Edge AIシリーズ:静かさと会話を両立する補聴器の新基準
ただ「音を大きくする」補聴器では、もう足りない
補聴器を使っていても「聞こえているはずなのに、言葉が頭に入ってこない」と感じることがあります。
これは多くの方が直面している、いわゆる“聞こえるけれど理解できない”問題です。静かな部屋では問題ないのに、駅の構内やにぎやかなレストランに行くと、会話が雑音にかき消されてしまう。誰かと話していても、内容がつかめずにうなずくばかり……。
このような課題は、従来の補聴器が「音を大きくする」ことには長けていても、「どの音を大きくすべきか」の判断には対応しきれていなかったことに起因します。
Edge AIシリーズは、この問題に新しいアプローチを採用しています。AIが常に耳元で働き続け、「聞きたい音」と「聞かなくてよい音」を判断し、あなたの会話をサポートします。
ノイズリダクションの課題|従来技術の限界
従来のデジタル補聴器にもノイズリダクション(MNR: modulation-based noise reduction)機能は搭載されていました。この技術は、音声と雑音を、音の波形の微調整で分ける手法です。
実際には「人の声があるときにはあまり雑音を下げず、声がないときだけ雑音を抑える」という保守的な仕組みで(改善されつつも)長年採用されてきました。
なぜならノイズリダクションが強すぎると、必要な音声までも削ってしまい、人工的で不自然な聞こえ方になるからです。
その結果、エアコンの送風音や冷蔵庫のモーター音といった“定常的な雑音”にはある程度対応できたものの、食器がぶつかる音、笑い声、話し声、足音などといった“非定常雑音”の抑制には限界がありました。
現実には、私たちが生活する空間にはこうした“非定常雑音”があふれています。結果として、大事な声が背景に埋もれ、雑音が残る。これは多くの補聴器ユーザーにとって日常的な不満でした。

従来補聴器の雑音抑制の得意・不得意。定常雑音の抑制は出来ていたが、非定常雑音の抑制と会話の明瞭さの両立が難しかった。

従来補聴器の雑音抑制の得意・不得意。定常雑音の抑制は出来ていたが、非定常雑音の抑制と会話の明瞭さの両立が難しかった。
Edge AIの最大の特徴|“常時AI処理”という新しい補聴器のかたち
Edge AIが他の補聴器と決定的に異なる最大の特徴は「AIが常に動いている」という点にあります。
補聴器の世界では長らく「状況に応じてAIを“一時的に”働かせる」という考え方が主流でした。たとえば特定のボタンを押したときや、特定の場面に応じて補聴器が自動的にモードを切り替えるといった操作です。
これに対してEdge AIは“AIが常時動作する”ように進化しました。
音を拾い始めた瞬間から、補聴器内部に組み込まれたAI(DNN:ディープニューラルネットワーク)が24時間体制で音を分析し続けているのです。
この常時駆動型AIによって、補聴器は一瞬一瞬の音環境を判断し、「これは会話だから残す」「これは雑音だから抑える」といった処理を、すべてリアルタイムで実行します。
しかもこの処理はユーザーが意識することなく、完全に自動で行われます。ボタン操作も、スマホでの調整も必要ありません。
「常時駆動型AI」が聞こえ方の点で技術的に優れているのはもちろんですが、ユーザーにとって無意識に聞こえが改善するという意味で、生活に自然に溶け込む補聴器になったとも言えるでしょう。
DNNとは何か?|補聴器に搭載された“AIの脳”
Edge AIの常時AI処理を支えている中核技術──それがDNN(ディープニューラルネットワーク)です。
DNNとは、人間の脳の神経回路(ニューロン)の構造を模倣して作られた人工知能の一種で、音・画像・言語といった複雑なパターンを識別するのに優れています。Edge AIは、このDNNを補聴器に初めて常時搭載するという画期的な技術を実現しました。
補聴器の中でDNNは何に役立っているのか?
それは「聞こえてきた音が、会話なのか雑音なのかを瞬時に判断する」ことです。
たとえばカフェでのシーンを想像してください。目の前の友人の声、背後のBGM、コーヒーカップが置かれる音、店員の呼びかけ──これらすべてがあなたの耳に届きます。
従来の補聴器は、これらの音の判断があまり得意ではありませんでした。そうすると声が騒音に埋もれてしまうのです。
DNNは、こうした複雑な音の流れをリアルタイムに処理し、「この音は会話である可能性が高い」「これは一時的な雑音だ」といった判断を行います。そして会話音だけを残し、それ以外を抑えるよう補聴器を制御するのです。
しかもこの判断は、ただ瞬間的な音の形だけを見ているのではありません。DNNは、音の“前後関係”や“時間的な変化”まで含めて総合的に処理するため、まるで人間のように「文脈から音を理解する」ことができます。
このDNN処理は、Edge AIが“自然で疲れにくい聞こえ”を提供することに大いに役立っているのです。

