補聴器の種類によるメリットの違い【耳かけ型・耳あな型】
現在発売されている補聴器には、たくさんの種類があります。耳かけ型、耳あな型の2つが主流です。その中でも様々な種類があり、使う人によっておすすめの種類が違います。この記事では種類ごとのメリットを詳しく紹介します。
【耳かけ型・耳あな型】補聴器の特徴・メリット
補聴器の種類は「耳かけ型」「耳あな型」の2つが主流で、全販売数の90%以上を占めています。両方とも、内部の構造は同じです。選んだ種類によって、つけ心地や見た目が変わります。また音質や機能にも少し違いがあります。
マスクの邪魔にならない耳あな型補聴器
耳あな型補聴器は、本体が耳の穴にすっぽり収まるタイプ。すべての部品が小さい本体に収まっています。オーダーメイドが一般的ですが、一部既製品もあります。
価格は95,000円~600,000円ほど。従来電池交換式のみでしたが、一部充電式のタイプも出始めています。
コロナ感染流行以降、マスクをかけることが日常的になりました。そのためマスクと干渉ない耳あな型の人気が高まっています。
昔ながらの形の耳かけ型補聴器
耳かけ型補聴器は昔から人気がある種類です。「目立ちやすい」というイメージがあるようですが、近年小型タイプが登場し、かなり目立ちにくくなってきました。
本体部分は耳の上にかかっており、耳の中に入るチューブと耳せんが付きます。価格は50,000円~550,000円ほど。ほとんどのメーカーから充電式と電池交換式の両方が発売されています。
耳あな型補聴器4種類のメリット・選び方
耳あな型補聴器には、オーダーメイドと既製品があります。
オーダーメイドは仕立てのスーツのようなつけ心地が最大のメリット。見た目の好みや手先の器用さに合わせて形を決められるのも魅力です。
IIC/CICタイプ【一番小さいオーダーメイド耳あな型】
IICは「Invisible in the canal」の略称で、まったく見えないという意味です。
CICは「Completely in the canal」の略称で、耳の穴の中に完全に収まるという意味です。IICの方がCICよりも小さく、耳の穴の奥に入ります。
IIC/CICタイプの第一のメリットは、小さく目立たない点。特に、IICは耳の奥に補聴器全体を収納できるので、どの角度から見ても着けていることにまったく気づきません。
第二のメリットは、優れた音質です。
人間の耳には、生まれつき周りの音を自然に集める仕組みが備わっています。他の種類の補聴器ではその効果が多少失われてしまいますが、IIC/CICでは自然な集音効果を最大限に活かせます。
この特徴によって音質と見た目のいいとこどりをできるのが、IIC/CIC最大の魅力です。
- 一番小さく目立たない補聴器を作れる
- 耳の自然な集音効果を使えるので音質も良い
カナル【多機能のオーダーメイド耳あな型】
カナルタイプはCICよりも大きい、標準的なサイズです。
カナルタイプのメリットは、様々な機能を搭載できる点です。
最新の補聴器では、Bluetooth機能が搭載されており、スマホやパソコンの音を補聴器から聞くことができます。
また騒がしい場所で会話をしやすくする機能はIIC/CICに比べ、カナルタイプの方が優れています。人が多い場所で補聴器を使いたいという希望がある方にはおすすめです。
- Bluetoothや音量調節ボタンなど便利機能をオーダーメイドできる
- 騒がしい環境で補聴器を使いたい人向け
- 標準サイズなので高齢の方でも扱いやすい
世界初の充電式オーダーメイド補聴器「Livio」
2020年6月、世界初の充電式オーダーメイド補聴器がスターキー社から発売されました。
電池交換式の補聴器は、7~14日に一回程度ご自身で交換する必要があります。
スマホなどの充電に慣れていて電池交換が面倒な方、電池交換が難しい高齢者の方には充電式がおすすめです。また、軽度難聴から高度の難聴まで、幅広い聴力の方に対応できるのも大きな魅力です。
2021年現在、充電式オーダーメイド補聴器のサイズはカナルと同等か、少し大きくなります。CICやIICのサイズで作製することはできません。
ブラックカラーを選択してワイヤレスイヤホンのように見せることもできるので、おしゃれな補聴器を探している方にもぴったりです。
- 電池交換の必要がなく、高齢の方は楽ちん
- イヤホンのようなデザインに作れるので若い方にもおすすめ
既製品耳あな型補聴器「Active」
最近、ワイヤレスイヤホンのような形状の補聴器が出てきました。その中でも特にイヤホンに近いのが、シグニアから発売された「Active」です。デザインもおしゃれで、「補聴器に見えないものが欲しい!」と、このタイプを選ぶ人もいらっしゃいます。
スマートフォンと接続することで本当のイヤホンのように、音楽や電話の音声を聞くことが可能です。
なお、既製耳あな型が合うのは軽度難聴の方のみ。比較的若い方で補聴器を考えている人、補聴器に見えないデザインが好きな方におすすめです。
- イヤホンのように見えるおしゃれな見た目
- 軽いつけ心地で気軽に補聴器を試せる
まずはちょっとだけ試したいというご要望にお応えする「Active」の有償レンタル(サブスク)はこちら。
