シーメンス・シグニア補聴器の特徴は、補聴器をタンスの肥やしにした人(使わない人)にこそ合う
昔から「補聴器を購入したにもかかわらず使わなくなってしまう方」はいます。補聴器が必要で持っているのに使わないのです。2000年のアンケート調査によると、補聴器を使わない理由は30種類以上もあり、その内容は様々でした。
補聴器メーカーは、この使わない理由に対して、一つずつ新機能を開発し、問題を解消してきました。その中でもシーメンス・シグニア補聴器は、補聴器を使わない理由に対して、とても分かりやすく新機能が開発されています。シーメンス補聴器の歴史と特徴を例に、補聴器を使わない理由と、それに合わせて開発された機能や特徴をご紹介します。
補聴器を買って持っているのに使わない理由32のリスト
補聴器を購入しても使わなくなってしまう人は、昔から少なくありません。
難聴者が補聴器を使わなかった理由について、過去のアンケート調査の結果を見てみると次のようなものでした(引用:Kochkin, M.2000)。
1.補聴器の効果があまり感じられない (Poor benefit from hearing aids)
★2.雑音がある場所でうるさい/よく聞こえない (Background noise/noisy situations)
★3.補聴器の着け心地がよくない、耳に合っていない (Fit & comfort)
4.補聴器を使うことによるネガティブな効果 (Negative side effects of H.A.)
5.補聴器の値段、修理するときのコスト (Price & cost of repairs)
6.聞こえるので補聴器はいらない。一人なので補聴器はいらない (Don’t need help)
7.補聴器が壊れた (Hearing aid is broken)
★8.音質が悪い (Sound quality is poor)
9.特に理由などない。ただ着けない (Unspecified – do not wear)
★10.ボリュームの調整が難しい (Volume control adjustment)
★11.ピーピーとハウリングの音がする (Whistling and feedback)
12.(補聴器は)めんどくさくて、不快、いらいらする (Nuisance/hassle/annoying)
13.販売店のサービスが良くなかった (Poor service from dispenser)
★14. 高い音が聞こえない難聴には、補聴器は役に立たない(High-frequency loss not helped)
15.補聴器をつける(または使う)ことは恥ずかしい (Stigma of wearing hearing aids)
★16.聞こえる場所・環境が限定的 (Work in limited situations)
★17.重度難聴には(補聴器が)助けにならなかった (Profound hearing loss not helped)
★18.うるさすぎる (Too loud)
★19.バッテリーのもちが短い (Battery life too short)
20.つい使うのを忘れる (Forget to use)
★21.電話で話す時使えない (Does not work on phone)
★22.片耳だけの補聴器では不足 (Monaural aids inadequate)
23.誇大広告(または販売員の売り文句)に対して期待しすぎた (Oversold expectations)
★24.耳鳴りがある (Have tinnitus)
25.家族が買えと家族が購入を進めたから買った(本人の意思で補聴器を買っていないから使わない)(Family pressure led to purchase)
★26.手先が器用でないと扱いづらい(Manual dexterity)
27.人と話すことが少ない (Rare social user)
★28.耳せんのように感じる(耳がふさがったようで不快)(Feel like earplugs)
★29.音の方向が分からない (Poor directivity)
★30.音の増幅が少なすぎる (Gain is too low)
31.見つけられない(紛失)(Can not find them)
★32.耳垢の問題 (Ear wax problem)
補聴器メーカーにできることは、新機能の開発です。
上記のリストには、販売店などの接客サービスの問題、ご本人のやる気の無さ、もしくは家族の気持ちなどが含まれています。これらは補聴器メーカーにとっては、努力の余地が少ない部分です。
補聴器の新機能の開発で解消可能な問題に、星印を着けてみました。
この星印を着けた要素は、過去20年ほどにシーメンス・シグニア補聴器が力を入れて開発してきた機能とつながります。
私たち、補聴器の専門家からシーメンス・シグニアの新製品開発の歴史を見てみると、どうやらシーメンス・シグニアは「補聴器メーカーの努力によって解消可能な顧客の要望や不満」をよく聞き、この問題に対応する新機能を開発してきたように思えます。
補聴器を使わない理由を解消する、シーメンス・シグニアが開発した機能
先のリストに対応する補聴器の機能の一部をご紹介します。
雑音がある場所でうるささを減らす雑音抑制機能
雑音抑制機能は、アンケートで見つかった下記の声に対応する機能です。
2.雑音がある場所でうるさい/よく聞こえない
18.うるさすぎる