DNNの概念図(従来処理との比較)

DNNの概念図(従来処理との比較)
技術の中核|G2 Neuroプロセッサー
Edge AIの「常時AI処理」を実現させたのが、専用プロセッサー「G2 Neuro」です。
このG2 Neuroは、DNNのような高度なAIモデルを高速に実行するために設計された、ニューラル・プロセッシング・ユニット(NPU)です。
人間の脳の構造を参考に作られており、前モデルにあたるプロセッサーと比較すると、G2 Neuroの処理能力は飛躍的に向上しています:
- AI演算速度は約2倍以上に向上
- メモリ容量は約6倍へと拡張
G2 Neuroの性能のおかげで、常時駆動AIのDNN雑音抑制が実現されています。
さらにこの高性能プロセッサーは、補聴器のバッテリー持続時間にもつながっています。日常生活で長時間安心して使えることは補聴器にとって不可欠な条件です。
補聴器のデザインによってバッテリー持続時間は異なりますが、最短の充電式でも41時間以上になっています。性能をアップさせながらも従来モデルと同等、あるいはそれ以上の電池寿命を実現しています。

進化したG2 Neuroプロセッサー(イメージ)
どれだけ静かになる?どれだけ楽に聞ける?──データで見る効果
Edge AIが本当に「快適な聞こえ」を提供しているか、これにはスターキー社が公開している科学的な検証による裏付けがあります※。
まず物理的な効果から見てみましょう。
スターキー社が行った実験では、定常雑音と非定常雑音が混ざった騒音環境下(例:自動車の中のロードノイズ+道の段差を乗り越える音、キッチンの換気音+食器の音)において、Edge AIのノイズリダクション機能は最大3.5dBAのSNR(信号対雑音比)改善を実現しました。これは単なる“音量”の違いではなく、必要な音(=会話)をしっかり引き出しながら、不要な音を的確に抑える力が証明されたということです。

定常雑音と非定常雑音が混在する環境下における従来製品とEdge AIの雑音抑制機能の比較。

定常雑音と非定常雑音が混在する環境下における従来製品とEdge AIの雑音抑制機能の比較。
Edge AIの聞きやすさは、主観的な体感にも明確に表れています。
補聴器を装用した経験を持つ14名の被験者を対象にしたブラインド試聴比較テストが行われました。
補聴器の雑音抑制機能は設定によって強弱が変えられるため、それぞれ比較したところ:
- 通常の強さ設定(デフォルト)で70%の方がEdge AIを選好
- ノイズ抑制を強めた設定では、実に83%の方がEdge AIを選好
という結果が得られました。
特に非定常雑音(例:カチャカチャ音、周囲の人の声)が入り混じる複雑な環境での評価が高く、「音が静かになるだけでなく、声が自然に浮かび上がってくる感じがする」「疲れにくく、長時間使っても快適」といった声が寄せられています。
これらの検証結果から、Edge AIには従来補聴器以上の聞こえを期待して良さそうです。

