補聴器メーカー:オーティコンの特長
2022年からプロショップ大塚では補聴器メーカー、Oticon(オーティコン)の取り扱いを始めました。オーティコンは脳科学の研究を活かし、業界をリードする最先端の聴覚研究をしているメーカーです。2016年に発売された「Opn(オープン)」は、騒がしい場所で周囲の音と言葉をバランスよく聞き取る機能が搭載されており、2021年発売の「More(モア)」ではその特長がさらに進化しています。
補聴器メーカー「オーティコン」ってどんな会社?
オーティコンは1904年に設立された補聴器メーカーです。創業者のハンス・デュマント氏が、自身の妻の難聴を助けるために創業しました。長年「ピープル・ファースト」をテーマに掲げ、難聴の方の悩みを解決するために努力を重ねています。
デンマークに独自の研究所「エリクスホルム研究所」を設立し、補聴器メーカーとしては他社に先駆けて、耳だけでなく脳科学に着目した研究を行ってきました。
日本国内においても、九州大学、国際医療福祉大学と共同で、日本語に合う補聴器の音質を研究しています1)。海外メーカーで、日本語のためにこうした研究を行っているのはオーティコンだけです。
脳科学を活かしたオーティコン補聴器
脳が言葉を聴く働きを研究したBrainHearing
オーティコンは、難聴の方がよりよく聞こえるために、耳だけでなく脳についても研究してきました。
人が音を「聴いて」いるとき、その音がどんなものか、実際に感じ取り、判断し、聞き分けているのは脳です。人が言葉を聞き取って理解するためには、耳だけでなく、耳と脳の働きの両方が大切というわけです。
オーティコンは、音を聴いているときの脳の働きを調べ、脳が「音を音として捉える」「意味のある音に集中する」「その音を言葉として認識する」などのプロセスを発見しました。この他にも補聴器を使って聞こえすぎることへの疲れ、耳のいい人が雑音の中で言葉が聞こえる仕組みなども研究しています。
これらの研究で発見された知見が、オーティコン補聴器の開発に活かされています。
ノイズの中でも言葉が聞き取れる補聴器
オーティコンの補聴器は、軽度から中等度の難聴の方にとって「レストランなど騒がしい場所での言葉の聞き取り」「騒がしい場所での複数人での会話などでの聞き取り」を得意としています。
活発に活動する高齢者のことをアクティブシニアと呼ぶことがあります。最近の高齢者は、軽い難聴があっても人と会う機会が多いものです。
軽い難聴の場合、困りごとの多くは「相手の声が小さい」ことではありません。軽い難聴の方が最初に困るのは「雑音が多い場所でだけ聞き取りにくい」というものです。
オーティコンは、この点に着目し、2016年に「Opn(オープン)」という補聴器を開発しました。Opnには、脳科学技術に基づいた技術で、言葉と雑音を両方認識しながら、聞き分けを助ける機能が初めて搭載されました。
既存の補聴器にも雑音の中で言葉を聞き取りやすくする機能はありますが「顔を向けている方向の言葉に特化する」という製品がほとんどです。
オーティコン「Opn」の技術は雑音がある場所で横や後ろなど、どの方向から話しかけられても大丈夫という点が画期的でした。
他メーカーと比べた時のオーティコン補聴器の効果
実際に「Opn」が開発された時、その効果を調べた調査結果は画期的なものでした。
上のグラフは“騒がしい場所での聞き取り”を研究室で再現し、Opnの効果を調査した結果です。調査に参加されたのは軽度から中等度難聴の方々。
研究室における検査では、Opn補聴器に搭載されている雑音抑制機能によって、昼時のレストランのようなかなりうるさい場所での言葉の理解度(明瞭度)が20%から75%と、改善しました。2)
また別の調査では、もっと難しい環境での効果を調べたものがあります。
大変いじわるな検査なのですが、音声よりも大きな雑音がある中で、色々な方向のスピーカーから聞こえる言葉を聞き取り、しかも雑音の音量を少しずつアップさせて言葉が聞き取れる限界の雑音の音量を調べるというテストです。
他社の同価格帯の補聴器とOticonのOpnを比較した結果、真正面の言葉の聞き取りについては同じ点数でしたが、横方向から話しかけられた場合には、周りの雑音が15%大きくなっても言葉を聞き取れるという結果でした。
イメージとしてはレストランでお友達何人かで食事をするときなどに、横に座った人の声が聞き取りやすくなることを想像してもらうと良いかと思います。この他、ご夫婦で横に並んで、散歩するときの会話を聞き取るときなどもメリットがあります。
これら2つの調査結果は、補聴器を使った人の満足度という主観ではなく、言葉の聞き取りの正答率などの客観的な調査結果です。いわゆる満足度アンケートと比べて、信頼できる評価と言ってよいでしょう。
なお、あくまで軽度から中等度難聴までを対象にした調査結果です。高度に進行した難聴で、同じ効果が得られるとは限りませんので、詳しくはご相談ください。
脳の働きを模したディープニューラルネットワークAIで雑音を抑制
オーティコンは脳研究の知見を活かし、補聴器業界で初めてAIを活用した雑音抑制技術を開発しました。
ディープニューラルネットワーク(以下、DNN)という人間の脳の働きを模した高性能な学習型AIが、1200万以上の音の情景を学習し、これによって、あらゆる場面に応じて最適な雑音抑制機能が働くようになりました。