この機能は、いわゆる言葉以外のノイズを自動で抑制する機能です。この機能は、雑音によるうるささや不愉快さを軽減してくれます。また雑音のある環境で会話するときには、言葉の聞き取りを、少し助けてくれます。
主には不愉快さを減らしてくれる機能です。
この機能は、新製品が発売されるたびに、少しずつ強化・進化しています。
雑音がある場所で言葉の聞き取りを助ける指向性機能
指向性機能は、アンケートで見つかった下記の声に対応する機能です。
2.雑音がある場所でうるさい/よく聞こえない
先に紹介した「雑音抑制機能」は、雑音がある環境で、うるささを減らして不快感を減らしてくれるものでしたが、雑音の中で言葉の聞き取りを助ける効果は限定的でした。
この「指向性機能」は、雑音のある場所で、顔を向けた方向の言葉の聞き取りを助けてくれます。
この機能は顔を向けた方向の音を優先的に拾って、顔を向けていない方向の音は、自動的に大きく抑えてくれます。この結果、雑音のある場所で、ご本人の聞きたい言葉の聞き取りを助けてくれます。

指向性機能とは、上図の顔を向けた方向(青いエリア)の声を際立たせて、エリア外の音を抑える機能。
着け心地を改善したCOOL補聴器の開発
COOLというのは、補聴器の特殊な形状です。アンケートで見つかった下記の声に対応するものです。
3.補聴器を使った時の着け心地
26.手先が器用でないと扱いづらい
補聴器を使った時の着け心地というのは、人によって好みが大きく分かれます。
通常の補聴器の耳せんは、音楽用イヤホンと比べて、耳の穴の奥深くまで入れるものです。その時のきつさによる圧迫から、一部の方は不快感を感じる場合がありました。

COOL補聴器を耳に着けた様子
COOL補聴器は、耳の型を採取して作る特殊なオーダーメイド耳穴型補聴器です。
既存の補聴器の耳せんは、耳の穴に栓をするような構造で、耳の穴にいくらか圧迫感がありました。COOL補聴器は、耳の穴に栓をするのでなく、蓋をかぶせる様な構造になり、耳の穴への圧迫感を大幅に減らし、おのずと着け心地も良くなりました。
またCOOL補聴器は、手先が不器用な高齢者にも喜ばれました。
既存の補聴器では、手先の動きが鈍くなったり、腕や肘を肩より高く上げられない高齢者にとっては取り扱いが難しいものでした。耳の穴は肩より高い場所にあり、その高さで、補聴器という小さな物を指先でつまみ、耳の穴に入れる動作が負担だったのです。
COOL補聴器は、別名「ワンタッチ補聴器」とも呼ばれ、指でつまみやすく、耳の穴に一瞬で入れることができます。ご本人の手先、肘、肩の動きがにぶくなっていても、自分で取り扱うことが楽になりました。
「うるさくなく」「十分に大きな音」を実現したツインニーポイント
ツインニーポイントは、アンケートで見つかった下記の声に対応する機能です。
18.うるさすぎる
30.音の増幅が少なすぎる
たとえば小さな声やぼそぼそ声をよく聞こえるようにしようとすると、補聴器の音量を十分に上げる必要があります。しかし、その補聴器を耳に着けて外出したりすると、周りの音が大きくなりすぎて、うるさくなってしまいます。
「うるさすぎず」「十分な音量」というのは、当たり前のようですが、実は矛盾していることなのです。
ツインニーポイント機能は、ぼそぼそ声などの小さな音は特に大きく増幅し、同時にトラックのエンジン音のような元から大きな音はあまり大きくしない機能です。
このツインニーポイント機能によって「うるさすぎず」、でも「音の増幅が十分」という矛盾した要望に応える補聴器が生まれました。
ピーピー音を減らすハウリング抑制機能
ハウリング抑制機能は、アンケートで見つかった下記の声に対応する機能です。
11.ピーピーとハウリングの音がする
補聴器を使っていると、ピーピーという音が外に漏れることがあります。これは「ハウリング」または「フィードバック」と呼ばれる現象です。ハウリングは、補聴器を着けている人にとって不快な音です。またハウリングが発生している時は、言葉がよく分からなくなります。もちろん、そばにいる人にとっても、不快な気になる音です。
ハウリング抑制機能は、ピーピーという不快な音を自動で抑制する機能です。2000年頃の補聴器で、ハウリング抑制機能を使うと、音が小さくなるなどの弊害がありました。新製品が出るたび、ほぼ毎年、改善・強化され、2019年現在ではほとんどの場合、弊害やデメリットがほぼ無く、ピーピー音はまったく発生しません。
まとめ
シーメンス・シグニア補聴器が開発してきた機能の一部、補聴器ユーザーが補聴器を使わない理由をセットでご紹介しました。
私たち補聴器の専門家から見ると、シーメンスの技術開発の歴史は「難聴者が補聴器を使わない理由を一つ一つ解消してきた歴史」と一致するように思えます。どうやらシーメンス・シグニアは、補聴器を体験した上で使わないことを選んだ難聴者の声をとてもよく聞いているようです。
実際、現在のシーメンス・シグニアの補聴器は「補聴器初心者」や「補聴器を試して、うるさくて使わなくなってしまった方」からの評価が良いように思います。
なおシーメンス・シグニアと別のメーカーは、聴覚医学の最先端研究を製品に反映させていたり、すでに補聴器を使って満足している方の声を聞き、もっとよく聞こえることを目指していたり、目立ちにくさを優先しているなど、メーカーごとに様々な特徴があります。
補聴器はメーカーによって、大きく特徴が異なります。専門店で、ご相談いただき、お時間が許せば、複数のメーカーを試聴して選んでいただくと良いでしょう。