(a)デフォルト設定 (b)強力な設定

(a)デフォルト設定 (b)強力な設定
※参照:Terence Betlehem,et.al.”Leveraging DNN in Starkey Edge AI” starkeypro.com 2024 (最終閲覧日:2025/05/27)
https://www.starkeypro.com/continue-learning/research-and-publications
Edge AIのスタイル(形状)
Edge AIの実際の形状、クラス、具体的な製品の特徴をご紹介します。

左から,ITE R,ITC R,ITE R,CIC 312
- ITE/ITC(充電式耳あな型):充電式のため、電池の交換が不要です。取り扱いの簡単さを重視したい方におすすめ。メガネやマスクを一緒に使っても邪魔になりません。
- CIC 312(極小の耳あな型):電池式。目立たないことを重視したい方におすすめ。目立ちません。

左からRIC RT,mRIC R,RIC 312
- RIC RT(耳かけ型):充電式、バッテリーが大型で連続使用時間は最大51時間。音質と装用感のバランスが良く、人気の形状です。
- mRIC R(耳かけ型):充電式の小型サイズ。耳が小さい方におすすめ。
- RIC 312(耳かけ型):電池式の標準タイプ。災害などの停電時も安心。
Edge AIは、多様なユーザーの耳にフィットするよう、6種類の形状が用意されています。
クラス(価格帯と機能の違い)
Edge AIには、目的や予算に合わせて選べる複数のクラス(価格帯)が用意されています:
- Edge AI 24(プレミアムクラス):
すべてのAI機能がフルに活用可能。DNNの調整幅が広く、最大限の静音・音声分離性能を発揮します。 - Edge AI 20(アドバンスクラス):
主要なAI機能を網羅しつつ、バランス重視の設計。 - Edge AI 16(スタンダードクラス):
基本機能を抑えた初めての補聴器として適した構成。
Edge AIのクラス別価格表
24 | 20 | 16 | |
---|---|---|---|
片耳価格 | 680,000円 | 480,000円 | 320,000円 |
両耳価格 | 1,360,000円 | 960,000円 | 640,000円 |
クラス | 片耳価格 | 両耳価格 |
---|---|---|
24 | 680,000円 | 1,360,000円 |
20 | 480,000円 | 960,000円 |
16 | 320,000円 | 640,000円 |
24 | 20 | 16 | |
---|---|---|---|
片耳価格 | 690,000円 | 490,000円 | 330,000円 |
両耳価格 | 1,380,000円 | 980,000円 | 660,000円 |
クラス | 片耳価格 | 両耳価格 |
---|---|---|
24 | 690,000円 | 1,380,000円 |
20 | 490,000円 | 980,000円 |
16 | 330,000円 | 660,000円 |
どのグレードでも、DNNベースの常時ノイズ処理は搭載されており、“Edge AI”の名前にふさわしい体験ができます。
【全クラス共通機能】
毎日の使いやすさを支える機能については、Edge AIシリーズの全クラス共通で充実しています。
- 充電式と電池式を選択可能:
最長51時間の連続使用が可能なモデルも。 - 防水防塵性能(IP68):
汗や雨でも安心して使える耐久性。 - My Starkeyアプリ対応:
スマートフォンから音量調整、紛失防止、健康データの確認まで対応。 - Auracast™対応:
今後のBluetooth音声放送の標準にもいち早く対応。
クラス別の主な機能の比較
24 | 20 | 16 | |
---|---|---|---|
チャンネルバンド数 | 24 | 20 | 16 |
音響分析バンド数 | 64 | 60 | 56 |
再現周波数 | 10kHz | 10kHz | 10kHz |
加算型コンプレッサー | 〇 | 〇 | 〇 |
