最新補聴器の電池の減りが早い理由と対策
2019年以降に発売された最新の補聴器は、高性能化にともない電池の消耗がとても激しくなってきました。主な原因は、補聴器の中に入っている通信アンテナによる電波の送受信です。通信機能なし補聴器(小さな耳あな型など)については、電池のもちは悪くなっていません。今、通信機能付きの補聴器を買うなら、充電式がおすすめです。
最新補聴器の電池の減りが早いのは本当?
本当です。2019年以降に発売された最新の補聴器は、その多くに通信機能が搭載されるようになりました。この通信機能は、補聴器を両耳に着けた場合、左右の補聴器が通信することで、より効果的に雑音を抑えることに役立ちます。
その他にも、スマホやテレビと補聴器が通信することで、電話や音楽、テレビ番組をより良いクリアな音質で楽しめるようになりました。
こういった良いことがある反面、通信のための電波の送受信に電力を消費することになりました。これはすべての補聴器メーカーに共通した傾向です。
なお、現在でも通信機能なし補聴器(小さな耳あな型など)は発売されています。こちらについては、電池の減りは今まで通りです。悪くなってはいません。
カタログより、さらに電池の減りが早い理由
補聴器メーカーのカタログに書いてある電池のもち時間は、実際の利用とは著しく異なる条件(JIS C5512)で測定された結果です。
補聴器メーカーのカタログを見て見ると、電池寿命が書いてあります。しかし欄外にとても小さな注意書きがあります。
カタログに記載されている電池の持ち時間は、JIS規格で定義されていない通信機能をOFFにした状態で測定されたものです。
最新の補聴器を使う場合、その多くは通信機能が働いています。通信機能付き補聴器の電池もちは、カタログ表記の6〜7割と思っておいた方が良いでしょう。(通信機能を長時間使った場合です)
補聴器メーカーは、規格に則った情報をカタログに記載する義務があるので、悪意あるわけではありません。
これから買うなら充電式補聴器がおすすめ
補聴器の電池は、古くから「空気亜鉛電池」という使い捨ての電池が主流でした。近年、通信機能付き補聴器の登場と、時期を合わせて、充電式の補聴器が増えてきました。
これらの充電式補聴器は、一回の充電で、通信機能を使わない場合は24時間ほど使用できます。通信機能を使っても一般的な使い方であれば18時間以上は使用できます。
※器種によっては、もっと電池が長持ちするものもあります。
充電式の補聴器は、一日使ったら、夜の間に充電して使います。毎日の電池代がかかりません。通信機能を活用し、より良く聞くためには充電式の補聴器がおすすめです。
補聴器の電池の持ち時間を長くする対策
今、すでにお持ちの補聴器の電池の持ち時間を長くする対策は2種類あります。
・耳の穴への入れ方の確認、耳せんの変更
・通信機能を制限する。
耳の穴への入れ方の確認、耳せんの変更
補聴器の電池の減り方は、耳の穴に適切に入れている時と、耳から外している時では変わります。実は、耳の穴から外している時の方が、電池は早く減ります。
この原因は、補聴器に備わったピーピー音(ハウリング音、フィードバック)を自動で抑制する機能が働くためです。ピーピー音は、補聴器を耳から外した時に発生する現象ですが、この音を補聴器内部のコンピュータが自動で抑えようとするとき、すごい量の計算が発生し、電池の消耗を加速させます。
つまり補聴器の耳せんが、耳の穴の奥まで入っていない時には電池が早く減ります。
また耳せんのサイズが小さく、すき間が出来ている時にも電池の減りは早くなります。
補聴器の耳せんは、いくらかゆるい方が着け心地が良くなります。そのため、小さいサイズの耳せんを選びがちです。
もし電池の減りが早いかも知れないと思ったら、補聴器店で「耳せんのサイズ」と「正しい深さまで入れて使っているか」この2つを確認してもらいましょう。
ピーピー音の抑制機能と関連した現象として、補聴器のスイッチを入れたまま、補聴器をケースに入れると、電池の減りが早くなります。これはケースに入れている間、ピーピー音の抑制機能が、ずっと働き続けるためです。補聴器のスイッチを入れたままケースに入れると、補聴器を使っている時より、もっと早く電池が減ります。ケースに入れる前には、必ずスイッチを切りましょう。
通信機能を制限する(※成功の保証なし)
効果は保証できませんが、電池のもち時間を長くする方法があります。それは補聴器を販売店で調整してもらうときに、不必要な通信機能をOFFにすることです。
補聴器には「フライトモード」という特殊なモードがあります。本来、このモードは飛行機の中で補聴器を使うための設定です。
飛行機は、スマホなどの電波の影響で、計器が誤動作することがあるそうです。そのため航空会社各社は、電波を出す機器(スマホ、パソコンなど)は電源を切るルールを定めています。このルールを守ろうとすると、通信機能付きの補聴器はスイッチを切らなければいけません。航空機の中で補聴器を使いたい人は困ってしまいます。
補聴器のフライトモードは、難聴の方が航空機の中でも補聴器を使うことができるよう、通信機能のみOFFになります。通信機能が切れても、人の声を増幅するなどの基本的な機能は動きます。
飛行機に乗っていなくても、補聴器をフライトモードにすれば、補聴器は電波を出しません。電波を使わなければ電力の消費が減りますから、電池の減りが改善される見込みです。
もちろん電波を使う機能が止まりますし、電池の減りが改善される保証はありません。ご希望の方は、自己責任であることをご理解いただいた上で、補聴器販売店に依頼して下さい。
まとめ
最新補聴器の電池の減りが早いのは、高性能化によるもの。
これから買うなら充電式を選べば大丈夫!
すでに持っている補聴器の電池の減りが早いなら耳せんのサイズを見直そう!
2006年から補聴器の仕事を始めました。もっとも確実に、よく聞こえる方法をご提供することが、私のミッションです。皆様の耳に合った補聴器をお届けするため、毎日毎日、聴覚医学の論文を読み、デンマークやドイツの研究機関と連絡を取り、時には欧州へ勉強に行き、海外から研究者を招き勉強会を開催し、国内の社会人大学院へ通い修士号まで取ってしまいました。本Webページでは、補聴器と難聴について、確かな情報や最新の情報をお届けしていきます。ご相談の方は、お気軽にご連絡ください。
保有資格:認定補聴器技能者、医療機器販売管理者
★ Twitter はじめました。耳の話を真面目に書いてます! : @mimi_otsuka