充電式補聴器のお手入れ・メンテナンス方法
近年、充電式の補聴器が様々なメーカーから発売されています。充電式補聴器は、通常の電池交換式の補聴器と比べて、お手入れ・メンテナンスの方法・道具ともに、いくつか異なることがあります。充電式補聴器の正しいお手入れ方法をご紹介します。
充電式の補聴器は、メーカーによって部品や構造が異なり、それに合わせたメンテナンス方法が必要です。
充電池の種類は、リチウムイオン電池と銀亜鉛電池に分かれます。
リチウムイオン電池は携帯電話などにも使われており、一般的で高性能な充電池です。スマホの充電池と同じように、自分で交換することができません。銀亜鉛電池は、主に補聴器専用に開発された新しい充電池です。性能がリチウムイオン電池より少し劣りますが、自分で電池の交換ができます。
充電器の種類は、電極でつながる接触型と、非接触型に分かれます。
接触型の充電器には電極があり、そこが触れると電気が通って充電ができます。
非接触型の充電器には電極がなく、充電器に置くだけで充電ができます。
非接触型の充電器が最新式です。取り扱いが簡単で、電極がさびるなど故障の心配は少なくなりました。ただし、まだごく一部の補聴器メーカーからしか発売されていません。
銀亜鉛充電池のRIC(小型耳かけ型)補聴器のメンテナンス
この銀亜鉛充電池のメリットは、うっかり充電を忘れた時には、補聴器用の空気電池が使えることです。
また経年劣化で痛んできたときにも、銀亜鉛充電池は、販売店で交換できます。新品の銀亜鉛充電池は、お店に在庫があれば、1分で交換できます。新品は5,000円~6,000円(税抜)です。
デメリットは、電池カバーの内側に、汗などの汚れが溜まりやすくなることです。
充電式の補聴器は、充電器にセットすれば、補聴器の電源が切れます。また補聴器を持ち上げるだけで電源が入ります。取り扱いが簡単なのはとても良いことですが、電池カバーの内側のお手入れを忘れがちです。
銀亜鉛の充電式補聴器を使う場合は、故障を予防するために、毎日のお手入れとして、補聴器を使わない時には電池カバーを開いて、乾燥ケースへ入れて保管すると良いでしょう。
①まず電池カバーを開ける。
②電池カバーを開けたまま、乾燥ケースへ入れる。
補聴器を乾燥ケースへ入れたら、ケースのフタをしっかり閉めてください。フタを閉めないと、乾燥できませんし、乾燥剤の効果がすぐなくなります。
乾燥ケースによっては、フタの上にマグネットシールが貼ってあるものがあります。これは取り出した電池が無くならないように、貼っておくための工夫です。
上記の方法は、乾燥と充電を別々に行う方法です。
補聴器を充電しながら、除菌・乾燥もできる電気乾燥器もあります。
これなら、乾燥・除菌が終わると自動で止まるので就寝時にセットしておくだけで簡単です。
リチウムイオン電池の接触充電型
リチウムイオン電池は補聴器に内蔵されています。自分で電池を交換する必要がないということです。補聴器に電池カバーが無いため隙間がなく、水や汗、ホコリが入りにくい構造になっています。
接触充電型のRIC耳かけ補聴器
接触型の充電器には電極があり、そこが触れると電気が通って充電ができます。電池を出し入れする電池カバーはありませんが、汗などで電極がさびないよう乾燥させる必要があります。
オーデオB-R(フォナック)
このタイプの補聴器を世界で一番最初に発売したメーカーは、フォナック社でした。同社の充電器は、補聴器ケース、乾燥剤、充電器としての機能が一体になっています。
乾燥剤の有効期間は2~3カ月程です。一年に数回、乾燥剤を確認して、効き目が切れたときは交換しましょう。
接触充電型のBTE耳かけ補聴器
取り扱いが簡単な補聴器をお求めの方には、標準サイズ耳かけ型の充電式もあります。
ボレロB-R(フォナック)
お手入れに関する取り扱いは、先に紹介した小型耳掛け型と同じです。補聴器を耳に入れたり、外したりする取り扱いは、標準サイズの方が、さらに簡単です。
リチウムイオン電池の非接触充電型(もっとも簡単で最先端!)
リチウムイオン電池は補聴器に内蔵されています。自分で電池を交換する必要がないということです。補聴器に電池カバーが無いため隙間がなく、水や汗、ホコリが入りにくい構造になっています。
非接触充電式のRIC耳かけ補聴器
Pure Charge&Go Nx(シグニア補聴器)
非接触型の充電器には電極がなく、充電器に置くだけで充電ができます。
電極がさびるなどの故障の心配も少なく、もっとも故障率が低いことが期待される補聴器です。
Charge&Goの充電器は充電中に約10℃暖かくなることで補聴器を乾燥させます。それでも、汗が気になる方は30分で急速に乾燥できる電気式乾燥器をおすすめします。
または、先に紹介したDRY-CAP UVを使えば充電をしながら、乾燥・除菌もできます。
非接触充電式のBTE耳かけ補聴器
なお、取り扱いが簡単な標準サイズの耳かけ型補聴器もあります
お手入れに関する取り扱いは、先に紹介したRICと同じです。耳に入れたり、外したりの取り扱いは、BTEの方が、さらに簡単です。
Motion Charge&Go Nx(シグニア補聴器)
充電式補聴器の中で、2019年現在、おそらくもっとも取り扱いが簡単な補聴器です!