ハウリング抑制 | 〇 | 〇 | 〇 |
空間スピーチエンハンス*1 | 〇 | 〇 | 〇 |
子音強調 | 〇 | 〇 | 〇 |
会話強調(最大値) | 22dB | 19dB | 10dB |
衝撃音抑制(最大値) | 15dB | 9dB | 6dB |
風切り音抑制(最大値) | 35dB | 19dB | 10dB |
機械音抑制(最大値) | 22dB | 12dB | 7dB |
ソフト入力雑音抑制*2 | ◎ | 〇 | △ |
モーションセンサー指向性*2 | 〇 | 〇 | ー |
追従型指向性 | 〇 | 〇 | 〇 |
24 | 20 | 16 |
---|---|---|
チャンネルバンド数 | ||
24 | 20 | 16 |
音響分析バンド数 | ||
64 | 60 | 56 |
再現周波数 | ||
10kHz | 10kHz | 10kHz |
加算型コンプレッサー | ||
〇 | 〇 | 〇 |
ハウリング抑制 | ||
〇 | 〇 | 〇 |
空間スピーチエンハンス*1 | ||
〇 | 〇 | 〇 |
子音強調 | ||
◎ | 〇 | △ |
会話強調(最大値) | ||
22dB | 10dB | 8dB |
衝撃音抑制(最大値) | ||
15dB | 9dB | 6dB |
風切り音抑制(最大値) | ||
35dB | 19dB | 10dB |
機械音抑制(最大値) | ||
22dB | 12dB | 10dB |
ソフト入力雑音抑制*2 | ||
◎ | 〇 | △ |
モーションセンサー指向性*2 | 〇 | △ | ー |
追従型指向性 | 〇 | 〇 | 〇 |
各機能の解説
- チャンネルバンド数
- フィッティング時に調節できる音質の細かさ
- 音響分析バンド数
- AIが音環境を分析するためのバンド数
- 再現周波数
- 高音域まで再現することで音質が向上
- 加算型コンプレッサー
- 聞き取りやすさと聞き心地を両立
- ハウリング抑制
- 不快なピーピー音をしっかり押さえる
- 空間スピーチエンハンス
- 賑やかな場所で正面の会話にフォーカス
- 子音強調
- 聞き取りにくい「サ行」などの子音の成分を聞こえやすく
- 会話強調
- 騒音をおさえ会話を聞き取りやすくする
- 衝撃音抑制
- 突発的に響く大きな音を抑制
- 風切り音抑制
- 風切り音を効果的に抑制
- 機械音抑制
- 掃除機など大きな定常的な音がある場合に抑制
- モーションセンサー指向性
- センサーと連動してマイクの指向性を最適化
- 追従型指向性
- 雑音源を追従して抑制し、聴き取りを向上
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Edge AIが「どれだけ違うのか」「自分にとって、本当に効果を実感できるのか」、ちょっと気になってきているなら、私たちはEdge AIの試聴体験をおすすめします。
試聴は無料です。店舗での体験はもちろん、ご自宅に持ち帰る試聴貸出も無料で対応しています。
補聴器は、聞こえだけでなく、生活の質(QOL)そのものを左右する重要なツールです。
私たちは実際の生活の中で「自分に合った聞こえ」を見つけられるよう、本当にご満足・ご納得いただけるまで、お手伝いさせて欲しいと考えています。
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【監修】
補聴器専門店プロショップ大塚を運営する株式会社大塚の代表取締役。認定補聴器技能者、医療機器販売管理者。
たくさんの難聴の方々に、もっとも確実によく聞こえる方法をご提供することが私たちのミッションです。
監修においては、学術論文もしくは補聴器メーカーのホワイトペーパーなどを元にしたエビデンスのある情報発信を心がけています。
なお古いページについては執筆当時の聴覚医学や補聴工学を参考に記載しております。科学の進歩によって、現在は当てはまらない情報になっている可能性があります。
※耳の病気・ケガ・治療、言語獲得期の小児難聴や人工内耳については、まず医療機関へご相談下さい。