高齢者が補聴器をいやがる/つけたがらない理由は、本人に困っている自覚が無いから!?
難聴の高齢者が補聴器をいやがる理由はいくつかあります。最大の理由は、日々の生活の中で、難聴によるコミュニケーションの困難さを感じる場面が少ないことです。
そもそも毎日の会話が少なければ、不便さを感じる機会も少なく、補聴器を使うメリットが想像しづらくなります。
難聴によって困る場面が多い人ほど、補聴器をすぐ使います
加齢とともに進行する難聴は、視力の衰えなどとは異なり、自覚しにくいものです。話しかけられたことに気づかなければ、本人に困っている自覚が生まれません。難聴は、本人より先に、家族や友人が難聴に気づくことも多いのです。
本人が難聴を自覚するには、会話が聞き取れないなどの具体的な困る経験が必要です。
日々の生活の中で、人と会って会話することが多ければ、難聴による困難さを感じる機会も多くなり、おのずと積極的に補聴器を使おうと考えます。
この逆に、人と会ったり、会話する場面が少なければ、難聴による困難さに気づきにくくなります。本人に困っている自覚が無ければ、もちろん補聴器を使おうとは考えません。
難聴の高齢者が困難さを実感する場面について、ご紹介します。こういった場面が、どれくらいあるでしょうか?
日々の生活で難聴だと困る場面(よくある状況)
難聴になった本人が困りごとを自覚するのは、人と会って会話する場面です。様々な人と関わる機会が多くなると、会話の機会が増え、初めて不便さを自覚し始めます。個人差はありますが、難聴のご本人が困りごとを感じることが多い場面をご紹介します。
・家庭内で家族に話しかけられて、最初の一言が分からない。
普段の生活の中で、家族との会話がある方は、難聴を自覚しやすくなります。
・スーパーやコンビニで、レジの人の声がハッキリしない。
自分で、スーパーまで買い物に行く方の場合は、難聴の困難さに気づきます。
・習い事の教室で先生の声が聞き取れない。
自分は聞こえないのに、周りの方が聞こえている状況で、難聴に気づきます。
・ゴルフのプレー中に言っていることが分からない。
屋外では、風の音や雑音が多くなることで難聴の困難さを実感します。
・レストランで相手の話が分からず、笑ってごまかしてしまう。
周囲の音が多いと、聞きたい言葉がかき消されて、肝心の会話の内容がわからない。
・病院での待合室で、自分の名前を呼ばれていないか心配になる
付き添いなしで病院へ行く方は、難聴の自覚が早いです。
・診察室の中で、医師がマスクを付けていると聞こえづらい。
定期的に通院している方が、医師の話を聞くための補聴器を求めるケースは多いです。
・テレビの音量について、家族から(時には近所の方からも)大きすぎると注意される。
大きな音量でテレビを見ていても、注意する方がいなければ、難聴の自覚は遅れます。
時々しかないけど、とても重要で困る場面
日々の生活では難聴を自覚していない高齢者でも、ある特別な場面では、困りごとを強く感じることがあります。
それは高齢者自身が、大事だと思っている場面です。大事な場面は、同窓会、趣味の集まり、自治会の会合、お金に関する話し合いなど、人によって様々です。
ご本人が大事だと思っている場面で会話ができないと、初めて「聞こえなくて困った!」と困りごとを自覚しはじめます。
時には、ご本人の難聴に対する意識が一気に変わる場合があります。
「難聴のままでは困る!」と自覚するきっかけになる特別で重要な場面をご紹介します。
・難聴のために交通事故にあいそうになる経験。
視界の外からの車や自転車の接近に気づけず、ぶつかりそうになってヒヤッとする。いわゆる気配というのは、音です。難聴になると、自転車の接近に気づかないことは増えます。
・親戚の結婚式のスピーチが聞き取れなかった。
お孫さんの結婚式のスピーチで、祖父母宛の話があるなら、それはとても重要度が高い場面です。
・同窓会に出席したら、友人に難聴を指摘された。
同年代の方と自分を比べて、自分の方が劣っていると感じたら、それは本人にとって重要な問題になっている場合があります。
・夫婦のどちらかが入院して、看病し、医師の話を自分が聞かなければ!
パートナーのどちらかが健康を崩したら、夫婦どちらか健康な方が医師の説明をしっかり理解する必要があります。
・クレジットカードの本人確認の電話の際、受け答えが出来ずクレジットカードを止められてしまった。
こういった重要な電話は、家族に代わってもらえません。かならず本人が聞き取って、返事をしなければいけません。
・自治会の会合で、いい加減にあいづちを打って返事をごまかしていたら、役員になってしまった。
話が分かっていないときに、あいまいな返事をすると、大変な事態になってしまうこともあります。
補聴器をいやがる高齢者に、補聴器を使う気持ちになってもらうには?
難聴による困難さ、不便さを実感するには、周りの人ではなく、難聴の本人が”これは困った!”と自分で感じる体験が必要です。ご本人に困っている自覚があれば、おのずと補聴器を使う気持ちになってきます。
”これは困った!”と感じるきっかけは、まず日々の生活の中で人と会う機会が多く、たくさん会話をすることです。会話の機会が増えれば、難聴による困難さを感じる機会が多くなります。
また日々の生活の中で、会話が少なくても、”ご本人が大事にしている特別な場面”で、よく聞こえないと「難聴のままでは困る!」と、困難さを自覚するきっかけになります。
ご家族やお知り合いに、難聴なのに補聴器をいやがる高齢者を見つけたら
1)まず話しかける。会話する機会を増やす。
2)人と会って、おしゃべりする機会を増やす(親戚の集まりに誘うなど)
3)周りに迷惑なほどの大きな声で話しかけるなど、過剰な親切を控える。
などを心がけてもらうと、良いかも知れません。
また、ご本人が大切にしている場面を見つけたら、その予定の前後に、補聴器を提案してもらうのも良いでしょう。
難聴の高齢者に身近な方へ
高齢者が難聴になると、ご本人より先に、家族や身近な方が先に気づくことがあります。それによって最初に困るのは、ご本人以上に親しい身近な方々です。
ご本人、ご家族、ご友人、皆さん一緒に難聴と補聴器について考えていただくと、良い解決に向かうと思います。
2006年から補聴器の仕事を始めました。もっとも確実に、よく聞こえる方法をご提供することが、私のミッションです。皆様の耳に合った補聴器をお届けするため、毎日毎日、聴覚医学の論文を読み、デンマークやドイツの研究機関と連絡を取り、時には欧州へ勉強に行き、海外から研究者を招き勉強会を開催し、国内の社会人大学院へ通い修士号まで取ってしまいました。本Webページでは、補聴器と難聴について、確かな情報や最新の情報をお届けしていきます。ご相談の方は、お気軽にご連絡ください。
保有資格:認定補聴器技能者、医療機器販売管理者
★ Twitter はじめました。耳の話を真面目に書いてます! : @mimi_otsuka