耳の3D形状撮影装置オトスキャン(Otoscan)を全店に導入しました。
2019年12月、当社はおそらく日本で初めて全店舗にオトスキャン(Otoscan)を導入いたしました。オトスキャンは、耳専用の3D 形状撮影装置。オーダーメイドの耳せんや耳あな型補聴器を制作するために使います。この記事では、従来の方法に比べて、どんなメリットがあるのかご紹介していきます。
オトスキャン(otoscan)とは?
オトスキャンは、世界初の3Dデジタルイヤスキャナーです。レーザーを用いて、非接触で耳の形状を立体的に撮影することが出来る装置になります。
これによってオーダーメイドの耳あな型補聴器やオーダーメイドの耳せん(イヤモールド)のご注文をいただいた際、お客様への負担を減らし、耳の病気やケガの経験者の方には今まで以上に安全になり、より良い補聴器が作れるようになりました。
オーダーメイドの耳あな型補聴器やオーダーメイドの耳せんを作るとき、これまでは下の画像のような手法がありました。
オトスキャンでは、下の動画のようにレーザーで耳の形状を撮影します。耳型そのものは採取しません。
実際にオーダーメイドの補聴器を作る場合、必ずしも耳型は必要ありません。補聴器は、耳の立体形状のデータだけあれば作れるので、オトスキャンは3D形状データを直接撮影しているのです。
オトスキャンを活用するメリット
オトスキャンには4つのメリットがあります。
①(新人が使っても)正確
②イヤモールド買い替えの際に再度の耳型採取不要
③快適
④安全
メリット①(新人が使っても)正確
オーダーメイド補聴器やオーダーメイドの耳せんの着け心地は、出来上がった補聴器の形状で大きく変わってきます。補聴器の形状は着け心地だけでなく、聞こえ方にも影響します。
その土台になるのが耳型なのですが、これには職人の技能の巧拙がとても大きく影響しています。
既存の方法で一流の職人、補聴器業界の上位5%の上手い人たちレベルになろうとすると、適性、才能、職場環境、良い指導者など全てに恵まれていても5年はかかります。どれかが欠けていると、70点の及第点になるのに5年以上かかったり、その後は進歩しなくなるということが少なくありません。
もちろん出来上がる補聴器の着け心地は十分なものにはなりません。
オトスキャンは、数十回程度のトレーニングで、新人でも80点以上のクオリティの補聴器が作れるようになります。
※当社は全店舗にベテランの職人が常勤しております。オトスキャンと職人技の両方で、最適なオーダーメイド補聴器をお作りしています。
メリット②補聴器やイヤモールドを買い替える際、再度の耳型採取が不要
オトスキャンで一度スキャンした3Dデータは、5年間保存されており、再利用することができます。
イヤモールドやオーダーメイド補聴器の紛失や破損の際に、耳型を採り直す必要がありません。
※極端に太った場合、痩せた場合は、耳の穴の中の脂肪の付き方が変わり、耳の穴が変形することがあります。この場合は、再度の耳型採取・撮影が必要です。
メリット③耳型採取の時に快適&ちょっと面白い
既存の印象剤による耳型採取では、耳の穴に耳型の材料を入れる必要がありました。オトスキャンの場合、耳の穴に入るのは、棒状のレーザー照射&カメラだけです。この棒状のモノは、耳の穴の中に、まったく触れません。オトスキャンなら、完全に非接触で、快適に耳型を撮影できます。
また記事後半で紹介しますが、自分の耳の穴の形状が、モニターで映すことも可能です。普段、見られない自分の耳の穴の中を自分で見られるのは、面白いと言って下さるお客様もいます。
メリット④安全
既存の耳型採取では、耳の中に綿球やスポンジなどを入れて、素材が鼓膜に届かないようにしていました。オトスキャンでは、クッションや素材など入れる必要がないので、耳の中に何かが残る可能性がありません。
この他、特殊なケースですが、これまで中耳炎の手術経験者や先天性の奇形など耳の穴の形状が特殊な方は、既存の耳型採取法だと、素材が耳の中に残ってしまう危険があり、十分な深さで耳型を採取できないことがありました。結果、よく聞こえる補聴器をお作りできない可能性がありました。
オトスキャンでは、手術経験者の方などには、今まで以上に安全に耳型を撮影でき、より高品質な補聴器やイヤモールドをお作りできるようになりました。
※オトスキャンは、成人専用の測定装置です。お子様は耳の穴の入り口から鼓膜までの長さが短いため、オトスキャンによる撮影が出来かねます。
メリット⑤実際に出来上がる補聴器の着け心地の評価が高い。
2022年7月現在、日本でオトスキャンによるオーダーメイド補聴器を作成できるのは、リサウンドとオーティコン、シグニアの3社になります。それ以外の大手補聴器メーカーでは、まだ導入されていません。
当社では、オトスキャンの販売初期から全店舗に導入し、多くの制作実績があります。
既存の耳型採取が抜群に上手い職人と、オトスキャンによる3Dデータ。この二つで補聴器を作っても、出来上がる補聴器の品質に大きな違いはありませんでした。