4、どんな補聴器でも共通して必要なお手入れ
自分で出来る補聴器のお手入れ。
補聴器を購入したあと、ご自分で補聴器のお手入れを定期的にすると、補聴器は長持ちします。
できれば毎日すること。
毎日クリーニングクロスで拭く
補聴器を拭くときは専用のやわらかい布(クリーニングクロス)、ティッシュペーパーを使いましょう。
※ウェットティッシュは、アルコールが含まれているものだと、本体をいためてしまう恐れがあります。アルコールが入っていない赤ちゃん用でも水分が侵入してしまい故障の原因になります。
補聴器メーカーから専用のクリーナーシートが販売されています。気になる方は、プロショップ大塚までお問い合わせください。
耳にかける形の補聴器は、汗で汚れることがあります。できるだけ毎日拭いて下さい。
就寝時は補聴器を乾燥ケースにしまう。
補聴器は精密機器です。湿気や水気に弱いため、使わない時は乾燥させておきましょう。通常、補聴器を購入すると乾燥剤入りの専用ケースがサービスで付いてきます。
補聴器を使わないときは、乾燥ケースの中に保管しましょう。
先に紹介した通り、充電式補聴器の場合は、充電しながら乾燥・除菌できる電気乾燥器を使うと便利です。
2~3カ月に一回すること
補聴器ケースの乾燥剤の使用期限を確認する
乾燥剤には使用期限があります。毎日、少しずつ湿気を吸収して、最後には効果が無くなります。毎日きちんと乾燥ケースに保管しても、乾燥剤の使用期限が切れていたら意味がありません。
乾燥剤は使用期限が切れると、色が変わるなど、効き目が無くなったことが分かるようになっています。
上の画像を拡大してみると、
乾燥剤の使用期限は、忘れがちです。乾燥剤を交換したら、乾燥ケースの見える場所に、交換した日を書いて記録しておくと良いでしょう。
乾燥剤の必要ない電気式乾燥器を使用している方は、乾燥剤の確認作業は必要ありません。
週一回ほどのお手入れ
週一回は補聴器の耳せんにブラシをかけて、耳垢の汚れを落とすようにしましょう。
耳せんの汚れを落とすための専用ブラシがあります。
上の写真にある黒い持ち手のブラシは、取り扱いが細かいのであまりおすすめしません。ここでは白いブラシを使ったブラッシングの方法をご説明します。
既製耳せん(やわらかいイヤチップ)の場合
ブラシをかけるときは、ブラシが下、補聴器が上になるように持ちます。補聴器の音の出口が下に向くように、しっかり持ちましょう。ブラシは動かないように片手で支えて、補聴器はもう片方の手で、力を入れずに左右に動かします。
※ブラッシングの注意1
ブラッシングの際、ブラシが上で補聴器が下になると、耳垢が耳せんの中に落ちてしまいます。必ずブラシが下、補聴器が上になるようにブラシをかけましょう。
オーダーメイド耳せんの場合
オーダーメイド耳せんの場合も、ブラッシングの方法は変わりません。ブラシをかけるときは、ブラシが下、補聴器が上になるように持ちます。補聴器の音の出口が下に向くように、しっかり持ちましょう。ブラシは動かないように片手で支えて、補聴器はもう片方の手で、力を入れずに左右に動かします。
※ブラッシングの注意2
ブラッシングの際、ブラシを上下に動かすと、耳垢を中に押し込んでしまう場合があります。ブラシは左右に動かしましょう。
補聴器の販売店で出来る補聴器のクリーニング
ご自宅用のお手入れ・クリーニングを代わりに行う
ここまで、ご自宅でのお手入れ方法をいくつかご紹介しました。しかし高齢で手先の器用さに自信のない方は、販売店まで足を運んでください。私たちスタッフがお客様の代わり以上に、お手入れ・クリーニングをさせていただきます。
補聴器内部まで乾燥をかける
補聴器真空乾燥機は、まず極細のバキュームで、音の出口の耳垢を直接吸い取りきれいにします。その後、真空に近い状態のカプセルに補聴器を入れることで、補聴器内部の汚れを強力に吸い取ります。
耳せんの先を洗浄する
耳せんの先端部分は、補聴器から適切に取り外すと水洗いができるようになっています。(※補聴器本体は濡れると壊れます!)
販売店では、耳せんだけを取り外して、超音波洗浄機で水洗いします。
劣化した耳せんを交換する
既製品のゴム製耳せんを使っている場合、何年も使っていると劣化、変色、変形などが起こる場合があります。耳せんの種類によって、無料のものから、数百円程度の有料のものまであります。劣化した耳せんは、交換しましょう。
補聴器メーカーでの分解掃除と点検。
保証期間内であれば、無料でできます
補聴器を購入してから2年以上、経過しているなら、年一回程度はメーカーへ分解掃除(オーバーホールともいう)に出しましょう。自動車の車検のようなもので、正常に動作するか点検してもらえます。そのとき微かでも不調が認められれば、部品を交換し、正常に動作する状態に直してもらえます。
メーカーでの分解掃除は、保証期間内であれば無料です。
銀亜鉛充電池は保証対象外です。
保証期間終了後は、5,000円~6,000円程度の費用が発生します。
※故障部品があれば、別途部品代が発生します。
まとめ
普段、自分でやること。
・清潔なクリーニングクロスで拭く。
・毎日乾燥ケースに入れる。
一ヶ月から半年に一回程度、やること。
・お店に行ってクリーニングをしてもらう。
一年~二年に一回、やった方がよいこと。
・メーカーへ分解掃除と点検に出す。
補聴器は、ここまで紹介したメンテナンスを行っていただけると、故障が減り、より長く使っていただくことができます。