難聴は予防できる?難聴の原因と進行を抑えられる可能性のある方法
騒々しい車や電車の音、大音量の音楽、栄養の偏ったコンビニ弁当、日々のストレス。
これらは難聴を発症したり、難聴の症状を進行させる原因になります。
現代社会では、日々の生活の中に、耳に負担をかける原因が潜んでいるのです。
日常生活でほんの少しの工夫、予防法を実践することで、耳への負担を軽減できる可能性があります。
大音量は危険!その他に生活習慣も
たとえば、ロックコンサートの後に、耳鳴りがしたことはありませんか?
夏の花火を近くで見たあとにも、キーンというような音を感じたかもしれません。
また子供のいたずらやカラオケでの悪ふざけなど、耳元で全力の大音量で叫んだりすると、数分ほどで、難聴を引き起こすことがあります。
聴覚の専門家は、コンサートや花火の大音量を聞くと、一時的ではなく、永久的に聴力に悪影響を及ぼす可能性があると言います。
参考:大きな騒音が聴力損失を引き起こす可能性がある
難聴の原因になる大きな音は、特別なイベントの時だけではありません。
電車通勤をしている人は週に10時間以上電車に乗っていると、やはり難聴が発生する可能性があります。
片道の通勤時間が1時間ほどかかるような方は、注意が必要になってくるでしょう。
その他に、パチンコが趣味の方は、十分注意が必要です。
近年、パチンコ店内の音量は、昔より小さくなったようですが、それでも電車内より、ずっと大きな音量で音楽が流れています。
日常生活にある音の大きさと、難聴になるまでの聞く時間を下記にまとめました。
日常生活にある音の大きさと、難聴になるまでの聞く時間

メディカルノートホームページより筆者改編
何も対策せず、大音量の環境で生活していると、難聴になる可能性があります。世界保健機関(WHO)は2015年に報告書に安全ではないリスニング(注:大音量で音楽を聞いたり、イベントに参加すること)によって世界中で11億人の若者が難聴のリスクにさらされていること。今後数十年で難聴になる人々は増加していくであろうことを報告しています。
長期間大きな音を聞いたことによる難聴は、多くの場合、回復することはありません。
しかし、予防することはできるともWHOは報告しています。
あなたが将来にわたって、よく聞こえる状態が続くよう、大音量から耳を守る方法や、予防のための生活習慣をご紹介いたします。
- WHO TEAM:WHO global standard for safe listening venues and events.World Health Organization (WHO),https://www.who.int/publications/i/item/9789240043114,参照(2022-12-27).
大きな音をブロックする方法
電車やバスによる通勤など、騒々しい環境にいなければいけない場合は、耳せんやイヤホンで耳への負担を減らすことができます。耳せんは、単純ですが安価で効果があります。ドラッグストアやホームセンターなどで、数百円から千円程度で置いてあります。耳せんは使い捨てタイプと洗って再利用できるタイプがあります。
さらに大音量の環境、たとえば建築現場やプレス工場または飛行機などの環境では、耳を健康に保つためにオーダーメイドの耳せんが効果的です。
普通の耳せんよりも高価で、片耳10,000円程度ですが、遮音性やフィット感に優れています。
当店でも耳の型を採取し、オーダーメイド耳せんをお作りすることが可能です。
音楽を聞くならノイズキャンセリングイヤホン・ヘッドフォン
