【Q&A】難聴の母が補聴器を拒否!どうしたら使ってくれるの?
Q .娘さんからのご相談
5年ほど前から母は難聴気味でした。最近さらに悪化して、耳鼻科の先生からも「補聴器をつけるしかないね」と言われました。 以前から私も補聴器を勧めていたのですが、補聴器の話題になると「聞こえているからいいわ」とまったく聞き入れてくれません。何度も言うと本人のストレスになりそうなので、最近は補聴器の話題を出さないようにしてました。 しかし、会話していても聞き違いが増えているなど、どんどん悪くなっているようにみえます。
娘の私としては、メガネと同じで必要なんだから補聴器を使ってくれればと思うのですが、本人は恥ずかしいのか話題にしても嫌な顔をするだけです。
どうしたら補聴器を使ってくれるでしょうか?
A .お母様の気持ちを考えて、心理的ハードルを下げよう!
お母様の難聴、心配ですね。質問者様のように「親に補聴器を使って欲しい」と考える方はたくさんいらっしゃいます。
しかし、家族に難聴を指摘されて、すぐ素直に聞き入れて補聴器を使ってくれるケースは多くありません。
高齢になり難聴を自覚しても、難聴は治るのではないか?一時的な症状ではないか?などと考え、自分の難聴を受け容れられない方が多いです。難聴を受け容れられるまで、平均的に4年ほどの時間がかかります。※1
その上で、家族だけでなく医師が補聴器を勧めると使ってくれるケースが多いです。
質問者様の場合、年数と医師の勧めという二つはすでにクリアされています。それでも補聴器を嫌がる理由、そして補聴器を使ってもらう方法をお答えします。
ご本人が補聴器を嫌がる理由を正しく知って、それを解消すれば補聴器を使ってくれるようになるのではないでしょうか。
※1 日本補聴器工業会作成『Japantrak2018』より
http://www.hochouki.com/files/JAPAN_Trak_2018_report.pdf
補聴器を拒否する理由を教えてもらうのは難しい
補聴器を嫌がる理由は、いくつかあります。お母様が補聴器を一度も試していないということであれば、すべて心の中にあるイメージになりますが、よくある例は下記のものです。
・(未だに)自分自身は難聴だと(本当に)思っていない。
・(実は)難聴を認め自覚しているものの、大した問題と思っていない。
・補聴器は値段が高くて買えない。
・自分のために大きな金額の買い物をすることが申し訳ない。
・耳のために、大きな金額を使うことが勿体ない(難聴を軽く考えている。たとえば旅行や入れ歯の方が大事など)。
・補聴器をつけると難聴であることが周り人に分かってしまうのがイヤで拒否。
・(補聴器に限らず)新しい機械が、そもそもイヤで拒否。操作が大変そう
・(難聴に限らず老化に悪いイメージを強く持っており)補聴器を使っても若い時と同じように聞こえないなら意味がないと思っている。
・(友人に聞いて)補聴器をつけても役に立たないと思っている
・(友人に聞いて)補聴器は雑音がうるさいと思っている
・(友人に聞いて)補聴器は耳の検査を受けたり、何度も調整しなきゃいけないなら、めんどくさいと思っている
具体的な理由を列挙しましたが、補聴器について知識が少ないお母様が自分で「補聴器を拒否する理由」を言葉にすることは難しいと思います。さらに難しいのは本人が強く補聴器を嫌がり拒否している場合、そのご本人さえ補聴器を拒否する理由に無自覚で「何となく、でも、とてもイヤ」としか表現できないことがあります。
補聴器の場合、メガネと同じというわけにはいかず、高齢者の気持ちは意外と複雑になっています。
質問者様の場合、補聴器の話題を出すことが嫌がられているとのことですから、家族が直接聞き出そうとしてもなかなかうまくいかないと思います。お母様にとっては「娘には弱いところは見せられない」なんて考えもあるかもしれません。
しかし難聴で少しでも困っている方なら、ご本人の補聴器を嫌がる理由を解消すれば、必ず補聴器を使ってくれます。嫌がる理由の確認と問題の解消は、どちらも補聴器の専門家である言語聴覚士や認定補聴器技能者の役割です。
質問者様の気持ちとしては「そろそろ補聴器を使ってもらいたい」という考えがあるかと思いますが、グーっとハードルを下げていただいて「補聴器の専門家に相談だけする」という所までを一歩目の目標にしていただくのが良いかと思います。
ご相談のなかで「家族には話さなかった補聴器を嫌がる理由」が初めて言えるなんてことも、たくさんあります。
もしお母様がお店に行くことを嫌がる場合には、事前にお電話もしくはご家族のみでご来店いただくこともおすすめです。
※本記事はプロショップ大塚代表のTwitter質問箱へいただいた匿名質問にお答えしたものです。当時の情報のため、現在とは状況が異なる場合があります。
コミュニケーションにお困りの方に寄り添える仕事を目指し、2012年に言語聴覚士免許取得。8年間の病院勤務にて聴覚障害の領域などを担当。難聴の方の聞こえを改善するため、補聴器を専門にして働きたいと考え、2020年プロショップ大塚に入社。耳鼻咽喉科での勤務経験を活かし、さまざまな情報や知識を分かりやすくお届けすることを心がけています。
保有資格:言語聴覚士
【監修】
補聴器専門店プロショップ大塚を運営する株式会社大塚の代表取締役。認定補聴器技能者、医療機器販売管理者。
たくさんの難聴の方々に、もっとも確実によく聞こえる方法をご提供することが私たちのミッションです。
監修においては、学術論文もしくは補聴器メーカーのホワイトペーパーなどを元にしたエビデンスのある情報発信を心がけています。
なお古いページについては執筆当時の聴覚医学や補聴工学を参考に記載しております。科学の進歩によって、現在は当てはまらない情報になっている可能性があります。
※耳の病気・ケガ・治療、言語獲得期の小児難聴や人工内耳については、まず医療機関へご相談下さい。