補聴器は消費税がかからない非課税品!修理も非課税!でも時々課税?
消費税の増税が話題になりますが、補聴器は昔から非課税です。販売店が値段を下げて販売しているわけではなく、日本全国一律、どこで購入しても消費税はかかりません。しかし補聴器を修理するときの部品の一部や、補聴器用の電池は消費税がかかります。
補聴器の購入に消費税がかからない理由は”医療機器だから”ではない。
補聴器と消費税についてインターネットで検索すると、いくつかのWebページが見つかります。
参考: ワイデックス株式会社「補聴器には消費税がかからないと聞きましたが、本当ですか?」
補聴器の購入に、消費税がかからないことは事実なのですが、その理由として”医療機器だから”と書かれています。実は、補聴器に消費税がかからない理由は、医療機器とは関係ありません。
たとえばメガネやコンタクトレンズは、法律で医療機器に分類されています。でもメガネやコンタクトレンズを買うときには、消費税がかかっています。
補聴器を購入しても消費税がかからないのは、どんな理由なのでしょうか。
行政のお話になるのですが、消費税は財務省の管轄になります。医療機器は厚生労働省の管轄になっています。
補聴器と消費税の関係について調べてみると、厚生労働省のサイトから下記の資料が見つかります。
参考:厚生労働省「○消費税法の一部を改正する法律(平成3年法律第73号)の施行に伴う身体障害者用物品の非課税扱いについて」
この文書をよく読むと「一定の身体障害者用物品が非課税とされることになった」と書かれています。
つまり補聴器に消費税がかからない理由は、医療機器だからではなく「一定の身体障害者用物品」に認められているためです。
『世界の先進国では非課税どころか、補聴器購入費用は補助されるのが一般的』
日本を除く、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ドイツ、スイス、デンマークなど、多くの先進国では、補聴器を購入するときに行政が、費用の一部を助成するのが一般的です。
勝手な想像ですが、こういった他国の現実を知っている厚生労働省としては、がんばって財務省との交渉に臨んだのではないかなと思います。
消費税の非課税を決めるのは、厚生労働大臣と財務大臣の協議
消費税の非課税は、いったい誰が、どんな根拠で決めるのでしょうか?
先ほどと同じ文書の中に「(非課税になる物品は)身体障害者の使用に供するための特殊な性状、構造又は機能を有する物品であって、厚生労働大臣が財務大臣と協議して指定したもの」とあります。
非課税を決めるのは、厚生労働大臣と財務大臣の協議ということになります。
基本的に補聴器の購入と修理は非課税、電池やオプション品は課税
補聴器本体を購入するときの消費税は、日本一律で非課税と決まっています。これは消費税の税率が上がっても関係なく、非課税です。
購入済みの補聴器が故障したときの修理代は、基本的には非課税です。しかし一部の部品については、消費税がかかるものもあります。
補聴器本体ではなく補聴器と組み合わせて使う機器は、多くの場合、消費税がかかります。たとえば補聴器用のリモコンや、補聴器の電池などです。しかし一部の物品には消費税がかかりません。
消費税の課税・非課税が微妙な物品
近年、補聴器が障害者と認められないような軽い難聴者に使われることが増えてきました。また充電式補聴器の充電池と充電器など、消費税の課税か非課税の判断が難しい商品も増えてきました。
ここでは2019年8月時点のプロショップ大塚が把握している範囲で、補聴器に関連する物品のうち、課税になるものと非課税になるものをご紹介します。
補聴器用の別売りリモコンは課税品
最近の補聴器は、別売りでリモコンが使えます。このリモコンを使うと、ご自分で音量・音質などをいくらか変更することが出来ます。
耳かけ型補聴器の部品「フック」は課税品
フックは、耳かけ型補聴器の本体と耳せんをつなぐ部品です。これは、おそらく補聴器にしか使われない部品だと思うのですが、なぜか消費税がかかります。
補聴器を新品で購入するときは、フックが本体に含まれているため非課税です。
購入後に、このフックが破損したときの交換や、耳が特別に小さい方のために小さいサイズのフックへ交換する際には、消費税が課税されます。
RIC補聴器の部品「レシーバー」は課税品
小型の耳かけ型補聴器は、RIC型と呼ばれています。このタイプの補聴器のレシーバーは、補聴器本体と分離できる構造になっています。
補聴器を新品で購入するときは、レシーバが本体に含まれているため非課税です。
購入後にレシーバーが破損したときの交換や、難聴が進行してより大きな音を出すために、レシーバーをパワーアップさせる交換の際には、消費税が課税されます。
耳かけ型補聴器の部品「耳せん」、既製品の耳せんは課税、オーダーメイド耳せんは複雑!
