難聴の原因と、難聴を予防する4つの方法
騒々しい車や電車の音、大音量の音楽、栄養の偏ったコンビニ弁当、日々のストレス。
これらは難聴を発症したり、難聴の症状を進行させる原因になります。
現代社会では、日々の生活の中に、耳に負担をかける原因がひそんでいるのです。
これらを防ぐ対策は意外と簡単で、少しだけ気を付ければ、自分で耳と聴覚を守ることができます。
その方法をお話します。
大音量は危険!その他に栄養不足と動脈硬化も
たとえば、ロックコンサートの後に、耳鳴りがしたことはありませんか?
夏の花火を近くで見たあとにも、キーンというような音を感じたかもしれません。
聴覚の専門家は、コンサートや花火の大音量を聞くと、一時的ではなく、永久的に聴力に悪影響を及ぼす可能性があると言います。
また子供のいたずらやカラオケでの悪ふざけなど、耳元で全力の大音量で叫んだりすると、数分ほどで、難聴を引き起こすことがあります。
参考:大きな騒音が聴力損失を引き起こす可能性がある
難聴の原因になる大きな音は、特別なイベントの時だけではありません。
都市部でオートバイを運転し、周りの交通騒音を50分程度聞き続けると、やはり難聴が発生する可能性があります。
電車やバスなどの交通機関に乗っているときの音量はオートバイを運転するほどではありませんが、何も対策せずに毎日1時間以上、電車・バスに乗っているなら、これも耳に良い状態ではありません。
その他に、パチンコが趣味の方は、十分注意が必要です。
近年、パチンコ店内の音量は、昔より小さくなったようですが、それでも電車内より、ずっと大きな音量で音楽が流れています。
日常生活にある音の大きさと、難聴になるまでの聞く時間を下記にまとめました。
日常生活にある音の大きさと、難聴になるまでの聞く時間

※解説、音量を比較する目安として、ヘアドライヤーは、77dB~92dBほどの音量になります。70dBまでの音量であれば、長時間聞き続けても、およそ危険はなく、100dBを超える音を聞くと短時間でも難聴の原因になる場合があります。
引用元:Hearing loss due to recreational exposure to loud sounds(WHO)
何も対策せず、大音量の環境で生活していると、難聴になる可能性があります。世界保健機関(WHO)の2015年の報告書には、若者の聴力が危険にさらされていることが報告されています。具体的には12歳から35歳までの40%以上の人が、難聴とはいえないまでも、聴力が低下しています。また、うるさい環境で生活してきた方は、若いうちに難聴にならなくても年齢が上がるほど聴力障害が発生する可能性が高くなります。
あなたが将来にわたって、よく聞こえる状態が続くよう、難聴を予防するための、4つのヒントをご紹介します。
大きな音をブロックする方法
電車やバスによる通勤など、騒々しい環境にいなければいけない場合は、耳せんやイヤホンで耳への負担を減らすことができます。耳せんは、単純ですが安価で効果があります。ドラッグストアやホームセンターなどで、数百円から千円程度で置いてあります。耳せんは使い捨てタイプと洗って再利用できるタイプがあります。
さらに大音量の環境、たとえば建築現場やプレス工場または飛行機などの環境では、耳を健康に保つためにオーダーメイドの耳せんが効果的です。当店では、耳の型を採取して、耳の形ぴったりに制作するオーダーメイド耳せんをお作りしています。ぜひ私たちにオーダーメイドの耳せんをご依頼ください。普通の耳せんよりも高価で、片耳10,000円程度ですが、もっとも安全に耳を守れるでしょう。
当店の浜松市内にある店舗近くに自衛隊の基地があるのですが、訓練中の大音量から耳を守るために、オーダーメイド耳せんを、お買い求めになる自衛官の方が多数いらっしゃいます。