耳あな型補聴器のレンタルサービス(定額制)
耳かけ型補聴器3種類のメリット・選び方
耳かけ型補聴器は耳にかかる本体部分と耳の穴に音を伝えるチューブ部分、耳の中に入る耳せん部分に分かれます。
耳せん部分のみをオーダーメイドして、より良いつけ心地と音質にすることも可能です。
各メーカーが充電式、電池交換式の2種類を発売しています。
一番売れているRICタイプ【充電式】
RICとは「Receiver in Canal」の略です。レシーバーという機械が耳の中にあることからこう呼ばれています。
RICタイプは、小型の耳かけ型補聴器です。従来の耳かけ型とは違い、小型で目立ちません。誰かと会う時にも、前方向からは補聴器がほとんど見えず、横から見てもチューブ部分が細く、ほとんど気付かれないでしょう。
RICタイプの一番のメリットは、補聴器店ですぐに試聴できることです。
補聴器専門店で用意している試聴用補聴器の多くは、RICタイプです。RICタイプなら「補聴器を試したい!」と思ってお店に行って、そのままレンタルして持ち帰ることも可能です。
- 一番売れているタイプの補聴器
- 小型で目立ちにくい
- 補聴器店ですぐにレンタルできる
- 面倒な電池交換が必要なし
充電式よりも小さいRICタイプ【電池交換式】
電池交換式の場合、1週間〜14日の頻度で、ボタン電池を交換する必要があります。慣れると30秒もかからず交換が可能です。お客様によっては「毎日充電するのが面倒だから電池交換式の方がいい」という方もいらっしゃいます。
また、充電式のRICタイプは便利なのですが、やや高額になりやすいという点があります。
電池交換式の最安価格は片耳80,000円。充電式と比べお値打ちです。
毎日の充電がおっくうな方、なるべく費用を抑えながら最新の補聴器を使いたい方におすすめです。
- 毎日充電する必要がない
- 充電式RICタイプよりもさらに小型、耳が小さい人に合う
- お値打ち価格で、最新の補聴器を使える
取り扱いしやすいBTEタイプ【従来タイプ】
BTEは「Behind The Ear」の略で、耳の後ろという意味です。RICと同様に耳の後ろに本体がかかりますが、サイズはRICより大きいです。
BTEのメリットとして、重い難聴の方でも使えるという点があります。BTE以外の種類では音量が足りず、重度難聴には対応できません。
小児向けの補聴器の多くはBTEタイプで発売されています。小児用の補聴器はカラーも豊富で、チャイルドロックや電池の残量を知らせるランプなど、親御さんも安心の仕様が搭載されています。
BTEタイプでは耳せん部分をオーダーメイドする「イヤモールド」を使用するのが一般的です。イヤモールドについては以下の記事をご覧ください。
補聴器の耳せんってオーダーメイドできるの?イヤモールドってよく聞こえるの?耳せんの種類、形、効果を解説
- 重度難聴にも対応可能な唯一の種類
- 小児用の補聴器が各メーカーから発売されている
- 高齢の方、細かい作業が苦手な方には、取り扱いが楽
聴力によって選べない種類もあるため、注意しましょう
一般的な補聴器のタイプを紹介しましたが、耳の聞こえ具合(聴力)によっては選べない種類もあるため、注意しましょう。
補聴器の形状 | 対応聴力 |
---|---|
IIC | 軽度〜中等度難聴 |
CIC、カナル | 軽度〜高度難聴 |
既製品耳あな型 | 軽度難聴 |
RIC | 軽度〜高度難聴 |
BTE | 軽度〜重度難聴 |
聴力は、軽い難聴から重い難聴まで程度の差があります。耳鼻咽喉科や補聴器専門店で聴力をお調べすると、希望するサイズがご自身の聴力に合っているかわかりますので、ぜひ補聴器専門店へご相談ください。
なおオーダーメイド補聴器を注文すると、優良な補聴器店なら見た目や取り扱いなどの希望を聞いてくれます。せっかくですから「聞こえが悪くならない範囲で、なるべく目立たないように作ってください」「誰にも絶対に気付かれたくありません」「取り扱いが簡単な充電式が欲しいです」など、ご自分の希望を伝えていただくとよいでしょう。
調べて迷うより、専門家への相談がおすすめ
この記事では、たくさんの補聴器から代表的な種類をご紹介しました。しかし記事を読んだだけでは「私にぴったりな補聴器は一体どれ?」という方も多いと思います。おすすめな補聴器は、一人ひとりの具体的な困りごと、聴力、取り扱いや見た目のご要望によって変わってきます。ぜひ私たち補聴器の専門家にご相談ください。
【監修】
補聴器専門店プロショップ大塚を運営する株式会社大塚の代表取締役。認定補聴器技能者、医療機器販売管理者。
たくさんの難聴の方々に、もっとも確実によく聞こえる方法をご提供することが私たちのミッションです。
監修においては、学術論文もしくは補聴器メーカーのホワイトペーパーなどを元にしたエビデンスのある情報発信を心がけています。
なお古いページについては執筆当時の聴覚医学や補聴工学を参考に記載しております。科学の進歩によって、現在は当てはまらない情報になっている可能性があります。
※耳の病気・ケガ・治療、言語獲得期の小児難聴や人工内耳については、まず医療機関へご相談下さい。