【Q&A】聴覚過敏で補聴器を使用中。騒がしい場所での会話を楽にするにはどうしたらいいの?
- 聴覚過敏で、デジタル補聴器をつけています。私自身騒がしい居酒屋やお店に行くと、話している相手の声が全く聞こえず、いつも口の動きを見ているため、ものすごく疲れます。デジタル補聴器について、どの様な検査をして、どこのメーカーを使ったほうがいいのか教えてください。聞こえ方なども教えてください。
回答:聴覚過敏については、まず「UCL」という特殊な聴力測定が必要です。その上で補聴器は、突発音抑制や指向性機能に優れたメーカーを選ぶのが良いと思います。なお聴覚過敏の方が補聴器を使う場合、既製品のゴム耳せんではなく、オーダーメイド耳せんが必要です。
①聴覚過敏とUCL、②補聴器の突発音抑制と指向性機能、③耳せんの種類についてご説明します。
- 本記事は弊社代表の大塚がボランティア活動として行っているインターネット匿名質問箱へのお返事を編集・転載したものです。内容は当時のものになります。
聴覚過敏とUCL
質問者さんのおっしゃる「聴覚過敏」が、どの程度の不快さかは分かりませんが、難聴になった一部の方は、小さい音が聞こえづらいだけでなく、聞こえた音に対して「響く」「割れる」「エコーがかかる」などの不快さを感じる場合があります。こういった音に対する不快さであるため、一部では聴覚過敏のことを音過敏と言ったりもします。
こういった健康上の問題がある場合、まずは最寄りの耳鼻咽喉科をぜひ受診して下さい。
さて、すでに補聴器はお使いということなので、補聴器に関した部分について出来る範囲でお返事させていただきます。
補聴器を使うことで、音に対する不快さを感じている場合には、不快閾値というものをお調べする必要があります。
不快閾値は、通常の聴力測定と似ていますが、聞いていただく音の大きさが異なります。
小さい音から少しずつ音量を上げていき、被検者の方が「聞くことに不快を感じた!」と思ったら、ボタンを押していただき、不快さを感じる音の大きさを調べます。
検査を受けている最中、音がだんだん大きくなると、音の大きさの感覚は「やや大きい」「大きいが聞いていられる」「大きくて長くは聞いていられない」「大きくて短時間でも耐えられない」と変化していきます。
聴力測定と同じく、低い周波数から高い周波数まで、それぞれ調べていきます。
この不快閾値の値が分かると、どんな音に対して不快さを感じているかが分かります。
補聴器を調整する際に、この不快閾値を調べてあると、補聴器から出す音が不快閾値を超えないように設定できるため、不快さを減らすのに効果的です。
居酒屋での聞き取りを助けてくれる補聴器
①まずは聴覚過敏の対策になる突発音抑制機能
補聴器には、言葉以外の雑音を抑えるために、また言葉を分かりやすくするために様々な機能が入っています。一言で雑音抑制機能と言っても、多種多様です。その中で、聴覚過敏の方にとって、特に必要な機能は突発音抑制機能です。
これは突然発生する大きな音をピンポイントに抑える機能で、大きな音に対する不快さの軽減に役立ちます。例えば、お皿を落としてしまった時のガシャーンという音、ドアが勢いよく閉まるバンッという音を想像していただくとよいでしょう。
この突発音抑制機能だけに注目した場合、総合的にコストパフォーマンスが良いのはシグニア補聴器です。主要5メーカーで突発音抑制機能が備わっている最安値の補聴器を比較すると下記のようになります。
※下記表は、突発音抑制機能を搭載した最安値モデルのため、型落ち品を含みます。補聴器の形状はRICタイプ電池式で比較しました。購入を検討される際には試聴・比較をおすすめします。
メーカー・器種名 | 両耳価格 | 片耳価格 |
---|---|---|
シグニア:Pure2Nx | 360,000円 | 180,000円 |
WIDEX:ユニーク220FS | 350,000円 | 200,000円 |
フォナック:オーデオB70 | 640,000円 | 320,000円 |
GNリサウンド:リサウンド・ワン4 | 320,000円 | 160,000円 |
スターキー:リビオ1000 | 300,000円 | 150,000円 |
メーカーにより音質や特徴が異なります。こちらの記事もご覧ください。
2023年:補聴器メーカー各社の特徴と評判、上位6社を徹底比較
②雑音のある場所で必要な”指向性機能”
騒がしい居酒屋で言葉が聞き取りにくくなるのは、聞きたい言葉をかき消す邪魔な音にあふれているためです。邪魔な音を抑えて、顔を向けている方向(つまり聞きたい言葉)を残してくれるのが、補聴器の指向性マイク機能です。
メーカーおよび価格によって、指向性機能の性能は大きく変わります。特に優れているのは、下記3社です。
・シグニア「ビーム指向性」
・フォナック「非常に騒がしい中でのことば」
・リサウンド「ウルトラフォーカス」
耳の良い人でも、騒音の中で人の声を聞き取る場合「相手の顔を必ず見ること」が必要です。難聴の人が補聴器の指向性機能を使うと、自分が相手の方に顔を向けている時に、他の方向の音を拾いにくくすることが出来ます。
もし、にぎやかな居酒屋のような場面で、”横から話しかけられても、相手の言葉が分かりたい”という要望をお持ちの場合、さらに高機能な補聴器が必要になるかも知れません。
さらに高機能な指向性機能を紹介します。
・シグニア「スピーチフォーカス360°」
・フォナック「全方向(360°)の会話」
上記の2つは、横や後ろから話しかけられても、補聴器のコンピュータが自動でそれを認識し、声を拾う方向を自動で切り替えてくれます。
なお居酒屋のようなうるさい場所で、距離2mを越えて言葉を聞き取ることは耳の良い人でも困難な場面があります。距離2m以内の会話を改善する方法としてご理解いただければと思います。
聴覚過敏対策としてのオーダーメイド耳せん
耳かけ型の補聴器には、オーダーメイドの耳せんと既製品のゴム耳せんがあります。既製品のゴム耳せんだと、すき間から音が入ったり、逆に漏れたりしてしまいます。
難聴と聴覚過敏の両方がある方が、補聴器を使う場合、鼓膜に届く音を正確にコントロールする必要があります。そのためにはオーダーメイド耳せんが必要になる場合があります。
もし今、既製品のゴム耳せんをお使いなら、補聴器を買い替える前に、オーダーメイド耳せんを試してみることも良いと思います。
【監修】
2012年に言語聴覚士免許取得。8年間の病院勤務にて聴覚障害の領域などを担当。2020年プロショップ大塚に入社。
所属学会・協会等:日本聴覚医学会、日本言語聴覚士協会、東京都言語聴覚士会
記事の監修では、言語聴覚士としての知識と耳鼻咽喉科での勤務経験を活かし、既存の研究や信頼できる文献を確認・精査した上で、情報の正確さと分かりやすさの両方を監督しています。
なお身体の問題は一人ひとり異なりますので、記事の情報がすべての方に確実にあてはまるとは限りません。
個別の疾患・治療に関しては医療機関へご相談ください。