言葉が聞き取れない時は「語音明瞭度(語音弁別能)」の検査
難聴になると多くの場合「言葉が聞き取れない」「ハッキリしない」「相手が何を言っているのか分からない」など、言葉の聞き取りが問題になってきます。このページでは音の聞こえではなく、言葉を聞き分ける力を調べる語音明瞭度検査(語音弁別能検査)と、それによる補聴器の効果測定についてご紹介します。
困るのは音ではなく、言葉が聞き取れないこと
一言に難聴と言っても、人によって症状や困りごとはさまざまです。しかし、ほとんどの方に共通している困りごとは「何を言っているか、言葉が聞き取れない」です。
これは決して珍しいことでなく、難聴の方の多くは音ではなく、言葉の聞き取りに悩みを感じています。
困っているのが音の聞こえではなく、言葉の聞き取りであれば、どれくらい言葉を聞き取れるのか?もしくは聞き間違えるのか?まずは、これを検査することが必要です。
言葉の聞き取りが分かる『語音明瞭度検査』
一般的に行う聴力検査(音が聞こえたらボタンを押す検査)では、どのくらいの大きさの音なら聞こえるかのみを調べます。
これとはまったく別に、言葉の聞き取りを調べる「語音明瞭度検査」があります。病院や補聴器店によっては「語音弁別能検査」と呼ぶ場合もありますが、同じものです。
言葉が聞き取れない方の場合は、こちらの検査が大切です。
ここからは語音明瞭度検査についてご紹介いたします。
①検査を行うスタッフとお客様が一緒に防音室に入ります。
②防音室の中でヘッドホンを着けて、日本語を一文字ずつCDで流します。
③検査を受ける方は聞こえた通りに記述もしくは復唱し、スタッフがチェックしていきます。
④お答えいただいた結果の正誤をパソコンソフトに入力します。その結果が下のグラフです。

検査機器の設定・較正は補聴器適合検査の指針(2010)に準ずる。
語音明瞭度検査の結果と読み方
①普通の声の大きさの時の正答率は?
この表の読み方をご紹介します。
まず下の表を見てください。
横軸は、どのくらい大きな声で検査したかの目盛りです。
上のグラフでは、60dBHLを赤く示しましたが、これは距離1メートルで耳のいい人同士が会話する平均的な声の大きさです。
このグラフには、右耳が〇、左耳は×で表されています。このあとは右耳の〇を例に解説します。
次に縦軸の目盛りに注目して下さい。縦軸は言葉の聞き取りの正答率です。
このグラフから、右耳について言葉を聞き取る能力(語音明瞭度)を読み取ると、60dBHLという普通の声の大きさでは、正答率70%でした。逆に言えば30%は聞き間違えるということです。
②一番言葉が分かるちょうどいい声の大きさは?
今度は、同じグラフで、一番言葉が分かる声の大きさを読み取ってみます。
①グラフの中で一番高い〇印を探します。
②その印の高さから、正答率を読み取ります。なんと100%聞き取れています。
③同じ〇印から下方向を見てみます。100%聞き取れる声の大きさは80dBHLでした。なお80dBHLというのは、とても大きな音です。
普通の人が出せる声の限界に近い大音量です(距離1メートルの場合です)。地下鉄の電車が入ってきた時のホームの最もうるさい瞬間も80dBHLほどの音量になります。
補聴器を使った場合の語音明瞭度検査
語音明瞭度検査は、補聴器を使ってどれくらい言葉の聞き取りが改善したかを調べる目的でも使われます。
通常、補聴器なしでどれくらい言葉が聞こえるかを調べた後に、補聴器を耳につけた状態で、同じ検査が行われます。補聴器なしの場合はヘッドホンを使い、補聴器をつけている時にはスピーカーを使うのが一般的です。
厳密に同じ条件ではありませんが、これによって補聴器によって、どれくらい言葉の聞き取りが改善したかが判断できます。
この表の結果をみると40dBHLや50dBHLという小さな声についても、補聴器をつけることで聞き取りの成績が改善されていることがわかります。
語音明瞭度検査を受けるには
どのくらい音が聞こえるかの聴力検査で同じような結果だとしても、言葉を聞き取る力は一人一人違います。
普段の生活で「言葉が聞き取りにくい」と感じている人は、語音明瞭度検査を受けることをおすすめします。
補聴器相談医がいる耳鼻咽喉科なら語音明瞭度検査を実施できる設備が整っています。
(実際に検査を行うか否かは医師の判断になります)
- 語音明瞭度検査は診察・診断のために行う検査です。
- 補聴器店では、医療機関で行うような診察や検査および診断などの医療行為は行っていません。
- 補聴器店で行っているのは、目的を補聴器の調整に限定した語音明瞭度の“測定”です。測定結果は補聴器を調整するための“判断”にのみ使われます。
- 耳のケガや病気、治療に関する相談は、耳鼻咽喉科を受診しましょう。