シーメンス・シグニア補聴器の機能と、補聴器専門家の間での評判
シーメンス・シグニア補聴器は、中等度難聴の補聴器初心者に適応しやすい
シーメンス・シグニア補聴器の特徴には「うるささの軽減」「うるさい場所での言葉の聞き取り」「耳に着けた装用感の快適さ」があります。これらの機能は、中等度難聴の補聴器初心者、または補聴器を買っても使わなくなってしまった方に有効なことが多いと、補聴器専門家の間で評価されています。シーメンス・シグニアの機能と特徴をご紹介します。
補聴器から遠ざかった人に寄り添って開発された機能
補聴器を買っても使わなくなってしまう人は、昔から少なくありません。その理由には「雑音がうるさい」「外やガヤガヤしたところで言葉が聞き取れない」「補聴器のつけ心地が悪い」などです。
20年以上前からシーメンス・シグニア補聴器は、補聴器を使わなくなってしまった人の問題の解決に役立つ機能を数多く開発してきました。『補聴器の失敗経験者』に役立つシーメンス・シグニア補聴器の機能をご紹介していきます。
うるさい場所でも、音を快適にする「雑音抑制機能」
補聴器を初めて着けてみると「雑音がうるさい」「雑音が大きいから、音を小さくすると、音全てが小さくなっちゃう」「雑音がなければもっと聞きやすいのに」などと雑音に対するコメントは昔から少なくありませんでした。
シーメンスが2008年に発売したD6シリーズの「スピーチ&ノイズマネジメント機能」は、交通騒音などの不愉快な雑音を減らすものでした。この雑音抑制機能の働きによって雑音の多い場所で補聴器を使っても、うるささに悩まされることが減りました。その後も雑音抑制機能は名前を変えて、改善され続けています。
しかし雑音抑制機能だけでは、補聴器に期待されていた「うるさい場所で言葉が分かる」という効果は、十分に得られませんでした。不快さ・うるささは減らせても、言葉の聞き取りの改善は微々たるものでした。
うるさい場所で、言葉を聞きやすくする「ビーム指向性機能」
雑音抑制機能は、うるさい場所での耳障りな音や不愉快さは緩和してくれましたが、うるさい場所での言葉の聞き取りを助ける効果は限定的でした。
シーメンスでは、この問題を解決する機能として、2015年発売のbinax(バイナックス)に「ビーム指向性機能」を搭載しました。このビーム指向性機能は、自分が顔を向けている前方の声にフォーカスし、他の方向から届く音は大幅に抑えるという画期的な機能です。
注:「ビーム指向性」は左右両方の耳に補聴器を着けたときだけ機能します。
その効果は、レストラン程度のうるさい環境で、軽い難聴者がbinaxの補聴器を使うと、耳の良い人を超えて言葉が分かるほど(シーメンス・シグニアの発表)でした。
なお他のメーカーにも、ビームではない指向性機能がありますので、補足しておきます。
ビーム指向性機能は、マイクを2つ搭載した補聴器が、左右で相互に通信することで合計4つのマイクが連動して機能します。この4つのマイクによって、音がどちらの方向から入ってくるか、角度を正確に分析し自分が顔を向けている方向の声だけにフォーカスします。
2015年に開発された「ビーム指向性機能」は、その後、2016年のprimax(プライマックス)シリーズ、そして最新のNx(エヌエックス)シリーズと、改善・改良が進んでいます。
なお2015年当時は、片耳220,000円以上の補聴器にしかビーム指向性機能が搭載されていませんでした。2020年現在では、より低価格な補聴器にも搭載されるようになりつつあります。
うるさすぎず、でも十分な音量にする「ツインニーポイント機能」
2010年頃までは「うるさすぎず、十分な音量の補聴器」というのは、難しい課題でした。
会議などで離れた人の声を聞きやすくするための「小さな音を大きくすることが得意な補聴器」は古くからありました。しかし食器の音や交通騒音などが大きくなりすぎてしまい、うるさくなりやすいという弊害がありました。
この逆に、外出時に快適な「大きな音を抑えることが得意な補聴器」も古くからありました。しかし小さな声やボソボソ声をハッキリ大きくさせることが出来ませんでした。