10歳代の若者の5人に1人は、何らかの形の聴力損失があると推定されています。ヘッドホンやイヤホンで音楽を聞くことが増えているためと考えられています。
iPhoneやMP3プレーヤーなどによって、若者が難聴になるのを防ぐ最も簡単な方法は、音楽を聞く時間を減らし、音量を下げて音楽を聞くことです。しかし思春期の若者に大人が注意しても、若者が趣味を犠牲にして自身の健康に気を付けるというのは、難しいことでしょう。
大音量の音楽を聞きたい方には、ノイズキャンセリング機能付きのイヤホンやヘッドホンがおすすめです。
ノイズキャンセリング機能付きのイヤホン・ヘッドホンは、周りの雑音を打ち消すことで、聞きたい音楽だけに集中して楽しめるようになります。原理としては、雑音と反対の音波を耳元で発生・雑音と相殺させることで、雑音ノイズをカットするというものです。周りの雑音が小さくなるため、普通のイヤホンより音量が小さくても音楽が楽しめます。結果、長時間音楽を聞いていても耳へのダメージは小さくなるでしょう。
以前は高級なイヤホン・ヘッドホンにしか搭載されていませんでしたが、最近は3,000~4,000円程度のイヤホンにも搭載されているようです。
風邪も原因?中耳炎による難聴
子供の頃、風邪をこじらせてしまい、中耳炎になったことがある。という方もいるのではないでしょうか。
多くの中耳炎は、鼓膜の奥にある中耳という空間に炎症が起きている状態です。
重い中耳炎になると、中耳に膿のような液体が溜まります。この状態では音が伝わりにくくなり、難聴になってしまうのです。
中耳炎による難聴の場合、治療を受けることで聴力が改善する可能性があります。まずは耳鼻咽喉科に受診することをお勧めします。
耳垢も難聴の原因!耳垢を掃除する方法
若い人にはあまり多くありませんが、高齢者の場合、難聴だと思ったら、耳垢が詰まっていただけというケースがあります。
若い方の場合、耳垢は自然に排出されることが多いです。
外耳道には異物を外に押し出す力があり、顎を動かすことで自然と耳垢が外に出ていくのです。
しかし、加齢により外側に押し出す力が弱まったりなど、何らかの事情があると、だんだん耳垢が溜まりこんでいきます。
耳垢が外耳道を塞ぐほど溜まってしまうと、耳栓のようになり、音が聞こえにくくなるのです。
耳垢が溜まるなら、綿棒や耳かきで掃除すれば良いと思うかもしれません。
しかし、実は綿棒で掃除することでかえって耳垢を奥に押し込んでしまう可能性があります。
ほかにも綿棒や耳かきで外耳道を刺激して痛めてしまう可能性もあります。
耳垢が心配な方は耳鼻咽喉科に受診して、耳掃除をしてもらいましょう。
動脈硬化、特に高血糖は耳にダメージ。ゆっくり食事しましょう
お年とともに聞こえにくくなる難聴を加齢性難聴(または老人性難聴)と言います。
なぜ加齢が難聴の原因になるかは、まだ完全には解明されておらず、諸説あります。加齢が難聴につながる関係を説明するものの一つに血管の機能低下。つまり「動脈硬化」があります。
加齢性難聴(老人性難聴)の場合、主に音を感じ取る細胞の機能が衰えていきます。動脈硬化を引き起こすと、血の巡りが悪くなって音を感じる細胞に十分な栄養が届かなくなり、難聴が進むと考えられています。
動脈硬化を引き起こす原因は、内臓脂肪型肥満、高血糖、高血圧、脂質異常症などがあります。この中でも、高血糖(または糖尿病)は難聴との関連を直接指摘されています。
- 内田育恵,中島務,新野直明,安藤 富士子, 下方 浩史.(2004).加齢および全身性基礎疾患の聴力障害に及ぼす影響.Otology Japan,14(5), 708-713.
