「補聴器相談医」「補聴器適合判定医」とは ― どの医師に相談すればいい?
補聴器のことを調べていると、「補聴器相談医(そうだんい)」や「補聴器適合判定医(てきごうはんていい)」といった言葉を目にすることがあります。どちらも耳鼻咽喉科(じびいんこうか)の医師に関わる呼び名ですが、名前が似ていて分かりにくいですよね。
この記事では、それぞれがどんな存在で、何が違うのか、そして「聞こえに困ったとき、どこに相談すればいいのか」を、できるだけやさしく整理します。
補聴器相談医とは

補聴器相談医は、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会(以下、学会)が委嘱(いしょく)している、いわば「補聴器のことを相談しやすい耳鼻咽喉科の専門医」です。「委嘱」とは、学会が役割を正式に任せることをいいます。決められた講習を受けた耳鼻咽喉科の専門医に対して、学会が委嘱します。
その役割は、難聴のある方が、ご本人の状態や生活の場面、必要な聞き取りの程度に応じて、無理のない価格で、自分に合った機能の補聴器を選べるように、診療や相談にのることです。委嘱には期限があり、現在は5年ごとに更新されます。
相談医は何をしてくれる?
まず、耳の状態を診察し、聴力検査で聞こえの様子を調べます。そのうえで補聴器が向いているか診断してくれます。また必要に応じて、補聴器を扱う専門店を紹介してくれることもあります。
なお、紹介のしくみや、補聴器を買うときの医療費控除については、別の記事で詳しく説明しています(補聴器と医療費控除の記事)。
補聴器適合判定医(師)とは
「補聴器適合判定医」という言葉は、正確には「補聴器適合判定医師研修会」という研修を修了した耳鼻咽喉科の医師を指す呼び方です。独立した資格の名前ではありません。この研修は厚生労働省が主催し、国立障害者リハビリテーションセンター学院が実施するもので、補聴器を適切に合わせるための判定技術を学ぶことを目的としています。
なお、健康保険の診療として行う「補聴器適合検査」については、この研修を修了した耳鼻咽喉科の常勤医師がいて、決められた検査機器・設備をそろえ、届け出をしている医療機関で受けられます。ただし、この届出があるかどうかは外からは分かりにくいので、気になる場合は受診先に問い合わせてみてください。
「相談医」と「適合判定医(師)」、どちらに相談しても大丈夫です
結論からいうと、どちらでも大丈夫です。どちらも耳鼻咽喉科の医師ですから、まず難聴について診察・必要に応じて治療してくれます。その上で補聴器が必要な場合にはその相談にのってくれます。
ときどき「適合判定医は相談医より上のランク」といった説明を見かけますが、そうではありません。そもそも「補聴器適合判定医」は資格の名前ではなく、研修を修了した医師を指す言い方なので、どちらが上か下かと並べられるものではないのです。
2つは、成り立ちの違う別のしくみです。補聴器相談医は学会が委嘱するもの、補聴器適合判定医師研修は厚生労働省が行う研修。上下ではなく、役割の違いと考えてください。
実際には役割が重なる部分も多くありますが、「補聴器相談医」は、補聴器をこれから始めようとするときの相談先としておすすめです。
「補聴器適合判定医」は、すでに補聴器を購入した方、補聴器店で試聴している方、補聴器の購入を前提に医療機関で補聴器を試聴したい方(補聴器外来という専門外来があります)におすすめです。
ただし「補聴器適合判定医」であっても、検査機器・設備が整っている施設でないと、補聴器の適合検査が出来ません。
どこに相談すればいい?
「聞こえにくいかも」と感じたら、まずは気軽に相談することから始めてみてください。ひとりで抱え込んだり、隠したりするよりも、家族や親しい人に「最近聞こえづらくて」と話してみるだけでも、前向きな一歩になります。
相談する専門家は、耳鼻咽喉科でも、補聴器店でも構いません。どちらがよいか迷って動けなくなるより、相談しやすいと感じたほうへ、気軽に足を運んでみてください。それぞれに、こんな良さがあります。