2011年のXCEL(エクセル)には、初めてこの二つを両立させる「ツインニーポイント機能」が搭載されました。この機能は、周りの音の大きさに合わせて、音の増幅を細かく変化させるものです。「ツインニーポイント機能」という言葉は、カタログなどに記載されず、あまり目立ちません。しかし補聴器の専門家が補聴器を調整するときに、このツインニーポイント機能があると、ボソボソ声などの小さな音は充分に増幅し、元々聞こえるような大きな音は、あまり増幅しない様に微調整することが出来ます。
現在では、主要な補聴器メーカーの片耳50,000円以上の器種であれば、その多くにツインニーポイント機能が搭載されています。
お皿の割れる音など、瞬時のうるささを抑える「サウンドスムージング機能」
食器が割れる時の音は、難聴でなくてもうるさく不愉快なものです。普通の補聴器を使っている難聴者の場合、急に発生する大きな音に対して、さらに強力な不愉快さを感じます。
「サウンドスムージング機能」は、急に発生する大きな音(突発音とか、衝撃音と言います)を、自動で瞬時に抑制することで、不愉快さを防ぎます。
具体的には、お皿を落として割れる音や、ドアが風で「バタンッ!」と閉まる大きな音を抑えてくれます。この他、食器と食器が当たるカチャカチャ音や、家の中を飛んだり走ったりする子供の足音なども抑えてくれます。
なお「サウンドスムージング機能」が搭載されていない補聴器でも、調整によって突発音による不愉快さを減らすことは可能です。しかしサウンドスムージング非搭載の補聴器で、強大音が増幅されないように(大きな音が大きくなりすぎないように)調整すると、会話が聞こえづらくなってしまう可能性があります。
「サウンドスムージング機能」が初めて搭載されたのは、2006年発売のCentra(セントラ)でした。現在では、他の補聴器メーカーにも「突発音を抑制する」という意味で同等の機能はあります。この機能を搭載した補聴器をお探しの場合、メーカーによって高級品にしか搭載されていない場合が多いです。シバントス社の場合、2primaxシリーズ(片耳160,000円~)から搭載されており、お安くなっています。
自分の声に驚かずに済む「OVP機能」
初めて補聴器をつけて驚くことの一つに「自分の声」があります。
補聴器を着けると、周りの声が大きくなりなります。同様に、今までしっかり聞こえていなかった自分の声も、補聴器をつけることで大きく聞こえるようになります。自分の口は、自分の耳の近く(10センチほど)、耳に届く自分の声は意外と大きなものなのです。
過去には、補聴器を使って「自分の声」が大きく聞こえてしまうことを理由に、補聴器を諦めてしまう方がいました。

自分の耳と声が近くて、人の声より大きく感じます。
自分の声のうるささ、違和感を解消するために開発されたのが、OVP機能(オーヴィーピー、Own Voice Processing)です。
OVP機能は、補聴器を調整する際に、ご本人の声を録音します。その録音データをもとに、補聴器の中のコンピュータがご本人の声を識別し、ご本人の声だけ増幅しないよう瞬時にコントロールします。
このOVP機能によって、自分の声のわずらわしさを大きく軽減することができるようになりました。なおOVP機能は他のメーカーにはありません。
補聴器専門家が「補聴器初心者」と「補聴器失敗経験者」にシーメンス・シグニアを提案する理由
シーメンス・シグニアの補聴器は、言葉以外の雑音を強力に抑える機能や、自分の声を抑えて他の音を聞きやすくするなどに特徴があります。これらの機能は他のメーカーと比べると、比較的お値打ちな器種に搭載されています。または他メーカーには無い機能です。
実際に、私たち補聴器の専門家の経験として、お客様に他のメーカーを試聴していただいたときの感想が「食器の音がうるさい」「にぎやかな場所で言葉がわからない」「自分の声がうるさい」「音が大きすぎる」などの感想をいただいたときに、シーメンス・シグニアの補聴器に変更すると、ご満足いただけるケースが多いです。
なおシーメンス・シグニア補聴器にも不得意な領域はあります。例えば、距離3メートルを超えるような離れた場所の言葉を聞き取ることは難しいことがあります。耳あな型の補聴器を小さく作るのは、他にもっと得意なメーカーがあります。
まとめてみました。