フォナック補聴器が新製品「インフィニオ スフィア」を発表。AI専用チップ搭載で、騒音下での聴覚の新境地を目指す

2024年12月4日(水)、プラネタリアTOKYOでフォナックの新製品「オーデオ インフィニオ スフィア」の発表会が開催されました。
オーデオ インフィニオ スフィアは言葉と雑音の分離を担当する専用AIチップが搭載された世界で初めての補聴器です。このチップによって従来以上の雑音抑制を実現し、これまで難しかった非常に騒がしい環境での言葉の聞き取りを強力にサポートしてくれます。

新製品の詳細と合わせて、発表会で実際に体験してきた感想をご紹介します。

オーデオスフィア インフィニオは、音声と雑音を分離する専用AIチップを搭載した世界初の補聴器

フォナックの新製品「オーデオ　インフィニオ　スフィア」は、音の増幅や雑音抑制を効果的に行うため、２種類のコンピュータチップを搭載しました。

ERAチップは、旧来の補聴器からあった機能をさらに進化させ、サウンド・クオリティの進化、スマホやテレビとの接続性の向上が図られています。

インフィニオ　スフィアから初めて搭載されるDEEPSONICチップは、AIによる言葉と雑音の分離だけに特化した専用チップです。
近年、AIとDNNを用いた補聴器はメーカー各社から登場していますが、完全にAI雑音抑制に特化した専用チップを搭載した補聴器は、インフィニオ　スフィアが世界初。
10 dBのS/N比改善という強力な効果が報告されており、騒音下での言葉の聞き取りの大幅な改善が期待できます。

オーデオ　インフィニオ　スフィアの特徴は主に下記の４つです。

〇ERAチップによるサウンドクオリティの改善
〇同じくERAチップによる接続性の向上
〇DEEPSONICチップによる言葉と雑音の強力な分離機能
〇防水性能と新しいデザイン

新製品発表会には弊社代表の大塚も参加させていただいたのですが、その後の大規模なパーティーのさわがしい環境で、インフィニオ スフィアを長時間体験させていただきました。その時の様子と合わせて、インフィニオ スフィアの特徴を紹介します。

サウンドクオリティが向上したERA™チップ

ERA™チップは周辺に人との会話があるかの判定、周辺状況を踏まえた音の増幅、従来通りの基本的な雑音抑制、スマホやテレビやパソコンとの接続など、現代の補聴器に期待されるほとんどの機能を担当するチップです。

理想の音量・音質を計算する「APD処方式」がバージョンアップして、今まで以上に快適に

補聴器はユーザー一人一人の聴力に合わせて、目標とする音の増幅量が異なります。
これを自動で計算して、音量・音質の目標を算出してくれるのが処方式です。

この処方式は、補聴器本体の機能の進歩発展にともなって少しずつバージョンアップされてきた歴史があります。処方式のバージョンアップは、補聴器の機能が劇的に改善されたときにしか実施されません。
新製品は毎年発表されますが、処方式のバージョンアップは5～10年に一度なのです。今回、インフィニオスフィアの発表と合わせて、フォナック独自のAPD処方式がバージョン３にアップデートされました。

APD処方式バージョン2.0と3.0を比較した結果が下記のグラフです。

フォナックの調査によると、多くの場面で「APD3.0が良い」と回答した人が最多となりました。
しかしAPD2.0が良いと回答した人も少なくない割合でした。

私見になりますが、補聴器を長年使っている人の場合、慣れ親しんでいる音質が変わることを嫌うケースがあります。これを考慮するとAPD処方式3.0は、総合的には改善しています。特に補聴器がはじめての方にとっては今まで以上に快適で、よく聞こえる可能性が高まっていると考えて良さそうです。

環境適応機能オートセンスOSが進化！「全方位からの言葉の明瞭性」に対応！

今回、フォナックの補聴器に搭載されている自動環境適応システム「オートセンスOS」がバージョン6.0にアップデートされました。

オートセンスOSは周辺環境を自動で判定し、その環境に合った音質に自動かつ滑らかに切り替わり、ユーザーが置かれた環境に補聴器が自動適応する機能です。

この自動環境適応というシステムは、昔からフォナックの補聴器が得意としており、長年にわたって磨きをかけてきた機能です。

今回のアップデートでは、はじめて「全方位からのことばの明瞭性（の向上）」に対応できるようになりました。「全方位からの言葉」というのがポイントです。

旧来の補聴器は、周りがうるさい場所では前方向に限定して音を拾うようにすることで、騒がしいところでの会話の聞き取りを助けていました。しかし、これでは横や斜め後ろといった顔を向けていない方向から急に話し掛けられると、聞き取りづらいことがありました。