耳せんは、既製のゴム耳せんは課税対象です。しかし耳の型を採って作成するオーダーメイドの耳せんは課税の場合と非課税の場合があります。
既製品の耳せんは消費税がかかる
耳かけ型補聴器に使う既製品のゴム製耳せんは、常に消費税がかかります。
オーダーメイド耳せんのうち、常に非課税のもの
標準サイズの耳かけ型補聴器に使うオーダーメイド耳せんは、常に消費税がかかりません。
オーダーメイド耳せんのうち、買い方によって消費税が変わるもの
RIC補聴器のオーダーメイド耳せんは、2種類に分かれます。
先に紹介したレシーバーと耳せんが一体型になっているタイプと、分離できるタイプです。
RIC補聴器に使うレシーバ分離型オーダーメイド耳せんは、常に非課税です
RIC補聴器に使うレシーバ一体型オーダーメイド耳せんは、一番複雑!
レシーバー一体型オーダーメイド耳せんは、補聴器と同時に購入した時だけ非課税です。単体で購入すると消費税がかかります。
お客様の実際の買い方としては、最初にRIC補聴器を購入したときには既製のゴム耳せんを使っていた方が、数年経過した後にレシーバー一体型のオーダーメイド耳せんを購入した場合に課税対象になるということです。
※ただしレシーバ一体型オーダーメイド耳せんの修理代は、常に非課税です。
補聴器用の空気電池は、課税品
補聴器は空気電池を使用します。この電池は、課税品です。
充電式補聴器の充電器は、課税品
充電式補聴器には必須な充電器は課税品です。
充電式補聴器の充電池(リチウムイオン電池)は、非課税
補聴器を保管する乾燥ケースは、課税品
ろう学校などで先生が使うマイクの送信機(FMシステム機器)と、補聴器側の受信器は非課税品
FMシステムは、ろう学校などで使われる先生用のマイクと、生徒用の受信器などの総称です。FM電波(169MHz帯)を使って、話し手の声を、聞き手に直接届けることで、離れた人の声をよりよく聞くことができます。
ろう学校の教室、大学の講義、一部の会社の会議室などで使われています。
マイクなどのFM送信機、補聴器と組み合わせて使う受信機側のオプション部品は非課税品です。
一般向けのマイクの送信機と、補聴器側の受信器は課税品
先に紹介したFMシステムと、よく似ていますが、消費税がかかる機器もあります。
通信の際にFM電波(169MHz帯アナログ方式)ではなく、他の周波数を使うデジタル通信機器です。たとえばフォナック社のロジャーシリーズ(2.4GHz帯デジタル無線方式)は、厚生労働省が補装具として認可していないため課税品です。
クロス・ユニットは課税品
クロス・ユニットは、左右の耳の聴力が極端に違う人が使う道具です。軽い難聴の耳(仮に左耳とします)には、補聴器を使いますが、重い難聴の耳(仮に右耳とする)には補聴器ではなく、クロス・ユニットと呼ばれるマイクだけを装着します。
クロス・ユニットを使うと、特に聞こえにく重い難聴の方向(右側)から声を掛けられたとき、よく聞こえる方(左側)から、相手の声がクリアに聞くことが出来ます。
音の方向は分かるようになりませんが、言葉の聞き取りを助けてくれます。
このクロス・ユニットは、課税品です。
耳かけ型補聴器のカラー交換は非課税
耳かけ型補聴器を購入する際に、カラーが選べます。購入後、気分転換に補聴器のカラーだけを交換することも可能です。カラー交換は、非課税です。
耳あな型補聴器を買った後、自分の名前を刻印すると課税。購入したときに同時に依頼すれば非課税もしくは無料サービス
オーダーメイドの耳あな型補聴器は、購入する時なら無料で名前を刻印してくれるサービスがあります。しかし、この刻印を購入した後に依頼すると、有料になり、消費税もかかります。
充電器やリモコンの修理は課税
充電器やリモコンなど、購入の際に課税対象のものは、修理の際も課税品です。充電式補聴器でも、補聴器に内蔵型の充電池は修理で交換してくれます。よって、非課税です。しかし、ハイブリッド型の取り外せる充電池は課税品です。
最後に:消費税は変わる可能性があります
本記事は、補聴器メーカー各社のカタログおよび修理関連資料を参考に作成いたしました。消費税はいわゆる国税であり、補聴器および関連機器の課税・非課税を決めるのは厚生労働大臣と財務大臣の協議です。
本記事の執筆時点では、可能な限り情報の正確さに気を付けましたが、本記事の内容が今後も継続的に正しいことは保証できません。
また万一、文中に間違いを見つけられた方がいらっしゃいましたら、ぜひご一報下さい。確認し、修正いたします。
【監修】
補聴器専門店プロショップ大塚を運営する株式会社大塚の代表取締役。認定補聴器技能者、医療機器販売管理者。
たくさんの難聴の方々に、もっとも確実によく聞こえる方法をご提供することが私たちのミッションです。
監修においては、学術論文もしくは補聴器メーカーのホワイトペーパーなどを元にしたエビデンスのある情報発信を心がけています。
なお古いページについては執筆当時の聴覚医学や補聴工学を参考に記載しております。科学の進歩によって、現在は当てはまらない情報になっている可能性があります。
※耳の病気・ケガ・治療、言語獲得期の小児難聴や人工内耳については、まず医療機関へご相談下さい。