このDNN雑音抑制は、2021年発売の「more」に初めて搭載されました。
DNN雑音抑制の効果を検証した研究はいくつかありますが、その一つをご紹介します。
この検証はOpnのときより、さらに聞き取りが困難な環境で効果が検証されました。
検証の目的は、DNN-AI雑音抑制が搭載されたMoreと、搭載されていないひとつ古いモデル(OpnS)の音声の聞き取りを比較することです。
対象者は難聴の被検者18人(平均年齢68.5歳)です。
被検者の正面からある文章を話者が話しかける中、雑音を流すスピーカーが3つの方向に設置されました。
この検証では、たくさんの雑音の中で被検者が70%聞き取ることが出来れば合格、それを下回れば不合格として、雑音の音量は67dBSPLに固定され、話声は72dBSPLからスタートし音量が変更され、ギリギリ70%が理解できる音量が調査されました。
このテストでは「周りがうるさい中で7割ほど聞き取れる限界の声の小ささ」が分かります。
結果が良好なら、雑音抑制機能がよく働いていると言えます。
検証の結果、DNN-AIで開発された雑音抑制の有無によって、雑音下での聞き取りは18%改善されることが示されました。
オーティコン補聴器が合いやすい人
私たちプロショップ大塚では、上記の研究結果やこれまでお客様へ補聴器を提供してきた経験から、以下に当てはまる方には、一度オーティコンの補聴器を試していただきたいと考えています。
・グループでお話をしたり、旅行や買い物に出かけることが好きな軽い難聴の人
・仕事で、5人~10人くらいの会議をすることが多い軽い難聴の人
・レストラン・ホテル等のホール業務で、お客様から話しかけられることがある人
・周囲の環境音が最低限に聞こえ、かつ人の声をしっかり拾う補聴器が欲しい人
プロショップ大塚では、オーティコン補聴器のお貸出しによる試聴サービスを提供中。購入する前にぜひ実際の生活で体験してみて下さい!
オーティコンの特徴を生み出した画期的なテクノロジー
オーティコンの特徴を生み出した技術とその効果についてご紹介します。
※現在は終売したモデルを含みますが、最新モデルにはこれらのテクノロジーの改善版が搭載されています。
歴史を変えた補聴器「Opn」
ノイズの中で360度からの聞こえを聞き取りやすくする機能を初めて搭載した補聴器がOpn(オープン)シリーズです。
通常の補聴器は、周りに雑音があると顔を向けている正面の言葉を残して、横や後ろ方向の音声をカットしてしまう指向性マイクロフォン機能が働くのが一般的です。しかし、このOpnから搭載された360度雑音抑制は、横や後ろからの音声を正確に残すテクノロジーが搭載されました。
2016年に発売され、この画期的な技術は補聴器ユーザー・補聴器の専門家から注目を浴びました。3)
プロショップ大塚では、オーダーメイド耳あな型補聴器のレンタルサービスを実施しています。詳しくは下記リンク先をご覧ください。
AIによる雑音抑制機能を初めて搭載した「More」
「More(モア)」は、2021年に発売されたモデルです。
先に紹介したOpnシリーズの特長を受け継ぎ、雑音が多い環境の中で会話の聞き取りを助ける機能がさらに強化されました。
Moreには補聴器業界で初めてAIを活用して開発された雑音抑制技術が搭載されました。ディープニューラルネットワークという人間の脳の働きを模した高性能なAIが、1200万以上の音の情景を学習し、これによって、あらゆる場面に応じて最適な雑音抑制機能が働くようになりました。
実際に使ってみると、さまざまな場面で周囲の音と人の声をバランスよく調整してくれます。
その効果について、オーティコンによる調査では、研究室の中の検査において、少し大きい雑音がある状況下での音声が、Opnに比べ15%理解しやすくなったという結果が報告されています。4)
オーティコンのおすすめ補聴器
私たちがおすすめするオーティコンの補聴器を紹介します。
なお、先に紹介したノイズの中での聞き取りを助けてくれる機能は、補聴器の値段に比例して強く働きます。
最新の耳あな型補聴器「Own」
オーティコンのオーダーメイド耳あな型の最新器種が「Own」です。
Own発売前の最新器種は「Opn」でしたが、そこから4年ぶりの新作となり、補聴器の内部部品も一新されて、機能が大きく向上しました。
補聴器内部のチップは先に紹介した「More」と同じ、AIを搭載した新チップを使用。
騒がしい環境で、ことばの聞こえと周囲の物音をバランスよく調整する機能がついています。
Ownでは、補聴器の小型化にも成功。なるべく目立たない補聴器をご希望の方に、従来のオーティコン補聴器よりも小さいサイズでお作りできるようになりました。
騒がしい場所での言葉のきこえを重視する方には標準的な大きさのITCタイプ、できるだけ小さく、目立たない補聴器をご希望の方にはIICタイプがおすすめです。
カラーは従来のベージュを基本にしたデザインのほか、おしゃれなブラックカラーも追加されました。
最新の耳かけ型補聴器「Intent」
2024年発売の「Intent」ではディープニューラルネットワークによる雑音抑制機能がさらに進化しました。
学習のきめ細かさが「More」の16倍程になりました。このきめ細やかさというのは、写真の解像度と似たもので、より細かいもののほうが周囲の環境を正確に認識できるようになります。