「全方位からのことばの明瞭性（の向上）」では、真後ろをのぞいた左右200度ほどの範囲の言葉を聞き取れるよう、自動で雑音と言葉が分離されるようになりました。

たくさんの人で賑わう懇親会やパーティー、居酒屋やレストランでの会合などでの会話を強力にサポートしてくれます。
※スタッフ体験談はこちら

ERAチップによる接続性の向上

従来から６大メーカーの中でもトップレベルの接続性を有していたフォナックの補聴器ですが、スフィア インフィニオからBluetooth通信の使い勝手がさらに向上しました。
特許を取得した専用のアンテナを搭載しており、従来よりも広範囲かつ安定した接続を可能にしています。さらに、ERAチップはBluetooth LE AudioやBluetooth5.3に対応。今後の更新でAuracasにも対応予定となっています。

・Auracast™
Bluetooth LE Audio技術をもとにした音声共有機能。1つの音声を同時に複数人で聞くことができる。
・Bluetooth LE
Bluetooth Classicよりも省電力・高音質・マルチストリーミングが可能な通信方式。
・Bluetooth Classic
オーディオストリーミングのためのBluetooth通信方式。
・HFP
ハンズフリー通話のためのBluetooth通信方式。
・A2DP
より高品質なオーディオデータ（ステレオ音声）を送受信するための通信方式。
・ロジャー
フォナック独自のワイヤレスアクセサリー。補聴器や人工内耳に直接音を届けることができる。
・両耳間通信技術
左右の補聴器で双方向に通信を行う。
・AirStream™
テレビコネクタ―Dやリモートマイクとの通信を可能にする独自の通信規格。

世界初！AI / DNN雑音抑制専用チップDEEPSONIC

インフィニオスフィアが、これまでの補聴器と一線を画す最大の特徴が「DEEPSONICチップ」です。

これまでの補聴器でも、雑音抑制機能は搭載されていましたが、一つのチップが音の増幅、周辺機器との通信、雑音抑制など、複数の役割を兼任していました。

DEEPSONICチップは世界で初めてAI雑音抑制機能によって「ことば」と「雑音」の分離という一つの役割だけに特化した専用チップです。雑音環境での会話理解を強力に補助してくれます。

DEEPSONICチップとAI／DNN雑音抑制の効果を体験してきました！

インフィニオ スフィアを実際に100人規模のとってもうるさい環境で、30分試させてもらいました！

代表の大塚（写真右）がスフィアを試しています。

うるささの中、フォナック社の鈴木さん（写真左）の声だけ浮き上がって聞こえて驚く様子。

インフィニオスフィアの発表会の後は、非常に騒がしいカフェ（会場：京都石塀小路豆ちゃ 有楽町様）にて、参加者100人が集まるパーティーが開催されました。
非常にうるさい環境で、背景に雑音と音楽が流れていて、耳のいい人同士でも距離１ｍの会話が難しかったです。

そんな環境のなかで、軽度難聴用に調整したデモ器を30分ほど着けっぱなしにさせてもらいました。

わざと聞き取りにくいように顔を背けたり、少し離れて会話もしたのですが、聞き取りたい声が全部聞き取れました。この時、インフィニオスフィアを着けていなかった友人は、私の言葉の一部は聞き取れていない様子でした。

これは、あくまで難聴ではない人同士の会話、しかもたった30分の試聴です。
とはいえ、これまでのフォナックの補聴器からは考えられない大きな進歩を感じた体験でした。

あくまで個人の感想にはなりますが、これはアクティブにお出かけされる方なら1度試してみる価値があると思います。

内蔵のAIが活躍して雑音と言葉を瞬時に分離することで、騒音下のきこえを改善するそうです。

内蔵のAIが活躍して雑音と言葉を瞬時に分離することで、騒音下のきこえを改善するそうです。

会場で展示されていたインフィニオ スフィア

インフィニオ スフィアと旧フォナック製品の効果の比較

DEEPSONICチップによる雑音抑制の効果については、具体的な数値まで公開・PRされています。

数値が大きいほど、雑音が抑えられ会話が聞き取りやすいことを表す。Stefan Raufer,Frédérick Uhlemayr,Michael Preuss,Shin-Shin Hob,Volker Kuehnel,Philipp Kohlhauer/Spheric Speech Clarity proven to outperform key competitors for clear speech in noise を参考に当社作成。