ここでは誰にでもできる高血糖対策の方法をご紹介します。難聴の他にも健康上の良いことがありますから、ぜひ実践してみてください。
高血糖対策①食事方法編
■ポイント1 ゆっくり食べる。一口をよく噛んで食べる。
1回の食事には、最低でも15分以上時間をかけましょう。ゆっくり食べれば、血糖値の急激な上昇を抑えることが出来ますし、満腹感が得られるので食べすぎも防げます。食事時間が15分よりも短いと、満腹感を得られず、つい食べすぎてしまいます。噛まずに飲み込むように食べ物を口に入れている人、早く食べる習慣がある人は、とくに注意しましょう。
ゆっくりよく噛んで食べるには、最初に食物繊維の豊富な野菜やきのこ、海藻などのおかずを積極的に食べると効果的です。一口30回を目安にすると理想的です。また誰かと一緒に食事をして、会話を楽しみながら食べるのも早食いを防ぐコツです。
■ポイント2 食べる順番を変える。ごはん、麺、パンは最後に。
同じメニューでも食べる順番を変えるだけで、血糖値が上がりにくくなります。
野菜やきのこ、海藻などに含まれる食物繊維は、糖の消化・吸収を遅らせる作用があるので、最初に食べると血糖値の上昇を抑えてくれます。その次に脂質を含む肉・魚を食べて、最後に血糖値を上げやすいごはん・麺類・パンを食べましょう。
血糖値の上昇を抑える食べる順番
野菜・きのこ・海藻 → 肉・魚 → ごはん・パン・麺類
この食べ方が良い理由は、栄養素によって血糖値を上げる時間が変わるためです。
引用元:「糖尿病教室パーフェクトガイド」アメリカ糖尿病協会発行、池田義雄監訳ほか(医歯薬出版)より
高血糖対策②運動編
適度な運動をしましょう。とくにウォーキングなどの有酸素運動がおすすめです。
血糖値だけではなく、コレステロール値の上昇を抑えられたり、良い睡眠が期待できるなど良いことづくめです。
- 樋口 重和:快眠と生活習慣.e-ヘルスネット,https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-01-004.html#:~:text=%E6%BF%80%E3%81%97%E3%81%84%E9%81%8B%E5%8B%95%E3%81%AF%E9%80%86%E3%81%AB,%E3%81%A8%E8%A8%80%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82,参照(2022-12-27).
運動をしようと思っても中々続けられない方におすすめなのが、GPSと連動したスマホのゲームアプリです。
記録をつけたり、目標を着けやすいので、無理なく楽しく続けることが出来ますよ。
健康管理にご興味があるならスマートウォッチもおすすめです。スマートフォンで歩数を測るより、より細かい健康情報が記録できます。また最近は一部の補聴器にもスマートフォンと連動して、健康情報を管理できるものもあります。詳しくはお問い合わせください。
難聴になったら、まずご相談を
ここまで耳への負担を減らすための生活習慣や、予防法についてご紹介いたしました。
将来にわたって良い聞こえを維持するために、ぜひお試しいただければと思います。
しかし、難聴の発症を完全に予防することはできません。もし聞こえに困ったら、まずは耳鼻科を受診しましょう。
もし、医師から補聴器を推奨された場合は、ぜひ当店にご来店下さい。
当店では聞こえと補聴器に関するご相談を随時承っております。職場での会話や、家族間のコミュニケーションのご相談、どんなことでも大歓迎です。ご相談はいつでも無料ですし、ご希望の方には聴力測定をさせていただいた上で、補聴器の試聴も体験していただけます。
コミュニケーションにお困りの方に寄り添える仕事を目指し、2012年に言語聴覚士免許取得。8年間の病院勤務にて聴覚障害の領域などを担当。難聴の方の聞こえを改善するため、補聴器を専門にして働きたいと考え、2020年プロショップ大塚に入社。耳鼻咽喉科での勤務経験を活かし、さまざまな情報や知識を分かりやすくお届けすることを心がけています。
保有資格:言語聴覚士
【監修】
補聴器専門店プロショップ大塚を運営する株式会社大塚の代表取締役。認定補聴器技能者、医療機器販売管理者。
たくさんの難聴の方々に、もっとも確実によく聞こえる方法をご提供することが私たちのミッションです。
監修においては、学術論文もしくは補聴器メーカーのホワイトペーパーなどを元にしたエビデンスのある情報発信を心がけています。
なお古いページについては執筆当時の聴覚医学や補聴工学を参考に記載しております。科学の進歩によって、現在は当てはまらない情報になっている可能性があります。
※耳の病気・ケガ・治療、言語獲得期の小児難聴や人工内耳については、まず医療機関へご相談下さい。