周囲の環境をより正確に認識できるようになることで、雑音抑制機能をその時々に応じて効果的に調節することが可能になりました。
また、これまでOticonが最新シリーズを発表・発売するときは、プレミアム(Intent1)、アドバンス(Intent2)、スタンダード(Intent3)という3つの価格帯でしたが、Intentでは4つめの価格帯(Intent4)が設定され、最新機能がお求め易くなりました。
Intentの上位2グレードには加速度センサーが搭載されています。
このセンサーが計測した情報を用いることで、補聴器を使っている人の動きを推測することができます。
その人が会話に集中したいのか、歩き回って何かを探しているのかを推測して雑音抑制機能の強さを、自動で調整してくれます。
オーティコンが行った、大勢が話す環境での内容の理解度に15%の差が出ました。
小児用補聴器Play PXシリーズ
「Play PX(プレイ ピーエックス)」は小児用の補聴器で、Opnシリーズより後に発売されており、性能はOpnシリーズを上回ります。
お子さんが使いたくなるよう多くのカラーが用意されています。
また電池の誤飲を防ぐためのチャイルドロック、電池の残量がわかるLEDライトなどが搭載。これらの機能は子供だけでなく、補聴器の管理を他の人に任せている高齢の方にもおすすめです。
- オーティコンは2024年9月現在、充電式の耳あな型補聴器は販売していません。
- 現在世界の主な補聴器メーカーでは、リサウンド、スターキー、シグニアの3ブランドが充電式オーダーメイド耳あな型補聴器を販売しています。
- 充電式の耳あな型補聴器については、こちらの記事をご覧ください。
- 専門家がおすすめする充電式耳あな型補聴器4選
あなたに合った補聴器を見つける方法
補聴器メーカーは数多くあり、それぞれに特長があります。
聞こえに関する困りごと・聴力・ご予算・見た目のご希望や指先の器用さなどは一人ひとり皆さん違います。ご自分に合った補聴器を見つけるために、ぜひ私たちプロショップ大塚に、あなたの補聴器探しのお手伝いをさせて下さい。
私たち補聴器専門店プロショップ大塚では、世界で主要な補聴器メーカー全6社の補聴器を取り扱っております。全メーカーの補聴器が試聴サービスの対象です。
もちろん相談だけの方も大歓迎です。聞こえに関する困りごとがありましたら、お気軽にご相談ください。
参考文献
1)日本語の特性を考慮した補聴器のフィッティング理論VAC-J開発に関する研究報告|https://wdh03.azureedge.net/-/media/oticon-jp/main/pdf/whitepaper/wp-vac-j-2019-v1.pdf?la=ja-jp&rev=FAEF&hash=70F74F7B12330A902A5E673EF46BC627(2022年12月27日最終閲覧)
2)Pushing the noise limit|オーティコンホワイトペーパー(英語)|https://wdh03.azureedge.net/-/media/oticon-jp/main/pdf/whitepaper/wp-26659uk_new_brainhearing_evidence.pdf?la=ja-jp&rev=65DC&hash=6894ABF90B9BF3C570F8E023B84DEF3C(2022年12月27日最終閲覧)
3)OpenSound Navigator™ for Oticon Opn Custom Instruments|オーティコンホワイトペーパー(英語)|https://wdh03.azureedge.net/-/media/oticon-jp/main/pdf/whitepaper/wp-30994uk_oticon_opn_custom_audiology_kite.pdf?la=ja-jp&rev=ECD5&hash=C23E7E8E7B577F00BB2CCFA2746A93A9(2022年12月27日最終閲覧)
4)オーティコン モア クリニカルエビデンス|オーティコンホワイトペーパー(英語)|https://wdh03.azureedge.net/-/media/oticon-jp/main/pdf/whitepaper/wp-71933uk_oticon-more_clinical_evidence_a-glimpse-into-new-brainhearing-benefits.pdf?la=ja-JP&rev=D289&hash=33A5DB18909F2D348113CC43222E2EB4(2022年12月27日最終閲覧)
【監修】
補聴器専門店プロショップ大塚を運営する株式会社大塚の代表取締役。認定補聴器技能者、医療機器販売管理者。
たくさんの難聴の方々に、もっとも確実によく聞こえる方法をご提供することが私たちのミッションです。
監修においては、学術論文もしくは補聴器メーカーのホワイトペーパーなどを元にしたエビデンスのある情報発信を心がけています。
なお古いページについては執筆当時の聴覚医学や補聴工学を参考に記載しております。科学の進歩によって、現在は当てはまらない情報になっている可能性があります。
※耳の病気・ケガ・治療、言語獲得期の小児難聴や人工内耳については、まず医療機関へご相談下さい。