真正面から話しかけられた状況で、補聴器から出力された言葉と雑音の大きさの間にうまれた差（SNR）を表したものです。カフェ、ディナーパーティー、フードコートという特に聞き取りが難しいシーンに基づいており、グラフに示されているのは3シーンの結果が平均された数値となっています。
このSNRは大きければ大きいほど、雑音よりも言葉が大きく聞こえることを表しています。
10dBというのは、ファミレスなど、そこそこざわついた環境でも、相手の話が聞き取れるレベルです。
旧製品では到達できなかった10dBという大きな数値が達成できたのはAI雑音抑制のおかげです。

AIとDNN学習と補聴器

インフィニオ スフィア以前にも補聴器の雑音抑制処理にはAIが活用されていました。
AIとは人間が行っている知的な作業をコンピュータで実現・模倣する技術の総称です。
AIにはいくつか種類があり、機械の制御を行うような事前に使用者が設定したルールに従って動作するAIと、複雑な処理を行うために多くのデータから学習するタイプのAIなどがあります。
学習型のAIは初めから賢いわけではなく、私たちが義務教育を経て賢くなるのと同様に、与えられた情報を正確に理解できるように訓練する必要があります。
そのための学習方法の１つがDNN（ディープニューラルネットワーク）学習です。
DNNとは脳内の神経細胞（ニューロン）の働きを模した「ニューラルネットワーク」という仕組みをいくつかの階層に分けて多層的に行うモデルのことです。
この階層が複雑であればあるほど、入力された情報から複雑な情報を抜き出すことができるようになります。
これが補聴器に活用されることで、補聴器のマイクロフォンに入力された音の情報から必要な声だけを抜き出し、雑音を極力抑えられるような雑音抑制機能が可能になります。

しかし、AI／DNNによる高度な雑音抑制には、高度な演算処理が必要です。研究室の中では以前から実現できていたようですが、補聴器はパソコンはもちろんスマホより小さな製品です。
旧来のチップと小さな補聴器本体では、AI／DNNによる高度な雑音抑制をパワーを実現することが出来ませんでした。

世界初のAI雑音抑制専用チップDEEPSONIC

これが実現できているのは、DEEPSONICチップがリアルタイム雑音抑制に特化したパワフルなチップだからです。
DEEPSONICチップは１秒間に77億回の演算処理を行います。これはメインチップであるERAチップの１５倍以上です。高速処理に必要なメモリやトランジスタも十分に積まれているため、リアルタイムでAI処理を行うことが可能です。
AI処理の性能にかかわるニューラルコネクションの数は450万個であり、従来の補聴器よりも正確かつ的確な動作が期待できます。

従来の補聴器を越えた防水機能

オーデオ インフィニオ スフィアは突然の雨や、プールはもちろんのこと、夏場によく汗をかく方でも安心してお使いいただけます。
防水機能である「ウォーターブロック」が標準装備されました。補聴器の外側だけでなく、内部部品にもコーティングを行い、電池部分も完全密閉にするなど、徹底的に水分の侵入を防ぐ徹底的な対策が行われています。

インフィニオスフィアのデザインと形状

左からサンドベージュ、シャンパン、シルバーグレー、グラファイトグレー

オーデオ インフィニオ スフィアは従来よりも一回り大きくなり、より安定感のあるサイズになりました。
そして付属の充電ケースは、補聴器本体を２回フル充電が可能なバッテリーを搭載。１泊２日のご旅行であれば、充電用のコードを持ち運ばずともお使いいただけます。

インフィニオ スフィアのグレードと価格

インフィニオスフィアは上位2クラスのみの販売です。

（極少数ですが）インフィニオ スフィアの試聴器を用意できる予定です

オーデオ インフィニオ スフィアは2025年1月15日販売開始です。

当店では購入前に試聴をおすすめしていますが、オーデオ インフィニオ スフィアを先行発売している米国を中心に、世界的な人気で生産が追いついていないそうです。

当店でも試聴器を用意する予定ですが、通常の新製品以上に、数が少なくなりそうです。

インフィニオ スフィアの試聴・体験・お貸出しについては当面の間はご予約の方から順番に１～２週間程度の試聴期間となります（他の器種は通常通り最長３カ月の無料試聴ができます）。

試聴器の数に限りがあり申し訳ありませんが、インフィニオスフィアはぜひ1度試聴してみる価値がある画期的なモデルです。

試聴のお申し込みは、下記のご予約ページから「インフィニオ試聴希望」の旨を一言ご記載いただきご予約ください。

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