「かならず聞こえるだろう」と思われるような大きな音に気付かないので、家族や友人から難聴を指摘されることもあるでしょう。
またご家族や周囲の人にとっては耳元で大きな声で話さなければ聞こえないので、生活の負担になります。
対策していない高度難聴は、コミュニケーションを取るうえで、お互いにストレスが溜まっていきます。
ご本人にとってもコミュニケーションがうまく取れないことで、周囲から孤立したように感じることが増えるでしょう。
高度難聴の方にとって補聴器は、豊かな日常生活を送る上で大きな助けになるでしょう。
高度難聴の場合、助成金で補聴器が安く買える場合があります。
高度難聴の人は、普通の声はほぼ聞こえません。日常生活に支障が出てきます。
コミュニケーションを取るうえで、自分もお相手の方にもお互いにストレスが溜まっていきます。
高度難聴の方は、補聴器をつけることをオススメします。
重度難聴
平均聴力:81dB以上
重度難聴は、耳元で大きな声で話しかけても聞こえないことがあります。
お年とともに聴力が低下する加齢性難聴では、ほとんど重度難聴にはなりません。
先天性の耳の病気や、難病指定されている突発性難聴やメニエール病などを患った一部の方が重度難聴になることがあります。
例えば、工事現場の大きな音は、数字で表すと90dB程度です。
重度難聴の人は、このような大きな音が全く聞こえないというわけではありませんが、聞こえにくいのです。
ほかにも、耳のいい人にはうるさいと感じる自動車のクラクションは、数字で表すと110dBです。
重度難聴の人が道を歩いていて、車が近づいて近くでクラクションを鳴らしても気付かないことがあるのです。
このように自身の安全を守るための警告音が聞きにくいのは、日常生活で大きな困りごとになります。
また、重度難聴の人は耳元で大きな声で話しかけてもハッキリとは聞き取れません。
補聴器をつけても、聞き取れないこともあります。しかし、誰かに話しかけられたことに気付くためには必要になってきます。
重度難聴の人は、生活上の危険を回避し、周囲との会話を少しでも理解するために補聴器が必須となります。
ただし、重度難聴の人が補聴器をつけても効果や会話の改善には限界があり、個人差があります。
重度難聴は、耳元で大きな声で話しかけても聞こえないことがあります。
お年とともに聴力が低下する加齢性難聴では、ほとんど重度難聴にはなりません。
生活上の危険を回避し、周囲との会話を少しでも理解するために補聴器は必須と考えます。
ただし、補聴器をつけても効果や会話の改善には限界があり、個人差があります。
まとめ
聴力検査の結果を読めば、難聴レベルがわかります。
また、難聴レベルによって、難聴の症状や日常の困る場面が大きく変わることがわかります。
自分の耳がどんな状態であるかを知り、どの難聴レベルであるかを知った上で、今後の治療の対策や聞こえの改善に生かしていきましょう。ご家族や友人に難聴者がいれば、難聴の症状による困りごとを理解する助けになれば幸いです。
当店では、聞こえの無料相談、補聴器の試聴(3か月無料貸出)サービスを行っております。この記事のどこかを読んで、「自分が当てはまるかも」と思った方は、ぜひご相談ください。
難聴の基礎や補聴器に関して、さらに知りたい方はこちらをご覧ください。
コミュニケーションにお困りの方に寄り添える仕事を目指し、2012年に言語聴覚士免許取得。8年間の病院勤務にて聴覚障害の領域などを担当。難聴の方の聞こえを改善するため、補聴器を専門にして働きたいと考え、2020年プロショップ大塚に入社。耳鼻咽喉科での勤務経験を活かし、さまざまな情報や知識を分かりやすくお届けすることを心がけています。
保有資格:言語聴覚士
【監修】
補聴器専門店プロショップ大塚を運営する株式会社大塚の代表取締役。認定補聴器技能者、医療機器販売管理者。
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監修においては、学術論文もしくは補聴器メーカーのホワイトペーパーなどを元にしたエビデンスのある情報発信を心がけています。
なお古いページについては執筆当時の聴覚医学や補聴工学を参考に記載しております。科学の進歩によって、現在は当てはまらない情報になっている可能性があります。
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