補聴器店に相談する場合は、相談が無料という利点があります。聞こえの困りごとや補聴器選びについて、費用を気にせず話せます。補聴器店には、補聴器を調整する認定補聴器技能者や、聞こえについて幅広く相談できる言語聴覚士(げんごちょうかくし)といった専門職がいます(補聴器の専門職についての記事)。なお、補聴器店で行う聞こえのチェックは、補聴器選びや調整のためのもので、医療機関の診断とは異なります。

耳鼻咽喉科に相談する場合、とくに補聴器相談医であれば、次のような良さがあります。まず、耳の状態を診察し、聴力検査で難聴の種類を調べてもらえます。自分の聞こえが今どういう状態なのかを、正しく知ることができます(聴力検査でわかることの記事)。また、診察の結果、治療で改善が見込める難聴であれば、その治療を受けられます。そして、補聴器が向いていると分かった場合には、補聴器を扱う専門店(地域によっては認定補聴器専門店など)を紹介してもらえることもあります。
もし医療機関で相談するなら、かかりつけの医師よりも、耳のことを専門にしている耳鼻咽喉科がおすすめです。その中でも補聴器相談医なら、補聴器のことをより相談しやすいでしょう。なお、補聴器適合判定の研修を修了した医師を名前で探せる一般向けの名簿はありません。補聴器相談医の名簿は公開されているので、そちらから探すのが現実的です。
なお、急に聞こえが悪くなった、耳に痛みやめまいがある、といったときは、補聴器を考える前に、まず耳鼻咽喉科で診てもらってください。
相談したあと、お店では何をするの?

相談したあとに何が起きるのかが見えていると、安心して一歩を踏み出しやすくなります。参考までに、当店(大塚補聴器)では、医師との連携のもとで、次のような対応をしています。
ひとつは「実耳測定(じつじそくてい)」です。耳の穴の形や大きさには個人差があるため、機械の設定どおりに調整したつもりでも、実際に鼓膜の近くまで届いている音は、目標とずれていることがあります。実耳測定では、細い管を耳の中に入れて、実際に届いている音を測りながら調整します。「よく聞こえますか?」というご本人の感想だけに頼らず、目標どおりの音が届いているかを客観的に確かめられることが、この方法の要点です。
もうひとつは、補聴器の3ヶ月無料試聴サービスです。ふだんの生活の中で使いながら、じっくり合うかどうかを確かめていただけます。
補聴器相談医はどこで探せる?
補聴器相談医は、学会の公式サイトで、都道府県別の名簿として公開されています。会員でなくても、どなたでも見ることができます(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 補聴器相談医名簿)。
ひとつ知っておいていただきたいのは、この名簿に載っているのは「勤務先を公開してよい」と了承した相談医だけ、という点です。つまり、名簿に載っていないからといって、その医師が相談医ではない、というわけではありません。近くで見つからないときは、お近くの耳鼻咽喉科に「補聴器の相談ができますか」と問い合わせてみるのも、ひとつの方法です。
まとめ
補聴器相談医は、学会が委嘱する「補聴器のことを相談しやすい耳鼻咽喉科医」。補聴器適合判定医師は、厚生労働省の研修を修了した耳鼻咽喉科医のことで、資格の名前ではありません。この2つは上下ではなく、役割の違いです。
聞こえに困ったら、耳鼻咽喉科でも補聴器店でも構いませんので、まずは気軽に相談してみてください。医療機関を選ぶなら耳鼻咽喉科、できれば補聴器相談医を。補聴器店なら、相談は無料です。相談医は学会の名簿から探せます。
費用のことが気になる方は、補聴器と医療費控除の記事や助成金・補助金についての記事もあわせてご覧ください。聞こえのことで気になることがあれば、当店でもお気軽にご相談ください。
【監修】
大塚補聴器を運営する株式会社大塚の代表取締役。認定補聴器技能者、医療機器販売管理者。
たくさんの難聴の方々に、もっとも確実によく聞こえる方法をご提供することが私たちのミッションです。
監修においては、学術論文もしくは補聴器メーカーのホワイトペーパーなどを元にしたエビデンスのある情報発信を心がけています。
なお古いページについては執筆当時の聴覚医学や補聴工学を参考に記載しております。科学の進歩によって、現在は当てはまらない情報になっている可能性があります。
※耳の病気・ケガ・治療、言語獲得期の小児難聴や人工内耳については、まず医療機関へご相談下さい。
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