しかし若い職人の場合は、オトスキャンを用いて補聴器を作った方がお客様の満足度が高かったのです。
当社ではオトスキャンのメリット、既存の技術の職人技の両方を活かして、お一人お一人に合わせて最適な補聴器をお作りしています。
オトスキャンのデメリット、極小サイズの補聴器ではあまり使えない。
IICと呼ばれる外からまったく見えない極小サイズの補聴器をお作りする場合、お客様の耳の穴の太さにもよりますが、オトスキャンでは制作できないことがあります。
オトスキャンによる耳型採取の流れ
オトスキャンを使って、耳の形状を撮影している様子をご紹介します。
①専用のヘッドバンドをお客様の頭に装着
②下の写真の機械をスタッフが手に持つ。
細い銀の棒の部分を耳の中に入れて、耳の中をレーザーで読み取っていき、耳型を取っていきます。
③細い銀の棒を耳の穴に挿入。
この画面は、別のパソコンモニターに映すことができます。お客様も銀の棒がどのあたりにあるかわかるので、ご安心いただけるかと思います。
青の部分はスキャンが完了した部分です。この青の面積を増やしていきます。
④スキャン完了
特に不快感などはなく、画面を見ながら楽しんでいただけるのではないかと思います。
申し訳ありませんが、撮影中に動くと、最初からやり直しになってしまうことがあります。
オトスキャンによる撮影中は動かず、じっとしていただくようお願いいたします。
※品質チェックなどのため、オトスキャンと耳型採取の両方を行う場合がございます。
⑤1~2週間後に納品
ご注文いただいた補聴器またはイヤモールドの納品はオトスキャンによる撮影から1~2週間後になります。
オトスキャンに関して、よくいただくご質問
Q:オトスキャンでオーダーメイド耳あな型補聴器を作ってもらうと値段は変わりますか?
A:値段は変わりません。補聴器を既存の方法で作ってもオトスキャンで作っても、お客様のお支払い金額は変わりません。
Q:オトスキャンで耳あな型補聴器を作ってもらいたいとき、どのメーカーでも選べますか?
A:2022年7月現在、まだオトスキャンに対応していない補聴器メーカーがあります。現在、お選びいただけるメーカーはリサウンド、オーティコン、シグニアの3社になります。
●リサウンドの耳あな型補聴器
●オーティコンの耳あな型補聴器
●シグニアの耳あな型補聴器
Q:オトスキャンでBTE用イヤモールド/RIC用カスタムモールドを作った時の値段はいくらですか?
A:メーカーによりますが、およそ片耳10,000円~12,000円の間です。
なおリサウンドのRIC用レシーバー内蔵型カスタムモールドを単品購入する場合は、21,780円(税込)となります。
Q:オトスキャンでRIC用カスタムモールドを頼むときの選べる素材とカラーを教えて下さい。
A:補聴器メーカーによって、それぞれ異なりますので、詳しくは店頭にてご相談ください。
Q:オトスキャンでBTE用イヤモールドを頼むとき、選べる素材とカラーは?
A:素材は2種類、ハードとソフトシリコンです。
●ハードのカラーはクリア。
ハードは一般的によく作られるタイプです。硬質アクリル製で耐久性が高く劣化しにくいので、長持ちします。
●ソフトシリコンのカラーはなんと20色。
シリコンゴム製でとても柔らかい素材です。そのため長時間お耳に着けていても快適です。
Q:オーダーメイドイヤホンをオトスキャンで作れますか?
A:オーダーメイドイヤホンで、オトスキャンが使えるか否かは、イヤホンメーカー様の対応によるかと思います。オーダーメイドイヤホンメーカー様へお問合せ下さい。
オトスキャンを使うと“安全に”よく聞こえるようになります。
この記事では、耳型専用の3Dスキャナー「オトスキャン」をご紹介しました。
オトスキャンは従来の耳型採取の方法とは異なり、お客様にとって今まで以上に安全な方法です。
とくに耳の手術やケガの経験のある方にとって、耳あな型を安全にお作りすることが可能になりました。
オーダーメイドの耳せんや耳あな型補聴器は、その出来上がった形状により、着け心地や聞こえ方が変わります。
当店では、お一人お一人の耳に合わせて、快適でよく聞こえる補聴器を作成するために全店に導入しています。
2006年から補聴器の仕事を始めました。もっとも確実に、よく聞こえる方法をご提供することが、私のミッションです。皆様の耳に合った補聴器をお届けするため、毎日毎日、聴覚医学の論文を読み、デンマークやドイツの研究機関と連絡を取り、時には欧州へ勉強に行き、海外から研究者を招き勉強会を開催し、国内の社会人大学院へ通い修士号まで取ってしまいました。本Webページでは、補聴器と難聴について、確かな情報や最新の情報をお届けしていきます。ご相談の方は、お気軽にご連絡ください。
保有資格:認定補聴器技能者、医療機器販売管理者
★ Twitter はじめました。耳の話を真面目に書いてます! : @mimi_otsuka