耳せんより、イヤホンより、ヘッドホンを使おう
10歳代の若者の5人に1人は、何らかの形の聴力損失があると推定されています。ヘッドホンやイヤホンで音楽を聞くことが増えているためと考えられています。
iPhoneやMP3プレーヤーなどによって、若者が難聴になるのを防ぐ最も簡単な方法は、音楽を聞く時間を減らし、音量を下げて音楽を聞くことです。しかし思春期の若者に大人が注意しても、若者が趣味を犠牲にして自身の健康に気を付けるというのは、難しいことでしょう。
大音量の音楽を聞きたい若者には、イヤホンの代わりに、ヘッドホン、特にノイズキャンセリング機能付きのヘッドホンがおすすめです。
ノイズキャンセリング機能付きのヘッドホンは、周りの雑音を打ち消すことで、聞きたい音楽だけに集中して楽しめるようになるヘッドホンです。原理としては、雑音と反対の音波を耳元で発生・雑音と相殺させることで、雑音ノイズをカットするというものです。普通のイヤホンよりも、音楽がより良い音質で楽しめますし、同時に周りの雑音を減らして、耳へのダメージを防ぐのにも役立ちます。
耳垢も難聴の原因、常に清潔に保ちましょう
若い人にはあまり多くありませんが、高齢者の場合、難聴だと思ったら、耳垢が詰まっていただけというケースがあります。耳の穴はキレイで清潔な状態にしておきましょう。これも、よく聞こえる状態を保つために大切なことです。
日本人の耳垢の種類は、粉耳と呼ばれる乾燥したタイプと、飴耳と呼ばれるドロッとしたタイプに生まれつき分かれます。生涯を通して変わることはほとんどありません。粉耳の耳垢がたくさん溜まると、日焼けした皮膚のように膜状になってペリペリとむけてくる場合があります。しかし、粉耳タイプの耳垢であれば、どれほどたくさん溜まっても、聴力に大きな影響が出ることはほとんどありません。また、あまり耳の掃除をしなくても、自然に排せつされることが多いです。
飴耳と呼ばれるドロッとしたタイプの耳垢は、たくさん溜まると耳の穴を完全にふさいでしまいます。耳垢が原因で、よく聞こえなくなるということです。特に顔の小さな方は、耳の穴も小さいことが多く、耳垢の影響で、聞こえにくくなりやすいです。また飴耳タイプであっても、若い方であれば、耳の穴の掃除をあまりしなくても、耳垢は自然に排せつされます。しかし高齢になると耳垢が排せつされにくくなり、耳の穴にどんどん蓄積されてしまいます。
飴耳タイプの耳垢の若い方は、月に二回程度は、お風呂から出て耳垢が柔らかくなったときに、綿棒でお掃除すると良いでしょう。高齢で指先の動きに自信がない方は、三か月から半年に一度程度、耳鼻科へ通って耳垢のおそうじをお願いしましょう。
栄養不足が原因の聴力低下には、豚肉の赤身などビタミンB12を摂りましょう
過度なダイエット、または食欲不振による栄養不足が、難聴の原因になることがあります。じつは聴覚神経が正常に働くために必要な栄養が、通常の炭水化物や野菜には含まれていません。
難聴は、耳の奥にある聴覚神経の機能が衰えた時に発生します。この聴覚神経が正常に働くために必要な栄養素の一つにビタミンB12というものがあります。このビタミンB12は、白米や野菜には、まったく含まれていません。
聴覚神経に必要なビタミンB12が含まれている最も一般的な食材は、豚肉の赤身です。その他には牛肉や鶏肉などにもビタミンB12が含まれています。お肉を食べれば、一緒にビタミンB12をとることが出来ます。
一日三食をしっかり食べていただき、献立にお肉を入れていただければ、栄養不足による難聴の心配はほとんどありません。しかし、どうしてもお肉が食べられない事情がおありの方は、サプリメントでビタミンB12を摂取することになるかと思います。
市販薬でビタミンB12が含まれているものは下記のとおりです。
・ナボリンS (エーザイ)
・ナボリンEB錠(エーザイ)
・ロスミンS(米田薬品)
・アリナミンEXゴールド(武田薬品)
動脈硬化、特に高血糖は耳にダメージ。ゆっくり食事しましょう
お年とともに聞こえにくくなる加齢性難聴(老人性難聴)の場合、聴覚神経の機能が衰えていきます。その主な原因は「動脈硬化」によるものです。動脈硬化を引き起こすと、血の巡りが悪くなって聴覚神経に十分な栄養が届かなくなり、難聴が進むと考えられています。
動脈硬化を引き起こす原因は、内臓脂肪型肥満、高血糖、高血圧、脂質異常症などがあります。この中で、難聴の原因としてもっとも危険視されているのが高血糖(または糖尿病)です。
ここでは誰にでもできる血糖値が上がりにくい食事の食べ方をご紹介します。血糖値が上がりにくい食生活は、難聴の予防になるだけでなく、同時に動脈硬化の予防にもつながりますし、イライラしにくくなる効果も期待できます。難聴の他にも健康上の良いことがありますから、ぜひ実践してみてください。
■ポイント1 ゆっくり食べる。一口をよく噛んで食べる。
1回の食事には、最低でも15分以上時間をかけましょう。ゆっくり食べれば、血糖値の急激な上昇を抑えることが出来ますし、満腹感が得られるので食べすぎも防げます。食事時間が15分よりも短いと、満腹感を得られず、つい食べすぎてしまいます。噛まずに飲み込むように食べ物を口に入れている人、早く食べる習慣がある人は、とくに注意しましょう。
ゆっくりよく噛んで食べるには、最初に食物繊維の豊富な野菜やきのこ、海藻などのおかずを積極的に食べると効果的です。一口30回を目安にすると理想的です。また誰かと一緒に食事をして、会話を楽しみながら食べるのも早食いを防ぐコツです。
■ポイント2 食べる順番を変える。ごはん、麺、パンは最後に。
同じメニューでも食べる順番を変えるだけで、血糖値が上がりにくくなります。
野菜やきのこ、海藻などに含まれる食物繊維は、糖の消化・吸収を遅らせる作用があるので、最初に食べると血糖値の上昇を抑えてくれます。その次に脂質を含む肉・魚を食べて、最後に血糖値を上げやすいごはん・麺類・パンを食べましょう。
血糖値の上昇を抑える食べる順番
野菜・きのこ・海藻 → 肉・魚 → ごはん・パン・麺類
この食べ方が良い理由は、栄養素によって血糖値を上げる時間が変わるためです。
引用元:「糖尿病教室パーフェクトガイド」アメリカ糖尿病協会発行、池田義雄監訳ほか(医歯薬出版)より
人間の食べる主な栄養は、炭水化物、たんぱく質、脂肪に分けることができます。このうち炭水化物は、ごはん・パン・麺類などのことです。とても大切な栄養なのですが、最初に食べると、短時間で消化・吸収されて、急激に血糖値が上がり、そして急激に血糖値が下がります。この血糖値の急激な変化は、血管に負担をかけ、これが毎日繰り返されると、動脈硬化になりやすくなります。
そこで血管に負担をかけない栄養である野菜を最初に食べて、次に肉類(たんぱく質と脂肪)を食べてお腹がいくらか満たされた後、最後に炭水化物(つまりご飯・パン・麺類)を食べれば、消化に時間がかかり、血管に負担をかけないというわけです。
難聴になったら、まずご相談を
難聴の予防に役立つ4つの方法をご紹介させていただきました。
大音量を避けて、耳を清潔に保ち、豚肉を食べて、食事の順番に気を付けていただく、この4つに気を付けていただくと、難聴の発症を抑えたり、難聴の進行をゆるやかにしたりできる可能性があります。
しかし難聴の発症を完全に予防することはできません。もし聞こえに困ったら、まずは耳鼻科を受診しましょう。当店では聞こえに関するご相談を随時承っております。職場での会話や、家族間のコミュニケーションのご相談、どんなことでも大歓迎です。ご相談は、いつでも無料ですし、ご希望の方には聴力測定をさせていただいた上で、補聴器の試聴も体験していただけます。